小胞体ストレス改善性低分子化合物による新規神経変性疾患治療開発の基礎的研究

文献情報

文献番号
201209013A
報告書区分
総括
研究課題名
小胞体ストレス改善性低分子化合物による新規神経変性疾患治療開発の基礎的研究
課題番号
H23-政策探索-若手-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大岡 伸通(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬探索研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでの基礎研究から、ほとんど全ての神経変性疾患の発症過程で小胞体ストレスの関与が明らかになってきている。一方、現在国内外において神経変性疾患の根本的な治療法は未だ見いだされておらず、新規作用機序による治療薬の開発が必要不可欠である。本研究はこれまでの申請者の研究をもとに考案された、新規神経変性疾患治療薬に有用な候補化合物を発見することを目的としている。
研究方法
申請者のこれまでの研究で、小胞体ストレス誘導性分子TRB3がATF4に結合し、その活性を強力に阻害することで小胞体ストレス依存性の細胞死を誘導していることが明らかになったことから、TRB3とATF4の結合を阻害できる低分子化合物のスクリーニングを行い、そして活性が見られた化合物に対して、小胞体ストレスによる神経細胞死の抑制効果が認められるかを検証する。
結果と考察
レポーターアッセイ系とTR-FRET系の2つの方法により、TRB3によるATF4転写活性の抑制を阻害できる低分子化合物のスクリーニングを行う予定であった。しかし、TR-FRET系に関しては、TRB3リコンビナントタンパク質の精製がうまくいかず、本研究期間内にスクリーニングへと進むことができなかった。ATF4に関してはTRB3との結合領域のフラグメントタンパク質の精製に成功しているので、今後、バキュロウイルスやカイコを発現宿主に用いたTRB3リコンビナントタンパク質の精製を行い、うまく精製できれば、精製した両分子のリコンビナントタンパク質を用いてTR-FRET系スクリーニングを行い、ヒットした化合物の評価を行うことができる。この系では短期間で多大な化合物をスクリーニングすることができ、また目的の分子メカニズムで作用する化合物がヒットする可能性が高いので、効率良く効果的な目的化合物を同定することができると考えられる。
 一方で、レポーターアッセイ系においては実際にスクリーニングを行い、TRB3によるATF4の転写活性抑制を阻害できる化合物を9種類見つけ出すことができた。ただ、これらの化合物がTRB3とATF4の結合を阻害するといった目的のメカニズムで実際に作用しているかについては、本研究期間内の検証では不十分であり更なる検証が必要である。また、これらの化合物に小胞体ストレスによる神経細胞死を抑制する効果があるかについても慎重に検証していく必要がある。
結論
TRB3とATF4の結合を阻害することで小胞体ストレスを改善し得る候補化合物が9種類同定された。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201209013B
報告書区分
総合
研究課題名
小胞体ストレス改善性低分子化合物による新規神経変性疾患治療開発の基礎的研究
課題番号
H23-政策探索-若手-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大岡 伸通(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬探索研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでの基礎研究から、ほとんど全ての神経変性疾患の発症過程で小胞体ストレスの関与が明らかになってきている。一方、現在国内外において神経変性疾患の根本的な治療法は未だ見いだされておらず、新規作用機序による治療薬の開発が必要不可欠である。本研究はこれまでの申請者の研究をもとに考案された、新規神経変性疾患治療薬に有用な候補化合物を発見することを目的としている。
研究方法
申請者のこれまでの研究で、小胞体ストレス誘導性分子TRB3がATF4に結合し、その活性を強力に阻害することで小胞体ストレス依存性の細胞死を誘導していることが明らかになったことから、TRB3とATF4の結合を阻害できる低分子化合物のスクリーニングを行い、そして活性が見られた化合物に対して、小胞体ストレスによる神経細胞死の抑制効果が認められるかを検証する。
結果と考察
 スクリーニング法として、レポーターアッセイ系と時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)系の2つの方法を選択し、1年目はTR-FRET系の構築を、2年目はTR-FRET系の構築の続きとレポーターアッセイ系によるスクリーニングと評価を行った。TR-FRET系にはTRB3とATF4のリコンビナントタンパク質が必要であるが、どちらも全長タンパク質としては精製困難であり、ATF4に関してはTRB3との結合領域を決定し、結合フラグメントタンパク質として精製することに成功した。一方で、TRB3に関してはATF4との結合領域も決定することが不可能で、さらに、様々な精製条件を検討したが、本研究期間内にはリコンビナントタンパク質を精製することはできず、スクリーニングを行うまでに至らなかった。
 一方、レポーターアッセイ系のスクリーニングを2年目に行い、802種類の化合物から9種類の化合物をTRB3によるATF4転写活性の抑制を阻害できる低分子化合物として選別することができた。また、9種類の化合物にTRB3とATF4の結合を阻害する作用があるか、小胞体ストレスによる細胞死を抑制する効果があるかについて、それぞれ評価し、1種類がそのような活性を持つ化合物であることがわかった。しかし、研究期間の関係上、評価系が不十分であったことからさらなる評価が必要である。
 本研究で一部構築されたTR-FRETスクリーニング系は今後、系を完成させスクリーニングを行うことで、目的の分子メカニズムで作用する化合物を効率良く見つけ出すことに利用できる。また、本研究期間内にレポーターアッセイ系で見つけたTRB3によるATF4の転写活性抑制を阻害できる9種類の化合物は、小胞体ストレスによる神経細胞死を抑制する作用を示す新規神経変性疾患治療薬のリード化合物として期待できる。
結論
TRB3とATF4の結合を阻害することで小胞体ストレスを改善し得る候補化合物が9種類同定された。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201209013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでの国内外の基礎研究の結果から、ほとんど全ての神経変性疾患の発症過程で小胞体ストレスによるアポトーシスの関与が明らかになってきている。TRB3はATF4に結合しその転写活性を抑制することで、小胞体ストレスによるアポトーシスを促進することが報告されており、本研究ではTRB3によるATF4転写活性の抑制を阻害できる低分子化合物を見つけ出すためのスクリーニングを行った。これまでにこのような活性を示す化合物は全く報告されておらず、本研究で見つかった化合物は学術的にも新規性が高い。
臨床的観点からの成果
ほとんど全ての神経変性疾患の発症過程で小胞体ストレスによる細胞死の関与が明らかになってきていることから、本研究において見つかった化合物は新規神経変性疾患治療薬のリード化合物として期待できる。今後、目的のメカニズムで作用すること、もしくは神経細胞死を抑制する効果が認められた化合物については、化合物の構造を解析することにより最適化していくことで、将来的には臨床で使用できる治療薬が創製されることを期待している。
ガイドライン等の開発
本研究は基礎的研究であり、現段階ではガイドライン等の開発に関する研究には該当しない。
その他行政的観点からの成果
本研究は神経変性疾患の治療薬開発の基礎的研究として、厚生労働行政の難治療疾患対策に直接関連する。本研究が完成すれば、社会の高齢化に伴い深刻に増加しているアルツハイマー認知症の治療や進行の抑制にも貢献することが期待され、患者の生活の向上及び介護者の負担の減少の面から、社会的にもメリットがある。本探索化合物は、様々な小胞体ストレス関連疾患に対して治療もしくは予防効果が期待でき、医薬品開発にかかる経済的なコストはそれぞれ個々の疾患に対して開発する場合と比べて、大幅に削減することができる。
その他のインパクト
本研究において見つけた化合物は、小胞体ストレスの改善を標的とするため、神経変性疾患全般に対しての治療効果が期待される。また同様に、糖尿病など他の小胞体ストレス関連疾患の治療に対しても有効であると考えられる。本研究内容は特許性が高いため、現段階では本研究の成果の詳細は公開していないが、将来的には学会、シンポジウムなどにおいて成果を発信して行く予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nobumichi Ohoka, Keiichiro Okuhira, Hongyan Cui et al.
HNF4α Increases Liver-Specific Human ATP-Binding Cassette Transporter A1 Expression and Cholesterol Efflux to Apolipoprotein A-I in Response to Cholesterol Depletion
Arteriosclerosis, Thromosis, and Vascular Biology , 32 (4) , 1005-1014  (2012)
原著論文2
Keiichiro Okuhira, Nobumichi Ohoka, Kimie Sai et al.
Specific degradation of CRABP-II via cIAP1-mediated ubiquitylation induced by hybrid molecules that crosslink cIAP1 and the target protein.
FEBS Letters , 585 (8) , 1147-1152  (2011)

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201209013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,496,941円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 3,360円
間接経費 0円
合計 4,500,301円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
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