文献情報
文献番号
201209012A
報告書区分
総括
研究課題名
small interfering RNA (siRNA)とリコンビナントArgonaute 2の同時細胞内導入による高効率な遺伝子発現抑制システムの開発
課題番号
H23-政策探索-若手-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 文教(大阪大学大学院薬学研究科 分子生物学分野)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 亮(帝京大学薬学部 准教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬探索研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
siRNAは、その高い遺伝子発現抑制能から、次世代の革新的医薬として期待される。しかし、①十分量のsiRNAを細胞内導入できても、細胞内Ago2量が足りず、十分に遺伝子発現抑制されない、②標的以外の遺伝子の発現を抑制してしまう(off-target効果)ことが問題となっている。そこで本研究では、我が国独自のDDS技術を用いて、siRNAとともにリコンビナントAgo2を細胞内導入し、低用量で高効率に遺伝子発現抑制可能なシステムを開発することを試みた。今年度は、一般のタンパク質導入試薬を用いてリコンビナントAgo2を導入することで、ノックダウン効率の向上を試みた。さらに、Ago2に核移行シグナルを付与することで、核に局在する非コードRNAを高効率にノックダウンすることを試みた。また、バブルリポソームと超音波照射により、タンパク質を高効率に導入することを試みた。
研究方法
市販のタンパク質導入試薬であるBioporterを用いてリコンビナントAgo2をルシフェラーゼ安定発現細胞に導入するとともに、ルシフェラーゼに対するsiRNAをRNAiMAXを用いて導入し、ノックダウン効率を検討した。コントロールとしてb-galactosidaseを用いた。また、核局在性の非コードRNAであるHOTAIRを高効率にノックダウンすることを目的に、SV40 large T antigenの核移行シグナルを付与したAgo2を発現させることを試みた。また、バブルリポソームと超音波照射を用いて、b-galactosidaseを培養細胞に導入することを試みた。
結果と考察
siRNAとともにリコンビナントAgo2を細胞内に導入することで、b-galactosidaseを導入した場合と比較し、ノックダウン効率の向上が観察された。しかし、siRNAのみを導入した群と比較するとノックダウン効率が低下しており、2回トランスフェクションすることによる毒性が問題と考えられた。また核移行シグナルをAgo2に付与した場合、この変異型Ago2の発現効率は野生型Ago2と比較して低いものであった。野生型Ago2の細胞内局在を検討したところ、野生型Ago2でも細胞質のみならず核にも局在しており、野生型Ago2を過剰発現させることで核局在性のRNAも高効率にノックダウン可能であった。またバブルリポソームと超音波照射の併用により、b-galactosidaseを培養細胞に導入することに成功した。しかしその導入効率は市販のタンパク質導入試薬と比較して低いものであった。
結論
本研究により、細胞内のAgo2量を増加させることでsiRNAによるノックダウン効率を向上可能であることが明らかとなった。また核局在性のRNAもAgo2の過剰発現により、高効率にノックダウン可能であった。しかしAgo2発現プラスミドの導入と比較し、リコンビナントAgo2の導入では毒性が高く改善が必要であった。またバブルリポソームおよび超音波照射によるタンパク質導入法の確立に成功したが、高効率なノックダウンに向けては更なる改善が求められる。
公開日・更新日
公開日
2013-09-01
更新日
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