難治がんに対する標的バイオ医薬の探索技術の確立と開発研究を支援する研究基盤の構築

文献情報

文献番号
201209009A
報告書区分
総括
研究課題名
難治がんに対する標的バイオ医薬の探索技術の確立と開発研究を支援する研究基盤の構築
課題番号
H23-政策探索-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
青木 一教(独立行政法人国立がん研究センター 研究所遺伝子免疫細胞医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 田川 雅敏(千葉県がんセンター がん治療開発グループ)
  • 濱田 洋文(東京薬科大学 生命科学部)
  • 水口 裕之(大阪大学大学院薬学研究科 分子生物学分野)
  • 水野 正明(名古屋大学医学部付属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬探索研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんを標的するバイオ医薬(ベクター)を、ベクター・生体反応・腫瘍細胞の3つの観点から開発する。これらの技術を統合し、個々の症例に最適ながん標的ベクターや腫瘍溶解ウイルスを探索するシステムを確立し、標的化技術の臨床応用を図る。
研究方法
べクター側からの検討として、1)多種多様なペプチドをファイバー上に提示するアデノウィルス(Ad)ライブラリーを用いて、膵がん腹膜播種に対する標的ベクターを探索した。ついで、2)がん特異的転写調節領域により増殖を制御する腫瘍溶解Adに腫瘍標的配列を組み合わせた標的化腫瘍溶解ウイルスを構築した。ベクターに対する生体反応の検討では、3)抗Ad抗体の腫瘍内ベクター投与後の遺伝子発現効率における影響を解析した。ベクター感染の腫瘍細胞側からの検討として、4) Adやイミュノトキシンを用いたスクリーニング系により615クローンを樹立し、標的抗原の探索を行った。 また、5)腫瘍標的型Adベクターについて、臨床応用に必要な評価項目の選定と評価を効率よく進める仕組みを構築した。
結果と考察
1)膵がん腹膜播種動物モデルにおいてAdライブラリーのスクリーニングを行い、腹膜播種に特異的に感染する標的ベクターを同定した。2)ミッドカイン遺伝子の転写調節領域により増殖を制御する腫瘍溶解ウイルスに、膵がん標的化配列を組み合わせることにより、抗腫瘍効果を著明に増強できることを示した。3)抗Ad中和抗体がある閾値以下の抗体価ではAdベクターの腫瘍局所投与部位での遺伝子発現は阻害されず、効率的に遺伝子発現できることを明らかとした。4) CD47, CD276, CD155, CD73, CD98hc, CD71, EpCAMなどがん標的化治療への応用が有望な抗原・抗体セットを樹立した。5) 腫瘍標的型アデノウイルスベクターに関して、品質保証や製造法に加えて倫理性について検討した。戦略的な研究開発スタイルを実現するために、Design Buildup Team(DBT)において臨床試験を実施するうえで必要な体制を整備した。
結論
Adライブラリーが、病態特異的な標的ベクターを開発する基盤として有用であることを示した。また、特異的転写領域による制限増殖型Adウイルスに、標的リガンドを組み合わせることにより、腫瘍溶解Adの抗腫瘍効果が著明に増強できることを明らかとした。今後、組織障害性の低いベクター構造を取り入れ、個々の症例に最適な腫瘍溶解ウイルスを探索するシステムを確立する。また、標的化腫瘍溶解ウイルスの戦略的な研究開発スタイルを実現する仕組みとしてDBTを構築し、臨床応用に必要な評価項目等の検討を進めている。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201209009Z