第16番染色体16p13.11内、新規脳発生関連miR-484の遺伝子改変マウスによる神経発達疾患モデル動物の確立

文献情報

文献番号
201208037A
報告書区分
総括
研究課題名
第16番染色体16p13.11内、新規脳発生関連miR-484の遺伝子改変マウスによる神経発達疾患モデル動物の確立
課題番号
H24-創薬総合-若手-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤谷 昌司(大阪大学 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・連合小児発達学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年、精神疾患により医療機関にかかる患者数は大幅に増加しており、特に、統合失調症患者は入院患者数の大半を占め、医療費への負担は、年々その割合を増している。にもかかわらず、有効な治療法は未だに開発されておらず、統合失調症を初めとする神経発達疾患の新規治療法の開発研究に社会的要請が年々高まってきている。
 また一方で、分子生物学、神経科学の進歩により、神経発達疾患のモデル動物において、そのシグナル異常を動物個体内で改善することで、行動学的改善が認められることが報告され、神経発達疾患のモデル動物を用いた分子生物学的治療法の開発が可能であることが確認されつつある。
 申請者はその遺伝子変異が神経発達疾患の原因となる第16番染色体短腕16p13.11に着目して、新規の脳発生関連遺伝子miR-484を見いだした。
 この研究の目的は、miR-484の遺伝子改変マウスを作成し、行動学的解析を行うことで16p13.11遺伝子異常に関連する神経発達疾患モデル動物として確立することである。
 
研究方法
 24年度においてはmiR-484の条件特異的遺伝子改変マウスの作成と、その脳の発生学的、解剖学的異常の有無の解析を行い、24~25年度においては、神経発達疾患に関連した行動学的解析を行うことによる特異的疾患モデル動物としての確立が可能かどうかの解析を行う。具体的には、条件特異的遺伝子改変マウスを作成し、Nissl染色法等による、解剖学的な解析を行う。また、行動学的解析は、オープンフィールドテストを主体として施行し、異常が確認されたら、その他の疾患特異的行動学的解析を行う。
結果と考察
 神経幹細胞特異的にmiR-484をin vitroで低下させる方法を確立し、miR484発現低下トランスジェニックマウスの作成を試みた。条件特異的に目的遺伝子を発現可能とするCALSLシステムは、Cre recombinaseの存在下で、GFPをレポーターとして動物個体内でも正しく作動することが確認された。そして、神経幹細胞特異的にノックダウンするために、Nestin-Creマウスと交配し、ダブルトランスジェニックマウスを作成した。ダブルトランスジェニックマウスをNissl染色により解剖学的に検討したが、各器官形成、皮質の厚み、層構造、脳梁の厚み等の解剖学的構造に特に顕著な異常は認められなかった。
 生後1カ月齢の雄マウスを用いて、オープンフィールドテストを行ったところ、10分間のtotal distance, total movement duration, total movement episode, rearing(立ち上がり動作)の数、回転運動の数などの指標において、軒並み活動性が高いという結果が得られた。また、新規環境における不安の指標である、center region time, center region(%)には、コントロールマウスと変化を認めなかった。
 
結論
 このことにより、1カ月齢のダブルトランスジェニックマウスが不安傾向を見せずに、多動傾向を示している可能性がある。今後は、個体数を増加させることが必要である。また、アンフェタミン投与によりこれらの活動性の上昇が低下するかどうかを検討し、注意欠陥多動性障害マウスモデルとして確立できるか、検討を行う。
 また、今後は、miR-484の過剰発現マウスを早急に作成し、過剰発現及び、発現低下遺伝子改変マウスにおける行動学的解析を行っていく予定である。
 

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-11-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201208037Z