経鼻ワクチンの挙動と安全性評価技術の開発

文献情報

文献番号
201208032A
報告書区分
総括
研究課題名
経鼻ワクチンの挙動と安全性評価技術の開発
課題番号
H24-創薬総合-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
幸 義和(東京大学医科学研究所 感染・免疫部門炎症免疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 奥野良信(阪大微生物病研究会 観音寺研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経鼻投与は最も効果的な粘膜ワクチン投与方法の一つとして知られ、弱毒型インフルエンザ経鼻ワクチンであるFluMistは現在米国をはじめ世界で使用されている。一方で、2004年スイスで不活化インフルエンザワクチンに経鼻アジュバントとして大腸菌易熱性毒素(LT)を含む製剤が投与された被験者のなかに顔面麻痺が現れたことから、製造販売が中止になった。これに関連して我々は2000年にワクチンである破傷風トキソイド(TT)を粘膜アジュバントであるコレラ毒素(CT)と同時に経鼻投与すると、TTは嗅球には移行しないがCTは一部が嗅球に移行することを報告し、中枢神経系への影響を懸念していた。そこで、本課題では経鼻ワクチンとして、阪大微研会と国立感染研が臨床応用を進めている不活化インフルエンザウイルス全粒子ワクチン及び東大医科研で開発されたコレステロール多糖プルランを用いたアジュバンドを必要としないワクチンデリバリーによる組換えPspA肺炎球菌ワクチンを用い、経鼻投与されたワクチンの脳内移行を含む体内動態と鼻腔上皮・嗅覚神経細胞に吸着したワクチンの嗅覚への影響及び嗅覚神経の大脳への情報伝達の影響を評価できるシステムを開発することで、経鼻ワクチンの安全性評価の解析ツールを提供し、経鼻ワクチンの開発を促進させ、技術水準の向上を目指すものである。
研究方法
京大秋吉教授から提供されたカチオン化コレステロールナノゲルを用いて、PET解析用に遺伝子組換え肺炎球菌表層蛋白PspAを18F標識する方法を開発する。東大大学院森教授の協力のもと、嗅球への移行がわかっているコレラトキシンCT及びB鎖(CTB)の鼻腔嗅覚神経細胞のCT取り込みを組織学的に検討する。嗅球内の各糸球体の反応パターンであるOdor mapを用いて糸球体嗅覚神経の動きをイメージングすることで試験する。さらに、特定のにおい行動の反応時間でCT/CTB投与マウスの嗅覚の異常を評価する試験法を用いる。
結果と考察
上気道感染症病原体ワクチンとして新たに開発中の肺炎球菌の経鼻ワクチンを使って(1)遺伝子組換え肺炎球菌表層蛋白PspAを18F標識する方法を開発した。感染研では阪大微研会から供給された不活化インフルエンザ全粒子ワクチンの18F標識物の分離方法を検討し、ゲル濾過法での分離後の電顕で行うことに決定した。不活化インフルエンザ全粒子ワクチンの18F標識も検討中である。来年度からマウスを用いたリアルタイムイメージングによる体内動態技術の開発を行う。次に(2)経鼻投与されたワクチンが嗅覚上皮の神経細胞に吸着した際の嗅覚への影響及び嗅球での嗅覚神経の活動イメージング解析を、マウスを使って実施するためまず、経鼻投与で嗅球への移行が知られているコレラトキシン(CT)とそのB鎖(CTB)で嗅球での嗅覚神経の活動イメージング解析を実施した。その結果CT30μgは嗅覚上皮及び嗅球の糸球体を破壊し、投与24-72時間での嗅球の活動イメージングが誘導できなくなることが、CTBにはそのような作用はなかった。またこの濃度でCTは、CTBと違って嗅覚上皮、嗅球の嗅覚神経を破壊し、48-72時間でマウスの嗅覚行動を完全に抑制することを確認した。今後経鼻投与された抗原/アジュバンドの嗅覚神経系への影響を見るための陽性/陰性コントロールとしてCTとCTBを用い、ウイルス及び細菌感染症経鼻ワクチンの嗅覚神経系への影響を調べることが可能になった。
結論
経鼻ワクチンの体内動態解析法の開発は、PETを用いて行うが、初年度は肺炎球菌の組換えPspAのアミノ基を介して18F-PspAを合成する方法を開発した。不活化インフルエンザウイルスをゲル濾過HPLCにより、分離する方法が開発できたので、次年度PspAと同様にアミノ基を介して18Fを標識する方法を実施し、マウス・サルを用いたPET/MRIでの体内動態を調べていく。次年度はPspAナノゲルワクチンのサルでの有効性も同時に確認していく。経鼻ワクチンの中枢神経系への影響は、まず対照実験として、嗅球への移行が確認されているCT/CTBを用いて組織観察、嗅球の活動イメージング解析、マウス嗅覚行動を評価する方法を開発した。CTは嗅上皮でのダメージ、嗅球での活動イメージングの消失、マウス嗅覚の消失が認められたが、次年度以降この作用が一過性なのかどうかも含めて嗅覚神経系への影響をさらに研究し、またPspAナノゲルや不活化インフルエンザワクチンでの影響を試験していく。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201208032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
39,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 28,546,855円
人件費・謝金 0円
旅費 82,000円
その他 1,371,145円
間接経費 9,000,000円
合計 39,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-