ワクチン基礎生産技術の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201208031A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチン基礎生産技術の向上に関する研究
課題番号
H24-創薬総合-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森 康子(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 成史(独立行政法人医薬基盤研究所・創薬基盤研究部・感染制御プロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
複数の病原体による感染症を一度に予防できる組換え生ワクチンを作製し、接種回数が少なく利便性の高い、かつ低コスト生産可能なワクチンを開発する。既に認可されている水痘ワクチンを用いて、他の病原体の抗原遺伝子をもつ次世代組換え水痘ワクチンを作製し、安全性および有効性を明らかにすることによって臨床研究へと繋げる。現行のワクチン接種は数種類のワクチンの複数回接種となっている。生ワクチンの場合、ウイルスの大量生産が必要であり、製造は高コストで時間を要する。そのため、1種類のワクチン接種で複数の感染症に対処できる多価生ワクチンの開発が必要である。
現行の水痘生ワクチンは、WHOにおいて認可された世界で唯一の水痘ワクチン(Okaワクチン株)である。Okaワクチン株は、現在世界中で使用されており、安全性と有効性が認められている。最近、我々は、Okaワクチン株のゲノムを大腸菌内で保持できるプラスミドに組み込むことによりゲノムからの感染性ウイルスの再構築に成功し、容易に外来遺伝子を水痘ゲノムに挿入できる系を確立した。そこで本研究では、現行の水痘生ワクチンをベースとし、他の病原体の遺伝子を挿入した組換え水痘ワクチンを作製し、複数の感染症に対処できるワクチンを作製する。外来遺伝子としての標的は、乳幼児の重症呼吸器感染症の原因であるRSウイルスのF および G 遺伝子である。本年度はRSVのFあるいはGを挿入した組換え水痘ワクチンウイルスの作製とその効果判定法の検討を行うこととした。
研究方法
1. RSV-G 又はRSV-Fを発現させた組換え水痘ウイルスの作製
(1) Red 組換えによるVZV-BACゲノムへのRSV-G 又はRSV- Fの挿入
vOka-BACゲノムを保持する大腸菌に導入し、Red 組換えによる挿入を行った。これにより、外来遺伝子発現カセットを保持したvOka- RSV-G-BAC 又はvOka-RSV-F -BACゲノムを得た。
(2) 組換え水痘ウイルスの作製
得られた外来遺伝子挿入vOka-BACゲノムを、VZV感染許容細胞に導入した。

2. RSV-G 又はRSV-Fの発現確認
(1) IFA(間接蛍光抗体法)とウェスタンブロットによるRSV-G 又はRSV- Fの発現確認
vOka-RSV-G又はvOka-RSV-F ウイルスをMRC-5細胞に感染させ、RSV-G又はRSV-Fに対する抗体を用いてRSウイルス抗原の発現を確認した。

3. モルモットを用いた免疫試験
(1) vOka- RSV-G又はvOka-RSV-F ウイルスの機能評価
モルモットへの免疫試験により評価した。試験では、vOka- RSV-G又はvOka-RSV-Fウイルス感染細胞を、モルモットの皮内に接種する方法で免疫した。接種は2週間ごとに計4回行い、その後、採血をして血清中の抗体価測定を行った。

(2) 抗体価測定
IFAによりRSV-GとRSV-Fに対する抗体価を測定した。RSV-G又はRSV-Fを発現させたプレートにおいて、モルモット血清を一次抗体として、IFAを行った。IFAで蛍光が観察できた血清の最大希釈倍数を抗体価とした。次に、RSVと水痘に対する中和抗体価をプラークリダクションアッセイで測定した。

(倫理面への配慮)組換えウイルス作製および使用実験はすべて医薬基盤研究所で行った。組換えウイルス実験に関しては文部科学大臣による拡散防止措置の確認および当該研究機関における組換えDNA実験安全委員会の承認を受けている。動物実験については当該研究機関における動物実験委員会での承認の上、実験を行った。
結果と考察
2. RSV-G 又はRSV-Fの発現確認
(1) IFA(間接蛍光抗体法)とウェスタンブロットによるRSV-G 又はRSV- Fの発現確認
作製したvOka- RSV-G又はvOka-RSV-Fウイルス感染細胞において、RSV-G又はRSV-Fウイルスの発現が、IFAとウェスタンブロットの両方で確認できた。VZVとRSVの両方に対して中和抗体価が誘導できると期待できる。

3. モルモットを用いた免疫試験
(2) 抗体価測定
IFA(間接蛍光抗体法)において、RSV-GやRSV-Fに対する抗体価の上昇が確認された。
結論
RSV-F又はRSV-G発現組換え水痘ウイルス(vOka- RSV-G又はvOka-RSV-F)は、VZVとRSVに対して効果があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201208031Z