新規創薬を目指した生活習慣病・難治性疾患モデル遺伝子変異ラットの開発と解析

文献情報

文献番号
201208030A
報告書区分
総括
研究課題名
新規創薬を目指した生活習慣病・難治性疾患モデル遺伝子変異ラットの開発と解析
課題番号
H24-創薬総合-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中尾 一和(京都大学 大学院医学研究科内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 海老原健(京都大学医学部附属病院探索医療センター・大学院医学研究科内分泌代謝内科)
  • 桑原宏一郎(京都大学大学院医学研究科・内分泌代謝内科)
  • 横井秀基(京都大学大学院医学研究科・内分泌代謝内科)
  • 冨田努(京都大学大学院医学研究科・内分泌代謝内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現時点において、生活習慣病や難治性疾患の研究には遺伝子改変技術が確立されているマウスがモデル動物として多く用いられているが、マウスはその小ささゆえに採血や組織採取(膵臓、中枢神経系)が困難であること、生理学的解析や移植実験が行ないにくいなどの問題がある。さらに、最近では代謝面においてヒトと大きく異なる生理的特徴が明らかとなった。そのため、マウスと比べ体のサイズが大きく、代謝面でもよりヒトに近いラットでの疾患モデル確立が期待されている。最近京都大学大学院医学研究科動物実験施設の真下らが標的遺伝子変異ラットの効率的な作成システム構築に成功した。また加えて、Zinc Finger Nuclease技術を用いて、任意の遺伝子に変異を有する遺伝子変異ラットを作製することも可能になった。本研究課題では、これらのシステムを用いて生活習慣病関連・難治性疾患遺伝子変異ラットを作成し、その表現系を解析することにより心筋梗塞、心不全、糖尿病、肥満、脳卒中、CKDなどの新規生活習慣病や脂肪萎縮性糖尿病などの難知性疾患のモデルラットを開発し、その解析を通して病態解明、新規治療標的同定を行なうと共に、このモデルを用いた新規創薬開発を加速させる基盤を樹立することを目的とする。
研究方法
生活習慣病・難治性疾患関連遺伝子変異をENUミュータジェネシスを行なったラットの遺伝子アーカイブから新規変異DNAスクリーニング法(MuT-POWER法)を用いてスクリーニングし、標的遺伝子変異ラットを樹立した。またこの方法にて変異が見つからなかった重要な遺伝子に関しては、Zinc Finger Nuclease技術を用いて、対象の遺伝子に変異を有する遺伝子変異ラットを作製した。本年度は、このようにして樹立した生活習慣病・難治性疾患関連遺伝子変異ラットの解析をおこなった。
結果と考察
本年度は、すでに樹立に成功した生活習慣病・難治性疾患関連遺伝子変異ラットの解析を行った。具体的には、レプチン、seipin、ナトリウム利尿ペプチド1型受容体遺伝子(GC-A)、PPAR、ラミンA、脳性ナトリウム利尿ペプチド、C型ナトリウム利尿ペプチド遺伝子に変異を有するラットの表現系解析を進めた。
 レプチン遺伝子ナンセンス変異ラットでは血中のレプチン濃度が検出感度以下に低下しており、食事摂取量の増加、エネルギー消費の低下と共に、明らかな肥満を認めた。また、耐糖能異常、インスリン抵抗性と脂質異常も見出され、レプチン遺伝子ナンセンス変異ラットはヒトの肥満症、メタボリックシンドロームのモデルであることが明らかとなった。更に、これらマウスにレプチンを投与したところ、表現形の改善を認められ、本レプチン遺伝子変異ラットが肥満モデルとして創薬研究にも有用であることが示された。
 脂肪委縮症の原因遺伝子であるseipin遺伝子の変異ラットでは、脂肪の減少と耐糖能異常、インスリン抵抗性が認められ、また顕著な脂肪肝が見られ、ヒト脂肪委縮症と類似の表現系が得られた。またseipinノックアウトマウスでは報告されていないいくつかの表現形が見出され、その一部はマウスとラットやヒト間におけるseipin遺伝子発現分布の差による可能性考えられた。
 GC-A変異ラットはナトリウム利尿ペプチド1型受容体(GC-A)のguanlyl cyclase domainに変異を有し、その活性の低下が予想された。GC-A変異ラットは野生型ラットと比べ特に体重や成長には差がなかったが、血圧を測定したところ、血圧が高い傾向が特に雌において示された。
 Zinc Finger Nuclease技術を用いて得られたBNPノックアウトラットの心臓組織、および心筋細胞では、正常なBNP遺伝子発現およびBNP産生が見らないことを確認した。BNPノックアウトマウス同様、このBNPノックアウトラットの血圧、心機能、心重量は野生型と比し有意な差はなかった。現在、大動脈縮窄による圧負荷モデルを作製しその表現形を解析中である。
 上記マウスに加えて、PPARgamma、ラミンA、CNPの遺伝子変異ラットの作成にも成功しており、これらラットの解析も開始した。
 以上、本年度に行った遺伝子変異ラットの表現系解析から、これらラットが生活習慣病関連疾患・難治性疾患モデルとして有効な可能性が示唆された。
結論
生活習慣病・難治性疾患関連遺伝子に関して、複数の関連遺伝子変異ラットの同定、系統樹立に成功し、その表現系を開始した。今後、本年度に得られた遺伝子変異ラットの表現系をさらに詳細に解析し、疾患モデルラットを確立し、病態解明・新規治療標的同定と新規創薬開発を加速させたい。

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201208030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,589,058円
人件費・謝金 0円
旅費 593,440円
その他 5,817,502円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
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