認知症/神経変性疾患モデルショウジョウバエバンクの構築と変性蛋白質オリゴマーを標的とした共通の治療薬開発

文献情報

文献番号
201208028A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症/神経変性疾患モデルショウジョウバエバンクの構築と変性蛋白質オリゴマーを標的とした共通の治療薬開発
課題番号
H24-創薬総合-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
永井 義隆((独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第四部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 加齢に伴って発症する認知症/神経変性疾患の克服は、我が国の厚生労働行政上重要な課題である。近年、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病など多くの認知症/神経変性疾患では、様々な変性蛋白質のオリゴマー重合体により共通に神経変性が惹き起こされると考えられている。私たちはこれまで変性蛋白質オリゴマーを標的とした共通の治療薬開発研究を進め、in vitroアッセイ系を用いた1次スクリーニングにより大規模化合物ライブラリー(約45,000化合物)から約100種類の新規オリゴマー阻害化合物を同定している。
 本研究では、このような治療薬候補化合物の迅速・簡便なin vivoでの薬効評価に適する疾患ショウジョウバエモデルバンクを樹立し、認知症/神経変性疾患の分子標的治療薬を創薬することを目的として、以下の研究を行った。
研究方法
1)認知症/神経変性疾患モデルショウジョウバエバンクの構築
 認知症/神経変性疾患関連遺伝子を過剰発現、あるいはRNAi法により各遺伝子の発現をノックダウンするトランスジェニックショウジョウバエの作製・入手を進めた。

2)新規オリゴマー阻害化合物の疾患モデルショウジョウバエ/マウスを用いたハイスループット薬効評価による治療薬開発
 私たちがこれまでに同定した1次ヒットPolyQ蛋白質オリゴマー阻害化合物100種類のうち入手可能であった14種類についてPolyQ病モデルショウジョウバエを用いた薬効評価を行った。
 また、PolyQ蛋白質以外のAmyloid-β、Tau、α-Synucleinなどの他の変性蛋白質に対するオリゴマー阻害活性をin vitroアッセイ系にて検討した。
 一方で、血液脳関門透過性・安全性が高く、既にPolyQ病モデルショウジョウバエへの有効性を確認した治療薬候補QX1について、PolyQ病モデルマウスに対する治療効果を検討した。
結果と考察
1)認知症/神経変性疾患モデルショウジョウバエバンクの構築
 研究開始時点でアルツハイマー病(AD): 7系統、前頭側頭葉型認知症(FTD): 4系統、パーキンソン病(PD): 9系統、筋萎縮性側索硬化症(ALS): 12系統、ポリグルタミン(PolyQ)病: 14系統の合計46系統の疾患モデルショウジョウバエを保有していた。H24年度はAD: 2系統、FTD: 2系統、PD: 15系統、ALS: 17系統、PolyQ病: 4系統、その他: 5系統の疾患モデルショウジョウバエを作製・入手し、合計91系統とした。

2)新規オリゴマー阻害化合物の疾患モデルショウジョウバエ/マウスを用いたハイスループット薬効評価による治療薬開発
 1次ヒットPolyQ蛋白質オリゴマー阻害化合物14種類から、PolyQ病モデルショウジョウバエの複眼変性の抑制効果を認める8化合物を同定した。
 また、1次ヒットPolyQ蛋白質オリゴマー阻害化合物14種類のうち、6化合物がAmyloid-βの、5化合物がTauの、4化合物がα-Synucleinのオリゴマー阻害活性を併せ持つことを明らかにした。さらに、そのうち3化合物はすべてのオリゴマー阻害活性を発揮することを明らかにした。
 一方、治療薬候補QX1をPolyQ病モデルマウスに投与した結果、PolyQ病モデルマウスの運動障害など一部の神経症状に対する有効性を認めた。
結論
 本研究の結果から、in vitroアッセイ系から得られた新規オリゴマー阻害化合物の迅速・簡便なin vivoでの薬効評価として疾患モデルショウジョウバエ有用であることが確認され、今後、QX1をはじめとした疾患モデルマウスで有効性を示す薬剤の同定が期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201208028Z