ヒト肝細胞キメララットによる新しい創薬評価モデルの開発

文献情報

文献番号
201208026A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト肝細胞キメララットによる新しい創薬評価モデルの開発
課題番号
H23-創薬総合-若手-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
真下 知士(京都大学 大学院医学研究科附属動物実験施設)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
創薬候補化合物のスクリーニングおよび前臨床試験では必ず動物実験が行われるが、ヒト薬物動態を正確に予測するためには、動物ーヒト種間での肝臓代謝酵素の違いが問題になることが多い。本研究では、新しい遺伝子改変技術ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)により作製した重症免疫不全ラットに、ヒト肝細胞を移植して模擬的なヒト肝臓を構築することにより、ラット体内でヒト薬物代謝試験を行える新たな創薬モデル基盤を開発する。
研究方法
平成23年度にZFN 技術によりSCID 、XSCID、およびダブルSCID(FSG)ラットを作製した。平成24年度は、これまでに作製したさまざまな重症免疫不全ラットに、ヒト肝細胞を移植することで高効率にヒト肝細胞が置換されたキメララットを作製する。作製したキメララットにおいて、ヒトアルブミン生産能、ヒト薬物代謝酵素機能、ヒト肝細胞置換率を測定する。
結果と考察
ZFN 技術によりSCID 、XSCID、およびダブルSCID(FSG)ラットを作製した。このFSGラットにヒト肝細胞を移植することで、肝ヒト化ラットの作製を試みた。ラット肝細胞の増殖を阻害するアルカロイドの一種であるレトロルシンを投与した後、FSGラットの門脈からヒト肝細胞を移植した。ヒト肝細胞移植後からすぐに、ヒトアルブミンがラット血中に持続的に検出された。移植6週後にはFSGラットの肝臓内に、ヒト肝細胞の生着および増殖が確認された。さらに、ヒト間葉系幹細胞から分化したヒト肝細胞様細胞を移植したFSGラットの血中において、ヒトアルブミンを検出することに成功した。
 本研究において、ZFN技術により作製した重症免疫不全ラットに、ヒト肝細胞を移植して模擬的なヒト肝臓を構築することに成功した。今後は、ラット肝臓内におけるヒト肝細胞の置換率の向上を目指す。ラットは、マウスよりも体が10倍大きく、肝細胞、血液、胆汁採取等にメリットがある。高効率の肝ヒト化ラットを利用することで、創薬候補化合物のスクリーニング、新規医薬品の薬物代謝、薬効・毒性試験、薬物間相互作用をヒト生体レベルで評価することが可能となる。
結論
本研究により、重症免疫不全ラットを開発し、ヒト肝細胞を移植した肝ヒト化ラットの作製に成功した。重症免疫不全SCID 、XSCID、およびFSGラットは、ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」を通して国内外研究機関へ提供するとともに、ヒト肝細胞キメララットについてはフェニックスバイオからの販売を検討する。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201208026B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト肝細胞キメララットによる新しい創薬評価モデルの開発
課題番号
H23-創薬総合-若手-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
真下 知士(京都大学 大学院医学研究科附属動物実験施設)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
創薬候補化合物のスクリーニングおよび前臨床試験では必ず動物実験が行われるが、ヒト薬物動態を正確に予測するためには、動物ーヒト種間での肝臓代謝酵素の違いが問題になることが多い。本研究では、新しい遺伝子改変技術ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)により作製した重症免疫不全ラットに、ヒト肝細胞を移植して模擬的なヒト肝臓を構築することにより、ラット体内でヒト薬物代謝試験を行える新たな創薬モデル基盤を開発する。
研究方法
平成23年度に、ZFN 技術によりSCID 、XSCID、およびダブルSCID(FSG)ラットを作製した。これら重症免疫不全ラットにおいて、血中グロブリンレベル、T細胞、B細胞、NK細胞などをFACS解析した。さらに、これら免疫不全ラットの免疫応答を評価するため、ヒト卵巣がん細胞を皮下移植、ヒトiPS細胞の精巣移植を実施した。
平成24年度は、これら重症免疫不全ラットに、ヒト肝細胞を移植することで高効率にヒト肝細胞が置換されたキメララットを作製した。作製したキメララットにおいて、ヒトアルブミン生産能、ヒト薬物代謝酵素機能、ヒト肝細胞置換率を測定した。
結果と考察
平成23年度は、ZFN 技術によりSCID 、XSCID、およびダブルSCID(FSG)ラットを作製した。FSGラットにおいて、血中グロブリンレベルの欠失、T細胞、B細胞、NK細胞の欠失など重度の免疫機能不全を確認した。このFSGラットを用いて、1)ヒト卵巣がん細胞を皮下で増殖させること、2)ヒトiPS細胞を精巣に移植することでテラトーマの形成に成功した。
平成24年度は、この重症免疫不全ラットにヒト肝細胞を移植することで、肝ヒト化ラットの作製を試みた。ラット肝細胞の増殖を阻害するアルカロイドの一種であるレトロルシンを投与した後、FSGラットの門脈からヒト肝細胞を移植した。ヒト肝細胞移植後からすぐに、ヒトアルブミンがラット血中に持続的に検出された。移植6週後にはFSGラットの肝臓内に、ヒト肝細胞の生着および増殖が確認された。さらに、ヒト間葉系幹細胞から分化したヒト肝細胞様細胞を移植したFSGラットの血中において、ヒトアルブミンを検出することに成功した。
本研究において、ZFN技術により作製した重症免疫不全ラットに、ヒト肝細胞を移植して模擬的なヒト肝臓を構築することに成功した。今後は、ラット肝臓内におけるヒト肝細胞の置換率の向上を目指す。ラットは、マウスよりも体が10倍大きく、肝細胞、血液、胆汁採取等にメリットがある。高効率の肝ヒト化ラットを利用することで、創薬候補化合物のスクリーニング、新規医薬品の薬物代謝、薬効・毒性試験、薬物間相互作用をヒト生体レベルで評価することが可能となる。
結論
 本研究により、重症免疫不全ラットを開発し、ヒト肝細胞を移植した肝ヒト化ラットの作製に成功した。重症免疫不全SCID 、XSCID、およびFSGラットは、ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」を通して国内外研究機関へ提供するとともに、ヒト肝細胞キメララットについてはフェニックスバイオからの販売を検討する。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201208026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、新しい遺伝子改変技術ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)により作製した重症免疫不全ラットに、ヒト肝細胞を移植して模擬的なヒト肝臓を構築することにより、ラット体内でヒト薬物代謝試験を行える新たな創薬モデル基盤を開発した。成果はCell Reports等の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
重症免疫不全ラットを利用することで、ラット体内でヒト薬物代謝試験を行える新たな創薬モデル基盤を開発した。開発された肝ヒト化ラットは、新規医薬品のスクリーニング、薬理薬効試験、薬物動態試験、毒性試験等を効果的に実現することができる新たな創薬モデル基盤の開発に繋がる事が期待されている。
ガイドライン等の開発
内閣府総合科学技術会議事務局生命倫理専門調査会(2012年11月27日)において、動物を用いたヒト臓器作成:重症免疫不全SCIDラットの作製、およびヒトiPS細胞、がん細胞、肝細胞の体内培養について説明した。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
朝日新聞(2012年9月29日 15面)、京都新聞(9月14日 28面)、産経新聞(9月14日夕刊 10面)日刊工業新聞(9月14日 20面)、関西地域振興財団KIPPO NEWS(10月25日)、科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター「客観日本」(10月25日)、Kyoto University Research Activities(January, 2013)に掲載された。その他、多数の学会シンポジウム等で招待講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mashimo T, Takizawa A, Kobayashi J, et al.
Generation and Characterization of Severe Combined Immune Deficient Rats.
Cell Reports , 2 (3) , 685-694  (2012)
doi: 10.1016/j.celrep.2012.08.009
原著論文2
真下知士
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)による重症免疫不全(SCID)ラットの作製と創薬応用研究への試み
遺伝子医学 MOOK 22号 , 22 , 44-51  (2012)
原著論文3
真下知士、金子武人
ラットにおける遺伝子改変技術の新展開
細胞工学 , 32 (5) , 564-568  (2013)
原著論文4
真下知士、芹川忠夫
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
細胞工学 , 31 (3) , 296-301  (2012)
原著論文5
真下知士、芹川忠夫
ジンクフィンガーヌクレアーゼによる遺伝子改変動物の作製
MSD(メディカル・サイエンス・ダイジェスト) , 38 (1) , 10-11  (2012)
原著論文6
真下知士
重症免疫不全SCIDラットの作製
医学のあゆみ , 246 (13) , 1114-1115  (2013)
原著論文7
真下知士
重症免疫不全SCIDラットの作製と応用
腎と透析:特集再生医療と腎 , 75 (6) , 817-823  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-02

収支報告書

文献番号
201208026Z