高脂肪食による非侵襲性マイクロミニピッグ脳梗塞・心筋梗塞モデルの開発

文献情報

文献番号
201208020A
報告書区分
総括
研究課題名
高脂肪食による非侵襲性マイクロミニピッグ脳梗塞・心筋梗塞モデルの開発
課題番号
H23-創薬総合-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
谷本 昭英(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科腫瘍学講座分子細胞病理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 篤(鹿児島大学共同獣医学部 獣医薬理学)
  • 三浦直樹(鹿児島大学共同獣医学部 獣医臨床画像診断学)
  • 川口博明(鹿児島大学共同獣医学部 組織病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
循環器疾患の克服のため,動脈硬化の病態を解明し,治療法・予防法を開発するための動物モデル開発は不可欠である.我々は世界最小・超小型マイクロミニピッグ(MMPig: Microminipig)に高脂肪・コレステロール食を給餌し,持続的高コレステロール血症と動脈硬化症を誘導した.MMPigは高LDLコレステロール動物で,食性や睡眠行動などヒトとの類似点も多く,食事制御のみでヒトに類似した動脈硬化病変を誘発できる.一方,睡眠障害はヒトの動脈硬化の危険因子として注目されており,MMP動脈硬化モデルに睡眠障害を負荷することにより,短期間で動脈硬化病変を進行させ,非侵襲性脳・心筋梗塞モデルの確立を目指す.平成23年度には,高脂肪食8週間の食餌性投与を行った.投与2週間以後には安定した高脂血症が見られ,コレスロール代謝に関わる分子の肝での発現パターンはヒトときわめて類似していた.また,8週目の解剖では大動脈を含め全身の動脈にヒトと同様の粥状動脈硬化を形成することを確認した.平成24年度には,比較的低濃度の高コレステロール食負荷で誘導される高脂血症に対するHMG-CoA reductase (スタチン) の阻害剤の効果を検討した.
研究方法
特殊飼料のコレステロール含量を0.1%および0.2%に調整し(脂肪は12%で固定、コール酸無添加)スタチン投与あり・なしの群を設定した(3mg/kg/day).スタチンは食餌混入とし,1日1回投与,飼育期間は10週間とした.臨床検査項目として以下の項目を測定した(1回/2週間).
1)血液検査:定期的に採血し,血中脂質(中性脂肪, 総コレステロール, HDL, LDL),リポ蛋白
分画、アポ蛋白分画、CETP活性、HL活性を測定.2)CT検査:定期的に全身のCTスキャンを行い、
循環器系の異常および体脂肪の増加などを精査した.また肝臓については脂肪肝の指標であるCT値
を求めた.3)心および頚動脈エコー:循環器系の異常を精査した.4)心電図・非観血式血圧測
病理学的検索として,病理解剖を行い,心臓・脳および全身の動脈を観察および採取し,定法にしたがいホルマリン固定後パラフィン包埋,hematoxylin and eosin (HE)染色・特殊染色後を行った.遺伝子発現解析として,肝・小腸でのコレステロール代謝関連遺伝子(LDL受容体, HDL受容体,
HMG-CoA還元酵素,コレステロール運搬蛋白,Hepatic lipase,apoB editing酵素など)の発現および負荷食に対する反応やスタチン投与による影響を定量的RT-PCRで判定した.
 長期飼育によるびまん性内膜肥厚の検証のために,普通食および低濃度のコレステール食で1年以上飼育し,上記記載の臨床検査,画像診断法を用いて長期間観察し,解剖後は病理組織学的検索を行った.
結果と考察
10週間の実験において,スタチンは有意に高脂血症の改善効果を示した.
 1年以上の長期飼育での観察においては,エコーによる頸動脈などの動脈硬化病変の経時的観察に成功した.これは比較的小型動物であるマウスやウサギでは観察困難な手技であり,MMPig において初めて可能となった.一般的にブタの寿命は10年以上であり,今後さらに長期間の飼育とエコーによる病変観察が可能になると考えられる.
結論
マウスよりヒトに近い解剖・生理を有する MMPig において,臨床使用薬剤の効果を示した意義は小さくはない.また、長期飼育下での長期血管エコー観察の成功は、動脈硬化研究に非常に有用な新規の実験動物であることを示す結果をさらに提供した.

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201208020Z