後天的心疾患・不整脈解析モデルとしてのエピジェネティック変異

文献情報

文献番号
201208019A
報告書区分
総括
研究課題名
後天的心疾患・不整脈解析モデルとしてのエピジェネティック変異
課題番号
H23-創薬総合-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 純(東京大学 分子細胞生物学研究所エピゲノム疾患研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 塚原 由布子(東京大学 分子細胞生物学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はヒト心不全患者の心生検からの遺伝子プロファイルから不整脈、心肥大を引き起こす可能性のあるエピジェネティック因子に着目し、成体でその遺伝子破壊マウスまたは遺伝子過剰発現マウスを作製することで、心臓生理異常や遺伝子発現変化をプロファイル化しヒト心不全発症原因の解明につなげるアプローチ行なうことである。本研究終了までには広く研究者、基礎臨床に提供出来るようヒト心疾患発症を引き起こすエピジェネティック因子の単離を目指すことを目的とする。
研究方法
1:心臓再生モデルとしてのSmarcd3過剰発現マウス(Smarcd3-TGマウス)
2:不整脈モデルとしてのクロマチン構造変換因子Brg1の原因解明
3:ヒト心不全原因遺伝子としてのDNAメチル化因子研究
4:ヒト心筋緻密化障害モデルとしてのARIP4とホルモンの関係
5:ストレス負荷(TAC)時における5種類のクロマチン関連因子群変異マウス
結果と考察
心肥大や不整脈は発症頻度が高く心筋梗塞を引き起こし易く突然死に至ることから、心不全に至る可能性のある心疾患モデル生物を作製することは重要な課題であり、原因究明だけでなく機能回復に向けた事業に発展することが可能となる。心筋症、心筋梗塞を招く可能性のある因子として、本申請者はエピジェネティック因子に着目してきた。実際、ヒト心不全生検での遺伝子アレープロファイルではこれら因子の発現に異常が生じており、遺伝子破壊、または過剰発現させることにより心肥大や不整脈を伴い、モデルマウスとして機能する結果を得てきた(Takeuchi et al., Nature.Commun. 2011)。また、本年度、人工的に心筋梗塞を発症させても心不全が抑制されるモデルマウスも作製された(論文投稿中)。これにより、本申請は、このモデルマウスは将来のヒト後天的な心筋梗塞や心不全発症メカニズムを知る上で貴重なモデル生物になると考えている。また、これらのモデルマウスを利用することで、将来的に心不全の機能回復、または心筋梗塞抑制薬剤研究に大きく役立つものと期待される。さらに、この結果を踏まえて、ヒト男女心不全患者(年齢別:60-70/70-80/80-90歳代・(非)高血圧・(非)糖尿病・(非)喫煙者)におけるRNA-seqとmiRNAアレイへの研究発展を行なう必要が生じてきた。
結論
①SWI/SNF-BAF クロマチンリモデリング複合体:SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体のコア因子Brg1の発現減少または消失が拡張型心筋症・不整脈発症に重要な意味をもっており、心特異的なクロマチン因子が先天性心疾患の重篤性に深く関与している事を世界で始めて報告出来た。Baf60c恒常的発現(TG)マウスでは、MI(心筋梗塞)後の線維化が抑制され、機能心筋で覆われており心不全が抑制されていた、心筋再生には特異領域でのクロマチン構造の変換が重要である事が示唆された。
②DNAメチル化因子:ヒト心不全患者ではDNA メチル化因子Dnmt1の極度の発現減少が見受けられ、心負荷マウスを用いてDnmt1/3a/3bの発現変化を時系列的に解析してきた。さらに、各々遺伝子破壊マウス(KO)を作製したところ、Dnmt1KOマウスでは心筋分化亢進が見受けられ、Dnmt3aKOマウスでは心電図の結果心室筋収縮異常が確認された。
③男性ホルモン結合因子:Arip4がアレープロファイルから単離され、遺伝子破壊マウスを作製したところ、心筋心筋がスポンジ状形態を呈し左室緻密化障害を発症している事が分かった。Arip4はエピジェネティック因子と共役することから、後天的な心不全リスクを高める因子としても着目している。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201208019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,360,000円
(2)補助金確定額
9,360,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,703,130円
人件費・謝金 294,150円
旅費 192,200円
その他 10,520円
間接経費 2,160,000円
合計 9,360,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
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