日本人に高頻度に見られる血栓性遺伝子変異をもつ疾患モデルマウスの開発

文献情報

文献番号
201208018A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人に高頻度に見られる血栓性遺伝子変異をもつ疾患モデルマウスの開発
課題番号
H23-創薬総合-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 敏行(独立行政法人 国立循環器病研究センター 分子病態部 )
研究分担者(所属機関)
  • 小亀 浩市(独立行政法人 国立循環器病研究センター 分子病態部)
  • 坂野 史明(独立行政法人 国立循環器病研究センター 分子病態部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人はプロテインS-K196E変異とプラスミノーゲン-T620A変異を高頻度に保有し、プロテインS-K196E変異は静脈血栓塞栓症のリスクになることを私達は報告してきた。これらの両ミスセンス変異は活性低下を伴い、白人種には見られない。本研究では、研究代表者が同定したこれら2つの日本人に見られる血栓性遺伝子変異を保有するマウスを作製し、白人に見られる易血栓性マウス(凝固第V因子R504Q変異を持つマウス:FV-R504Q変異マウス)と血栓能を比較しつつ評価するとともに、作製した遺伝子改変マウスを(独)医薬基盤研究所に登録・寄託することにより資源化を図り、創薬モデルマウスの生物資源の整備に寄与することを目的とする。静脈血栓塞栓症は加齢とともに発症頻度が急上昇するので、超高齢化社会を迎えた本邦では喫緊の研究である。静脈血栓塞栓症の素因に関する研究は妊産婦の安全な妊娠・出産にも極めて重要な課題であり、安全・安心な社会の形成に貢献する。血栓症の不安を解消することは、国家戦略として重要な位置を占め、本研究の社会的・経済的メリットは極めて高い。また、本研究は変異保有者に対して副作用の少ない選択的治療法の開発に繋がることが期待される。
研究方法
私達は、プロテインS K196E変異ホモ接合体・ヘテロ接合体マウス、プロテインS遺伝子欠損ヘテロ接合体マウス、プラスミノーゲン T622A変異ホモ接合体・ヘテロ接合体マウスの作製に成功した。本研究では、これら5種の血栓性マウスの表現型を解析する。前年度までに、これらの遺伝子改変マウスの遺伝的背景をC57BL/6Jに整えた。本年度は、組織因子惹起およびポリリン酸惹起肺塞栓モデル、通電による下大静脈静脈血栓症モデルなどのin vivo血栓評価系を用いて、これらの遺伝子改変マウスの血栓能の亢進を評価し、白人種に見られるFV-R504Q変異マウスと比較検討することにより、白人と日本人の血栓能の違いを明らかにする。
結果と考察
今年度は、プロテインS-K196E変異マウスを用いて、組織因子投与およびポリリン酸投与による肺塞栓モデル実験、および下大静脈への通電による静脈血栓モデル実験を行った。プロテインS-K196E変異ヘテロ接合体マウスおよびホモ接合体マウスは、FV-R504Q変異マウスと同様に野生型マウスに比べ、肺塞栓モデルおよび通電による静脈血栓モデルともに、重度の静脈血栓を示した。プロテインS遺伝子欠損マウスも重度の静脈血栓を示した。一方、プラスミノーゲン-A622T変異マウスは脳梗塞巣の拡大や創傷治癒の遅延は見られなかった。これらの研究から、プロテインS-K196E変異およびプロテインS遺伝子欠損は静脈血栓の重症化に繋がるが、プラスミノーゲン-A622T変異は血栓症の重症化が見られないことを明らかにした。
結論
日本人に比較的広く見られるプロテインS-K196E変異とプラスミノーゲン-T620A変異を持つマウスを作製した。プロテインS 遺伝子欠損ヘテロ接合体マウスも作製した。プロテインS-K196E変異マウスおよび遺伝子欠損マウスは重度の静脈血栓を示した。一方、プラスミノーゲン-A622T変異マウスでは脳梗塞巣の拡大や創傷治癒の遅延は見られなかった。プロテインS-K196E変異マウスおよび遺伝子欠損マウスは血栓症のモデルマウスになる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2013-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201208018Z