文献情報
文献番号
201208015A
報告書区分
総括
研究課題名
優良形質を持った薬用植物新品種の育成及びそれら種苗の安定供給体制構築のための保存,増殖に関する基盤的研究
課題番号
H22-創薬総合-指定-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 修(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター種子島研究部)
研究分担者(所属機関)
- 川原 信夫(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 渕野 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 吉松 嘉代(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 熊谷 健夫(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 菱田 敦之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター北海道研究部)
- 杉村 康司(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター種子島研究部)
- 河野 徳昭(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 林 茂樹(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター北海道研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
16,876,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
薬用植物の国内栽培を推進するためには、各地域の環境に適した収量性の高い、日本薬局方の品質基準を満たす品種の育成とそれらの種苗の安定供給が必要である。薬用植物の国内栽培生産を促進し、品質が均一で生産履歴の明確な生薬を医療の場へ安定して供給するため、1)薬用新品種の育成と普及、2)種苗の保存および3)種苗の効率的増殖法に関する研究を行った。
研究方法
1)(独)医薬基盤研究所で育成したハトムギ品種‘北のはと’の北海道での生産栽培、ハトムギ品種‘はとろまん’とシャクヤク品種‘べにしずか’の埼玉県での実証栽培並びに次期新品種候補のシャクヤク、カンゾウ、ハトムギの選抜を行い、ナイモウオウギ種子への直接遺伝子導入法、カンゾウ属植物のDNAマーカーの検索および生薬シコンの品質評価法について検討した。2)薬用植物種子の発芽試験法の規格化のための発芽試験、カンゾウ等4種類の植物の培養苗由来の再生植物体形質変異に関する実証栽培試験を行った。3)イトヒメハギ等4種類の植物の組織培養による効率的増殖法の確立、ハナトリカブトの圃場栽培における増殖法およびカノコソウの圃場栽培における農薬の適正使用法について検討した。
結果と考察
1)育成品種の普及と栽培指導を行った。平成24年度北海道内における‘北のはと’の栽培面積は18.5 ha、規格品の収穫量は32.7トンであった。‘北のはと’を原料とした医薬品(局方ヨクイニン)と食品(手のべひや麦)が商品化された。‘はとろまん’と‘べにしずか’の実証栽培を行い、両品種の環境に対する生育適性を確認した。実証栽培における‘はとろまん’の栽培面積は1.16 ha、収穫量は427.6 kgであった。‘べにしずか’は恒温多湿等が原因で、生存率の低下が認められた。次期新品種候補の育成では、シャクヤク系統No.513の5年生株の収量調査と増殖、カンゾウ系統No.10と70の開花特性調査、No.10の自殖第一代の生育とグリチルリチン含量の調査および増殖、ハトムギ種子島在来選抜系統等3系統の特性比較試験を行った。ナイモウオウギ種子へ緑色蛍光タンパク質遺伝子をエレクトロポレーションにより直接導入し、活着植物体の約2%において本葉のゲノムDNAへの遺伝子の導入を確認し、形質転換植物体を作出した。ウラルカンゾウのグリチルリチン生合成経路の鍵酵素のCYP72A154遺伝子のゲノムDNAの塩基配列情報が、カンゾウ属植物の系統間識別および優良系統の選抜のための遺伝子マーカーとして利用できることを明らかにした。生薬シコン中のシコニン色素含量評価法として、分光測色計を用いた新たな分析方法を開発した。2)キキョウ等13種類の種子の発芽試験を行い、発芽試験法の規格化を設定した。セリバオウレン、カンゾウ、ウコンおよびショウガの培養苗由来の再生植物体形質変異の実証栽培試験について、セリバオウレンでは培養苗の根茎増殖率と根重が圃場苗を上回り、カンゾウでは培養苗の生育が旺盛になる一方、グリチルリチン含量が低下することが明らかとなった。ウコンとショウガは2年間育成した培養苗由来根茎を用い、圃場における畑苗由来根茎との比較栽培を行い、形態特性および根茎の増殖について調査した。セリバオウレンとカンゾウの培養苗は種苗生産用として、ウコンとショウガの培養苗は種苗用および生薬生産用両方の種苗としての適性が高いことを実証した。3)植物組織培養による効率的増殖法について、カイケイジオウの増殖法を確立し、アカヤジオウ、シナマオウ、イトヒメハギの培養シュートの育成と増殖に成功した。ハナトリカブトの圃場栽培における稲ワラ被覆処理が有効であった。カノコソウ栽培における登録農薬除草剤の適用拡大のため、3種類の除草剤について効果、薬害、残留値を試験し、実用化に向け関係機関と協議した。
結論
1)育成品種のハトムギとシャクヤクの普及と栽培指導を推進した。次期新品種候補のシャクヤク、カンゾウおよびハトムギの選抜、育成、増殖を行った。緑色蛍光遺伝子のナイモウオウギ種子への直接導入に成功した。ウラルカンゾウのグリチルリチン生合成経路の鍵酵素CYP72A154遺伝子のゲノムDNAの塩基配列情報が、カンゾウ属植物の系統間識別および優良系統選抜の遺伝子マーカーとして利用できることを明らかにした。生薬シコン中のシコニン色素含量評価法として、分光測色計を用いた新たな分析方法を開発した。2)13種類の種子の発芽試験を行い、発芽試験法の規格化を設定した。カンゾウ等4種類の培養苗由来の再生植物体形質変異について実証栽培試験を行った。3)イトヒメハギ等4種類の植物の組織培養による培養シュートの育成と増殖に成功した。ハナトリカブトの稲ワラ被覆栽培による増殖法およびカノコソウの圃場栽培における除草剤の適正使用と適用拡大について検討した。
公開日・更新日
公開日
2013-09-03
更新日
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