疾患研究のための細胞コレクションの資源化ならびに品質評価法・特性解析法開発に関する研究

文献情報

文献番号
201208014A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患研究のための細胞コレクションの資源化ならびに品質評価法・特性解析法開発に関する研究
課題番号
H22-創薬総合-指定-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小原 有弘(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 ウイルス学)
  • 原澤 亮(岩手大学 農学部 獣医微生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
35,090,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
創薬研究、疾患研究など様々な生命科学研究において培養細胞は欠くことのできない研究ツールとなっている。研究者が安心して利用できる高品質な細胞資源の拡充・供給体制整備は重要な課題である。基盤研・培養資源研究室はその特徴(世界に誇る高品質細胞の供給,保有資源数3500種以上)を生かして、高品質な細胞資源の拡充・供給体制整備を実現するため研究を実施した。
研究方法
本研究では、1.疾患研究のための細胞コレクションの資源化 2.汚染の無い高品質細胞資源供給基盤の構築 3.品質評価法・特性解析法開発による細胞情報付加のため、高発がん性遺伝病患者由来細胞株の資源化、ウイルス検査法開発、ゲノム詳細解析、miRNAプロファイル法開発等を行った。
結果と考察
<疾患研究のための細胞コレクションの資源化>ガードナー症候群、レックリングハウゼン症候群を中心とした遺伝性疾患患者由来細胞の資源化を実施し、研究者にとって有用な細胞の供給体制整備を行った。<汚染の無い高品質細胞資源供給基盤の構築>細胞資源のウイルス検査を継続実施し、858検体を検査し、66検体(65細胞)でウイルス検査陽性の結果を得ることが出来、細胞資源のウイルス汚染の現状を把握することができた。また世界の細胞バンクと委員会を設置し、誤謬細胞リストの公開、新規誤謬細胞の認定を実施した。<品質評価法・特性解析法開発による細胞情報付加>細胞のキャラクタライズ情報として細胞の染色体情報の付加、アレイCGH解析情報付加ならびに生物資源のプロファイル法としてmiRNAの集団構成分析による種・系統の識別法の開発を行った。これらの特性解析情報が研究者の研究に役立てられることが期待できる。
結論
本研究で実施した細胞の資源化ならびに品質高度化は、厚生労働行政に直結する創薬疾患研究の基盤を構築するものにほかならない。これらの研究基盤を整備することにより、国際研究社会における研究の信頼性・再現性が担保され、細胞資源を利用した研究による新薬開発・治療法開発の早期実現が可能となる。また、研究の信頼性・再現性を担保することは、研究に要する労力・費用を削減することにつながり、行政的にも重要な意義を持つと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-07-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201208014B
報告書区分
総合
研究課題名
疾患研究のための細胞コレクションの資源化ならびに品質評価法・特性解析法開発に関する研究
課題番号
H22-創薬総合-指定-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小原 有弘(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 難治性疾患研究所 ウイルス学)
  • 原澤 亮(岩手大学 農学部 獣医微生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
創薬研究、疾患研究など様々な生命科学研究において培養細胞は欠くことのできない研究ツールとなっている。研究者が安心して利用できる高品質な細胞資源の拡充・供給体制整備は重要な課題である。基盤研・培養資源研究室はその特徴(世界に誇る高品質細胞の供給,保有資源数3500種以上)を生かして、高品質な細胞資源の拡充・供給体制整備を実現するため研究を実施した。
研究方法
本研究では、1.疾患研究のための細胞コレクションの資源化 2.汚染の無い高品質細胞資源供給基盤の構築 3.品質評価法・特性解析法開発による細胞情報付加のため、高発がん性遺伝病患者由来細胞株の資源化、ウイルス検査法開発、ゲノム詳細解析、miRNAプロファイル法開発等を行った。
結果と考察
<疾患研究のための細胞コレクションの資源化>本研究では遺伝性疾患患者由来細胞のデータベース化、資源化を実施し、研究者への供給体制確立に努めた。実際に供給した細胞よりiPS細胞が樹立されるなど効果を上げた。<汚染の無い高品質細胞資源供給基盤の構築>細胞資源のウイルス検査を継続実施し、858検体を検査し、66検体(65細胞)でウイルス検査陽性の結果を得ることが出来、細胞資源のウイルス汚染の現状を把握することができた。また世界の細胞バンク共同で、細胞のクロスコンタミに関するガイドライン、誤謬細胞リスト公開を実施し、研究社会に貢献した。<品質評価法・特性解析法開発による細胞情報付加>染色体解析、アレイCGH解析、miRNA解析を実施し、これらの特性解析情報を細胞情報としてデータベース化した。これにより利用者が細胞選択の際に必要な情報の拡充が図られ、研究基盤の構築ができた。
結論
本研究で実施した細胞の資源化ならびに品質高度化は、厚生労働行政に直結する創薬疾患研究の基盤を構築するものにほかならない。これらの研究基盤を整備することにより、国際研究社会における研究の信頼性・再現性が担保され、細胞資源を利用した研究による新薬開発・治療法開発の早期実現が可能となる。また、研究の信頼性・再現性を担保することは、研究に要する労力・費用を削減することにつながり、行政的にも重要な意義を持つと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-07-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-11-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201208014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
疾患研究のため高発がん性遺伝病患者由来細胞(色素性乾皮症、ファンコニー貧血症など)1999株のデータベース化、細胞情報公開、供給体制確立を実施した。また、汚染の無い高品質細胞資源供給基盤の構築のためウイルス検査を実施し、細胞資源のウイルス汚染の現状を把握するとともに、細胞のクロスコンタミネーションに関するデータベース整備、国際ガイドライン策定を実施した。さらに品質評価・特性解析法開発による細胞情報付加について染色体解析、aCGH解析、miRNA解析など、細胞の特性解析情報をデータベース化した。
臨床的観点からの成果
本研究によって整備した高発がん性遺伝病患者由来細胞(色素性乾皮症、ファンコニー貧血症、網膜芽種、コカイン症候群、毛細血管拡張性運動失調症、ガードナー症候群、レックリングハウゼン症候群など)は疾患研究において重要な研究基盤となるものである。それらに付随する情報として細胞の品質ならびに大容量データベースの構築が今後の研究における重要な情報となることが期待されるとともに、臨床応用される薬剤の創出、治療法開発に大きく貢献した。
ガイドライン等の開発
ATCC、DSMZ、理研セルバンクなど世界の細胞バンクとともにデータを共有化し、世界の細胞バンクに登録されているデータを検索可能なデータベースとして構築した。また、細胞のクロスコンタミネーション(細胞認証試験)に関する国際ガイドラインを策定した。作成したガイドラインはANSI(American National Standards Institute)において承認され、頒布されている。マイコプラズマ否定試験に関しては日局17改正にPCR法の改正を行うべく他施設共同研究を実施した。
その他行政的観点からの成果
世界の細胞バンクとともにThe International Cell Line Authentication Committee (ICLAC)を立ち上げ、ガイドライン、SOP、クロスコンタミネーション細胞リストの公表等を行いながら、科学的根拠に基づくクロスコンタミネーション細胞のレビュー及び認定を実施した。さらにホームページを立ち上げこれらの情報を発信するとともに、Cell Line Checklistを論文審査員に配布する活動実施した。
その他のインパクト
Nature 492:186-186(2012)において、細胞クロスコンタミネーションを撲滅するために細胞認証試験の重要性を唱える記事を掲載した。今後、細胞を用いた研究の論文発表においてヒト細胞認証試験を必須とし、研究社会において研究の再現性・信憑性を確保できるよう提言を行った。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
77件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
16件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
DirksWG, Kohara A, Mizusawa H ,et al.
Cell line cross-contamination initiative: an interactive reference database of STR profiles covering common cancer cell lines.
International Journal of Cancer , 126 (1) , 303-304  (2010)
原著論文2
Capes-Davis A, Theodosopoulos G,Kohara A, et al.
Check your cultures! A list of cross-contaminated or misidentified cell lines.
International Journal of Cancer , 127 (1) , 1-8  (2010)
原著論文3
American Type Culture Collection Standards Development Organization Workgroup ASN-0002.
Cell line misidentification: the beginning of the end.
Nature Reviews Cancer , 10 (6) , 441-448  (2010)
原著論文4
Barallon R, Dirks WG, Kohara A, et al.
Recommendation of short tandem repeat profiling for authenticating human cell lines, stem cells, and tissues.
In Vitro Cellular & Developmental Biology - Animal , 46 (9) , 727-732  (2010)
原著論文5
Zhang Y, Ohyashiki JH, Shimizu N, et al.
Aberrant expression of NK cell receptors in Epstein-Barr virus-positive gammadelta T-cell lymphoproliferative disorders.
Hematology , 15 (1) , 43-47  (2010)
原著論文6
Miyagawa Y., Kiyokawa N., T., Shimizu N, et al.
Ex vivo expanded cord blood CD4 T lymphocytes exhibit a distinct expression profile of cytokine-related genes from those of peripheral blood origin.
Immunology , 128 (3) , 405-419  (2010)
原著論文7
Obara, H.and Harasawa, R.
Nitric oxide cause anoikis through attenuation of E-cadherin and activation of caspase-3 in human gastric carcinoma AZ-521 cells infected with Mycoplasma hyorhinis.
The Journal of Veterinary Medical Science , 72 , 869-874  (2010)
原著論文8
Saito S,Morita K, Kohara A,et al.
Use of BAC array CGH for evaluation of chromosomal stability of clinically used human mesenchymal stem cells and of cancer cell lines.
Hum Cell , 24 (1) , 2-8  (2011)
原著論文9
Mimura S, Kimura N, Kohara A, et al.
Growth factor-defined culture medium for human mesenchymal stem cells.
Int J Dev Biol. , 55 (2) , 181-187  (2011)
原著論文10
菅三佳,小原有弘,末盛博文 他
ヒト多能性幹細胞の命名法の国際統一規格案について.
再生医療 , 11 , 2-8  (2011)
原著論文11
Sugita S, Shimizu N, Watanabe K, et al.
Diagnosis of bacterial endophthalmitis by broad-range quantitative PCR.
Br J Ophthalmol , 95 (3) , 345-349  (2011)
原著論文12
Watanabe A, Tagawa H, Shimizu ,et al.
The role of microRNA-150 as a tumor suppressor in malignant lymphoma.
Leukemia , 25 (8) , 1324-1334  (2011)
原著論文13
Sugita S, Shimizu N, Watanabe K, et al.
Detection of Candida & Aspergillus species DNA using broad-range real-time PCR for fungal endophthalmitis.
Graefe Arch Clin Exp , 250 (3) , 391-398  (2011)
原著論文14
Ng SB, Yan J, Shimizu N, et al.
Dysregulated MicroRNAs Affect Pathways and Targets of Biological Relevance in Nasal-type Natural Killer / T-cell Lymphoma.
Blood , 118 (18) , 4919-4929  (2011)
原著論文15
Suzuki,J., Sasaoka,F.,Harasawa,R.,et al.
Molecular identification of ‘Candidatus Mycoplasma haemovis’ in sheep with hemolytic anemia.
J. Vet. Med. Sci. , 73 , 1113-1115  (2011)
原著論文16
Capes-Davis A, Reid YA, Kohara A, et al.
Match criteria for human cell line authentication: Where do we draw the line?
International Journal of Cancer , 132 (11) , 2510-2519  (2013)
原著論文17
Kinehara M, Hirayama N, Kohara A,et al.
Protein kinase C regulates human pluripotent stem cell self-renewal.
PLoS One. , 8 (1) , 54122-  (2013)
原著論文18
Manabu Ogawa , Sunao Sugita , Norio Shimizu , et al.
Novel diagnosis of fungal endophthalmitis by broad-range real-time PCR detection of fungal 28S ribosomal DNA.
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol , 250 (12) , 1877-1883  (2012)
原著論文19
Sasaoka, F., Suzuki, J., Harasawa, R.,et al.
Examination of the 16S-23S rRNA intergenic spacer sequences of ‘Candidatus Mycoplasma haemobos’ and Mycoplasma haemofelis.
J. Vet. Med. Sci. , 74 , 83-87  (2012)
原著論文20
Giangaspero, M., Nicholas, Harasawa, R., et al.
Seroepidemiological survey of sheep flocks from northern Japan for Mycoplasma ovipneumoniae and Mycoplasma agalactiae.
Trop. Anim. Health Prod. , 44 , 395-398  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2016-01-28

収支報告書

文献番号
201208014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
45,617,000円
(2)補助金確定額
45,617,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 23,120,415円
人件費・謝金 11,069,541円
旅費 597,430円
その他 302,614円
間接経費 10,527,000円
合計 45,617,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
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