文献情報
文献番号
199800044A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病に関する遺伝子Radに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 久徳(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1993年に糖尿病関連遺伝子として同定されたRad(Ras associated withdiabeties)は、細胞内情報伝達分子Rasスーパーファミリーに属する新しい低分子量GTP結合タンパク質をコードしており、糖尿病患者の骨格筋で著増していた。Radを強発現した培養骨格筋細胞では糖の取り込みが強く抑制されているので、Radは細胞の糖の取り込みに関連した情報伝達を担っている可能性が考えられる。しかし、これまでのところRadの具体的な作用メカニズムやRad自身の制御メカニズムはほとんど解明されておらず、本研究ではそれらを解明し、糖尿病発症における意義を見いだすことを目的とした。
研究方法
大腸菌でリコンビナントRadタンパク質を作成、精製した。また、それを用いてモノクローナル抗体を作成した。そして、その抗体を用いて間接蛍光抗体法による免疫染色や、GFP-Radコンストラクトを発現させてRadの細胞内局在を解析した。次に、リコンビナントRadを用いて、GTPオーバーレイ法とフィルター法でGTPの結合動態を検討した。Rad結合タンパク質をウサギ骨格筋細胞質分画より精製すべく、Radの免疫沈降、Radリガンドオーバーレイ、Radアフィニティークロマトグラフィー125I-Radを用いたクロスリンク法を実施した。
結果と考察
まず、リコンビナントRadを作成・精製し、それを用いて抗Radモノクローナル抗体を作成したが、それはウェスタンブロット及び免疫沈降が可能であった。その抗体を用い、Radを強発現した培養骨格筋細胞C2C12細胞でRadの局在を間接蛍光抗体法を用いて解析したが、Radは細胞質中に一様に染色されたので、主として細胞質に存在すると考えられた。インスリン刺激や高血糖刺激ではその局在はほとんど変化しなかった。また、蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質GFP-Radを作成しC2C12細胞に発現させたがRadの局在は同様であり、また、細胞形態にも変化は認められなかった。GTPオーバーレイ法で、リコンビナントRadにGTPが結合することを確認した。そして、フィルター法を用いて精製リコンビナントRadへのGTPの結合動態を解析した。一般にRasファミリーの場合GTPの結合はMgイオン濃度が低いほど結合速度(GDP/GTP交換反応の速度)は速くなる。しかし、Radの場合、Rasファミリーの他のタンパク質ならGDP/GTP交換反応がもっとも速くなる0.5uMMg2+の条件ではほとんどGTPは結合しなかった。他のメンバーでは、GDP/GTP交換反応の速度が大変遅くなるような5mM Mg2+の条件でもっとも多くGTPがRadに結合したが、加えたRadの2-3%にとどまった。この性質は他のメンバーと大きく異なるが、原因あるいは意義は不明である。Radと相互作用するタンパク質を同定するため、ウサギ筋肉組織細胞質分画を用いて、リコンビナントRadと非水解性GTPアナログGTPgS存在化にRadを免疫沈降したが特異的なタンパク質は、共沈されなかった。また、GST-Radタンパク質を作成・精製し、グルタチオンビーズに結合させた後ウサギ筋肉組織細胞質分画を用いてアフィニティークロマトグラフィーを試みたが特異的なバンドは検出できなかった。ウサギ筋肉組織細胞質分画をSDS-PAGE電気泳動・ブロット・リネイチャー後、[32P]GTP-Radを用いてRadリガンドオーバーレイを試みた。しかし、特異的なバンド(タンパク質)は検出されなかった。最後に、精製リコンビナントRadを125Iで標識し、ウサギ筋肉組織細胞質分画とインキュベート後、クロスリンカーを加えた。そして、そのサンプルを電気泳動後、オートラジオグラフィーしたが、数本の特異的なバンドが検出された。それらはRad結合タンパク質である可能性があり、現在、それらを精製中である。
結論
すでに、RadのcDNAをクローニングし、リコンビナントタンパク質も作成・精製した。そして、Radに対するGTP結合
動態を解析し、その特異性を認識し得た。そして、モノクローナル抗体を作成・解析し終え、それが、ウェスタンブロット・免疫沈降ともに可能であることがわかった。本研究により、Radに関する今後の研究の下地は完成したと言え、計画した方向にこの研究を押し進めていきたいと考えている。具体的には、まず、クロスリンク法により検出した数個のRad結合タンパク質の精製・同定に取り組んでいく予定である。
動態を解析し、その特異性を認識し得た。そして、モノクローナル抗体を作成・解析し終え、それが、ウェスタンブロット・免疫沈降ともに可能であることがわかった。本研究により、Radに関する今後の研究の下地は完成したと言え、計画した方向にこの研究を押し進めていきたいと考えている。具体的には、まず、クロスリンク法により検出した数個のRad結合タンパク質の精製・同定に取り組んでいく予定である。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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