文献情報
文献番号
201207002A
報告書区分
総括
研究課題名
精神・神経疾患関連バイオマーカー探索による創薬基盤研究
課題番号
H20-バイオ-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 雄一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第二部)
研究分担者(所属機関)
- 高坂新一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
- 功刀 浩(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第三部)
- 山村 隆(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部)
- 和田圭司(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第四部)
- 有馬邦正(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院第一精神診療部)
- 大槻泰介(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科診療部)
- 吉田寿美子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院臨床検査部)
- 中川栄二(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院小児神経診療部)
- 林由起子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
- 小紫 俊(大正製薬(株)薬理機能研究所)
- 茶木茂之(大正製薬(株)薬理機能研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
精神・神経疾患はその病因、病態の複雑さのために、治療薬開発が最も遅れている分野である。ヒトゲノムプロジェクトの成果を受けて、網羅的なゲノム解析手法で疾患関連遺伝子及びその産物が同定されてきているが、それらが病態にどう関わるかについて理解し、さらに創薬に結びつけるには、「たんぱく質レベル」の動態の把握が必要である。平成15年度~平成19年度に行った精神・神経疾患プロテオーム研究において、血液を用いた解析に比べ、髄液を用いた解析では、数多くの神経特異的たんぱく質の同定が可能で、中枢神経の状態を直接的に反映していることが実証された。その手法を最大限活用し、各種の精神・神経疾患患者から採取した髄液のプロテオーム解析を出発点として疾患特異的に変動するたんぱく質を見いだし、診断、病勢、薬効を判定する際に有効なバイオマーカーを同定し、さらにはそのたんぱく質及び関連するたんぱく質の機能解析を行うことで創薬に結びつけることが本研究の目的である。
研究方法
(A)髄液等の患者試料と情報の収集、(B)プロテオーム解析、(C)疾患特異的バイオマーカー同定に向けた研究、(D)臨床応用と創薬研究という研究内容の区分がある。そのうち、本年度は(A)については、 分担研究者のいる診療科及び臨床検査部と連携して、髄液採取のシステムを構築して多数例の髄液を確保する。(B)及び(C)については、患者髄液2mLからの解析法を用いて、統合失調症や気分障害の症例と健常対照者と比較して、バイオマーカーの候補となるタンパク質を見いだす。
結果と考察
平成24年度は、(A)に関しては、病院検査部及び各診療科との連携で、髄液試料確保のシステムを整備し、正常対照者、統合失調症等の精神疾患患者を中心に髄液採取が順調に登録された(平成25年3月31日までに、710検体)。(B)(C)に関しては、統合失調症10例、健常対象者10例のプロテオーム測定を終了し、さらにセカンドコホートとして統合失調症9例、健常者10例のデータを追加検討し、バイオマーカーの候補となりうるタンパク質を23個見いだした。そこで、別の統合失調症患者40例、健常者40例でELISA法を用いたバリデーションを行い、8個で何らかの統計的有意なものを見つけており、疾患もしくは創薬標的バイオマーカーとなる可能性が高い。今後、疾患特異性の検討、血液での検討などを行い、臨床応用を目指す。(D)を目標としてきたが、結果としてそこまで研究が進展できなかった。また、他の精神疾患やパーキンソン病のバイオマーカーの探索研究は、端緒の段階に止まった。
結論
統合失調症における疾患特異的バイオマーカー同定に向けた研究が推進できた。今後は見いだされたバイオマーカー候補のバリデーションを行うことで、その意義を確実にする。
公開日・更新日
公開日
2013-08-13
更新日
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