文献情報
文献番号
201206019A
報告書区分
総括
研究課題名
自己耳介由来軟骨前駆細胞を用いた再生医療に関する前臨床研究
課題番号
H24-再生-若手-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武部 貴則(横浜市立大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 英樹(横浜市立大学 医学部 )
- 小林 眞司(横浜市立大学 医学部 )
- 前川 二郎(横浜市立大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
形成外科領域では、先天奇形や外傷による組織欠損の治療に、組織充填物として自家組織が用いられることが多い。自家組織の中でも耳介軟骨や肋軟骨は使用頻度が高いが、軟骨採取部位の犠牲は大きく、変形、醜形、欠損などがしばしば問題となる。そこで、新規治療法として骨髄や脂肪などの組織由来間葉系幹細胞を用いた再生医療に対する期待が高まっているが、軟骨分化能が低く、異所性骨形成など重大な課題を抱えている。申請者らは、これら諸問題を解決するため、高い軟骨分化能を有したヒト耳介由来軟骨幹・前駆細胞の利用に着目し、その再生医療技術を確立してきた。本研究では、申請者が確立した軟骨再構築技術を、現行治療による修復が困難な高度の先天奇形や顔面変形を有する患者に対し、優れた軟骨再生治療をいち早く提供すべく、前臨床研究を遂行することを目的とする。研究期間終了時に、「ヒト幹細胞臨床研究実施計画」の申請を行う。
研究方法
平成24年度においては、GMPグレード培養工程の確立に向け、以下、1.GMPグレード医薬品を用いた培養工程の検証、2. 培養工程における品質管理基準の検証、3. 中動物を用いたプロトコルの検証・安全性の検討、の3項目に関して検証を行った。
結果と考察
1. GMPグレード医薬品を用いた培養工程の検証
下記3点に関して、検証を行った。①臨床応用可能なGMPグレードの血清の選定、および液性因子の選定、②小児~成人例の新規に樹立した症例を含む複数例での細胞増殖・分化誘導試験の実施、③自家血清含有培地を用いた細胞増殖能、軟骨分化能、組織再構築能の比較検討。なお、自家血清を用いた検証における成果は、国際学術雑誌での発表へ向けて、現在論文投稿準備中である。
2. 培養工程における品質管理基準の検証
ヒト軟骨前駆細胞の調整にあたり、調製処理、中間段階の調製物、最終調整物の保管等の作業管理システムの客観的基準を構築するために必要な基礎的検討を実施した。安全性評価のために、無菌試験、エンドトキシン試験、マイコプラズマ否定試験(PCR)を実施し、分化誘導を行った最終産物の出荷判定基準を規定するためにELISAによるグリコサミノグリカン、エラスチン定量実験を実施した。得られた参考値をもとに、次年度において品質評価基準の策定を行う。
3. 中動物を用いたプロトコルの検証・安全性の検討
耳介より分離した軟骨前駆細胞による分化誘導工程の検証、自家移植実験を実施し、弾性軟骨再構築の実効性・有効性の評価をイヌを用いて実施した。再生弾性軟骨の形成を確認するととともに、明らかな有害事象を認めず有益な基礎データを取得することができた。
また、標準作業手順書、製品標準書、製造指図書に関しても既に草案作成を完了しており、次年度における申請へ向けて適切な進捗状況にあるといえる。
下記3点に関して、検証を行った。①臨床応用可能なGMPグレードの血清の選定、および液性因子の選定、②小児~成人例の新規に樹立した症例を含む複数例での細胞増殖・分化誘導試験の実施、③自家血清含有培地を用いた細胞増殖能、軟骨分化能、組織再構築能の比較検討。なお、自家血清を用いた検証における成果は、国際学術雑誌での発表へ向けて、現在論文投稿準備中である。
2. 培養工程における品質管理基準の検証
ヒト軟骨前駆細胞の調整にあたり、調製処理、中間段階の調製物、最終調整物の保管等の作業管理システムの客観的基準を構築するために必要な基礎的検討を実施した。安全性評価のために、無菌試験、エンドトキシン試験、マイコプラズマ否定試験(PCR)を実施し、分化誘導を行った最終産物の出荷判定基準を規定するためにELISAによるグリコサミノグリカン、エラスチン定量実験を実施した。得られた参考値をもとに、次年度において品質評価基準の策定を行う。
3. 中動物を用いたプロトコルの検証・安全性の検討
耳介より分離した軟骨前駆細胞による分化誘導工程の検証、自家移植実験を実施し、弾性軟骨再構築の実効性・有効性の評価をイヌを用いて実施した。再生弾性軟骨の形成を確認するととともに、明らかな有害事象を認めず有益な基礎データを取得することができた。
また、標準作業手順書、製品標準書、製造指図書に関しても既に草案作成を完了しており、次年度における申請へ向けて適切な進捗状況にあるといえる。
結論
申請者が世界で初めて同定した低侵襲的に採取可能なヒト軟骨幹・前駆細胞を用いれば、高い軟骨分化能を有しながらも、幹細胞の特徴である自己複製と分化による恒常的な細胞更新による組織維持が期待される。したがって、このような優位性を有する細胞を用いて軟骨再生治療が展開できれば、低侵襲的に、かつ、形成外科治療の必須要件である長期形態維持性に優れた再生医療となることが期待される。本研究により、安全性の高い臨床研究プロトコルを確立し、厚生労働省の認可のもと我が国での臨床研究を開始することができれば、上記のような患者・患児に対し従来治療の問題点を克服し得る優れた軟骨再生治療を提供できるものと期待される。
公開日・更新日
公開日
2013-09-01
更新日
-