文献情報
文献番号
201206018A
報告書区分
総括
研究課題名
ライソゾーム病に対する細胞医薬品の開発にむけたConfidence in Mechanism (CIM) 取得のための基礎研究
課題番号
H24-再生-若手-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大倉 華雪((公財)先端医療振興財団 再生医療実現拠点ネットワークプログラム 開発支援室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ライソゾーム病は、ライソゾーム加水分解酵素の先天性欠損により中間代謝産物がライソゾーム内に蓄積、骨変形、肝脾腫、知能障害など種々の症状を呈する症患群であり、根治的治療法はない。対症療法として酵素補充療法製剤が承認された疾患もあるが一部にすぎず、新規機序の医薬品の開発が待たれている。本研究では、生体内で分化生着したADMPC由来再生肝細胞がライゾゾーム加水分解酵素を持続的に分泌、全身の細胞組織に供給することを機序とした新規概念の細胞医薬品の開発を目指し、臨床試験を開始するための有効性にかかる基礎的知見を収集する。
研究方法
本研究にて開発を目指す細胞医薬品は、生体内に生着分化することで、欠乏酵素を補充し続ける製剤と位置付けられる。従って、ADMPCが生体内で肝細胞に分化生着し、ライゾゾーム加水分解酵素を持続的に分泌、全身の細胞組織に供給することを確認することで、ライソゾーム病に対する新規機序細胞医薬品として研究開発を進めることのConfidence-in-Mechanismが得られると想定、以下の計画を行った。
1) in vitro脂肪組織由来多系統前駆細胞のβガラクトシダーゼ発現の検討:
2) ADMPCの間葉系幹細胞としての特性を用いた免疫抑制プロトコールの検討:
3) ADMPCの再生肝細胞への分化生着の確認
1) in vitro脂肪組織由来多系統前駆細胞のβガラクトシダーゼ発現の検討:
2) ADMPCの間葉系幹細胞としての特性を用いた免疫抑制プロトコールの検討:
3) ADMPCの再生肝細胞への分化生着の確認
結果と考察
平成24年度においては、生体内で分化生着した脂肪組織由来多系統前駆細胞(Adipose tissue-Derived Multi-lineage Progenitor Cell; ADMPC)由来再生肝細胞がライゾゾーム加水分解酵素を持続的に分泌、全身の細胞組織に供給することを機序とした根治的治療法に近い新規概念の細胞医薬品の開発を目指し、臨床試験を開始するための有効性にかかる基礎的知見を収集した。
1) in vitro脂肪組織由来多系統前駆細胞のβガラクトシダーゼ発現の検討:
βガラクトシダーゼはマンノース6リン酸(M6P)を持ち、細胞のマンノース6リン酸受容体を介して細胞に保持されることから、M6Pあるいはmannosamineを過剰に添加して培養、その上清を解析した。コントロール肝細胞とADMPCの双方で当該細胞は検出可能であり、M6PおよびM6P合成阻害剤であるmannosamineによる濃度依存性competitionから当該酵素は培養上清に分泌されたと想定される。酵素分泌というMode of Action (MOA)が確認され、comparability assayを行うための外挿性確認の証左となった。
2) ADMPCの間葉系幹細胞としての特性を用いた免疫抑制プロトコールの検討:
生着における免疫抑制剤の必要性を検証すべく、3系統のラットを用いた。F344 Ratをレシピエントとし、ドナーとしてF344 Rat(syngeneic)、Lewis Rat(minor miss match)、ACI rat(major miss match)より採取したADMPCを移植した。移植後2カ月において、特に問題は起こっていない。
3) ADMPCの再生肝細胞への分化生着の確認:
平成24年度において、医薬基盤研究所生物資源バンクよりGM1-ガングリオシドーシスモデルマウス(βガラクトシダーゼKOマウス)を受精卵凍結融解後の産生仔での分譲をうけ、繁殖後mADMPCを移植した。GM1-ガングリオシドーシスモデルマウス(βガラクトシダーゼKOマウス)の血清にはβガラクトシダーゼ活性をほぼ認めないが、mADMPCの経門脈的投与にて健常対象コントロールマウスの半分程度までβガラクトシダーゼ活性が改善していた。
ADMPCは経門脈的投与後肝臓内で肝細胞へと分化生着し、血中にβガラクトシダーゼを分泌し血中濃度を健常コントロールの半分程度まで改善させることから、することから、細胞製剤としてのFeasibilityは確認された。
1) in vitro脂肪組織由来多系統前駆細胞のβガラクトシダーゼ発現の検討:
βガラクトシダーゼはマンノース6リン酸(M6P)を持ち、細胞のマンノース6リン酸受容体を介して細胞に保持されることから、M6Pあるいはmannosamineを過剰に添加して培養、その上清を解析した。コントロール肝細胞とADMPCの双方で当該細胞は検出可能であり、M6PおよびM6P合成阻害剤であるmannosamineによる濃度依存性competitionから当該酵素は培養上清に分泌されたと想定される。酵素分泌というMode of Action (MOA)が確認され、comparability assayを行うための外挿性確認の証左となった。
2) ADMPCの間葉系幹細胞としての特性を用いた免疫抑制プロトコールの検討:
生着における免疫抑制剤の必要性を検証すべく、3系統のラットを用いた。F344 Ratをレシピエントとし、ドナーとしてF344 Rat(syngeneic)、Lewis Rat(minor miss match)、ACI rat(major miss match)より採取したADMPCを移植した。移植後2カ月において、特に問題は起こっていない。
3) ADMPCの再生肝細胞への分化生着の確認:
平成24年度において、医薬基盤研究所生物資源バンクよりGM1-ガングリオシドーシスモデルマウス(βガラクトシダーゼKOマウス)を受精卵凍結融解後の産生仔での分譲をうけ、繁殖後mADMPCを移植した。GM1-ガングリオシドーシスモデルマウス(βガラクトシダーゼKOマウス)の血清にはβガラクトシダーゼ活性をほぼ認めないが、mADMPCの経門脈的投与にて健常対象コントロールマウスの半分程度までβガラクトシダーゼ活性が改善していた。
ADMPCは経門脈的投与後肝臓内で肝細胞へと分化生着し、血中にβガラクトシダーゼを分泌し血中濃度を健常コントロールの半分程度まで改善させることから、することから、細胞製剤としてのFeasibilityは確認された。
結論
本研究では、生体内で分化生着した再生肝細胞がライゾゾーム加水分解酵素を持続的に分泌、全身の細胞組織に供給補充し続けることを機序とした新規概念の細胞医薬品と位置付けられるとの特色を有する。当該概念による製剤はこれまで皆無であり独創的である。
本研究事業では、研究期間後すみやかなヒト幹細胞臨床研究の申請あるいは薬事法上の治験開始を目指している。高度医療評価制度トラックの利用が迅速と考えられるが、企業等へのスムーズなライセンスアウトにむけ、薬事戦略相談・治験・製造販売承認取得を念頭に置いた研究開発を今後も進めることとしている。
本研究事業では、研究期間後すみやかなヒト幹細胞臨床研究の申請あるいは薬事法上の治験開始を目指している。高度医療評価制度トラックの利用が迅速と考えられるが、企業等へのスムーズなライセンスアウトにむけ、薬事戦略相談・治験・製造販売承認取得を念頭に置いた研究開発を今後も進めることとしている。
公開日・更新日
公開日
2013-09-01
更新日
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