再生医療早期実現化促進及び汎用性向上のための周辺基盤技術開発

文献情報

文献番号
201206007A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療早期実現化促進及び汎用性向上のための周辺基盤技術開発
課題番号
H23-再生-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部 )
研究分担者(所属機関)
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
  • 掛樋 一晃(近畿大学 薬学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトの細胞や組織を培養・加工した「細胞・組織加工製品」を用いた再生医療は,治療法に乏しく,重篤・致死的またはQOLを著しく損なう疾病・損傷に対して有効な治療法になると期待されている.本研究は,難治性疾患等の患者にいち早く有効な再生医療を届けるため,および国際的な再生医療の開発・ビジネス競争でわが国が主導的地位を得るために,将来の開発動向を見据えつつ,細胞・組織加工製品の品質・安全性に関して新規かつ汎用性の高い評価技術・製造法の開発を行い,わが国から世界に向けて先導的に提示することを最終目的とする.
研究方法
細胞・組織加工製品の安全性・品質の確保を図るための,効果的・効率的・合理的な①がん化の抑制,②感染リスク・汚染の排除,③免疫原性の低減,④均一性・同等性の確保に関する技術開発を展開した.
結果と考察
①細胞・組織加工製品の製造工程における造腫瘍性細胞の混入の検出を目的とした試験系として,国産の重度免疫不全マウスモデル(NOGマウス)への細胞移植試験の性能評価を実施した.細胞・組織加工製品のモデルケースとしてヒト骨髄間葉系幹細胞(hMSC)を用い,陽性対照としてHeLa細胞を一定量スパイクしたhMSCを用いて,試験系の検出感度を評価した.その結果,NOGマウスおよびマトリゲルを用いたin vivo造腫瘍性試験系に関しては,HeLa細胞の検出能力について,既存のガイドラインにあるヌードマウスを用いた方法と比較した場合,2千倍以上感度が高かった.また,同試験系を用いることにより,106個のhMSCに混入するHeLa細胞は,その下限として102個までが検出可能であった.従って,培養ヒト骨髄由来間葉系幹細胞において,NOGマウスおよびマトリゲルを用いたin vivo造腫瘍性試験系を用いた試験が「陰性」であることの意味は,「造腫瘍性細胞の混入は,仮にその造腫瘍性がHeLa細胞と同程度だとした場合,0.01%未満である」ということであることが明らかとなった.②ウイルス遺伝子特異的等温増幅法(Ladder forming RT-ICAN法)のプロトタイプ(HIV遺伝子検出を可能とするLadder forming RT-ICAN法)の開発に成功した.また,ヒト脂肪組織由来多系統前駆細胞と無血清・フィーダー細胞フリーで樹立したiPS細胞株を対象にウイルス由来遺伝子否定試験を実施し,本技術が有効に機能することを検証した.③iPS細胞の培養時の異種動物由来成分の混入原因として,未分化性の維持に用いるKSRとMEFを明らかにした.また,異種動物由来成分を用いて樹立され,KSRとMEFを用いて未分化性を維持したiPS細胞であっても,完全ヒト化培養条件での継代培養により,異種動物由来成分の混入を低減できることを明らかにした.④同一iPS細胞であっても培養条件の違いがの糖鎖プロファイルに影響を与えること,すなわち細胞の均質性・同質性に影響することを明らかにした.
結論
本研究の成果は,多くの細胞・組織加工製品に適用可能な基盤技術となり,国内で製品開発を目指す関係者に大いに活用されるとともに,わが国が国際的に先導的立場に立つ上でも意義深いと考えられる.

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201206007Z