重症低ホスファターゼ症に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植

文献情報

文献番号
201206005A
報告書区分
総括
研究課題名
重症低ホスファターゼ症に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植
課題番号
H23-再生-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
竹谷 健(島根大学医学部附属病院 輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 清次(島根大学 医学部)
  • 福田 誠司(島根大学 医学部)
  • 弓場 俊輔(独立行政法人産業技術総合研究所)
  • 大串 始(独立行政法人産業技術総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
低ホスファターゼ症は組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)遺伝子変異によってALPが生まれつき働かないことで正常な骨形成が障害される疾患で、そのうち重症例は、全身の骨が徐々に菲薄化・消失して、乳幼児期に死亡する。これまで、本疾患に対しては有効な治療法がない。したがって、正常な骨を形成するために、骨を作り出す骨芽細胞に分化する間葉系幹細胞を移植する臨床研究を行った。
研究方法
致死的な重症低ホスファターゼ症の診断後、ALPが正常なドナーから骨髄を採取し、まず患者に骨髄移植を行う。次に、採取された骨髄の一部を用いて産総研で培養・増殖した間葉系幹細胞を、患者に移植する。その後、症状および骨の状態などをみながら、間葉系幹細胞移植を繰り返し行う。評価項目として、生存率、臨床症状、骨の石灰化および有害事象の検討を行う。
キメリズム解析は、造血細胞と間葉系幹細胞で行った。また、患者および骨髄提供者(保因者)、正常健康人の間葉系幹細胞および骨芽細胞を用いた網羅的遺伝子発現を解析、日本人に低ホスファターゼ症の患者に同定されたTNSALP遺伝子変異体を構築し、ALP活性、ドミナントネガティブ効果および石灰化能を検討した。
倫理面への配慮に関して、当該研究が島根大学医の倫理委員会および産総研の倫理委員会の承認を得た後、「ヒト幹細胞に用いる臨床研究に関する指針」において平成22年6月21日に厚生労働大臣の認可を得て行っている。
結果と考察
これまで2症例について、細胞治療を行った。主目的である3年生存率は、クリアできると思われる。臨床症状について、呼吸機能の改善は、4回目の間葉系幹細胞移植以降は原病の合併症である気管れん縮が起こらないこと、移植回数を増やすことで呼吸状態が安定すること、胸郭が樽状に改善していることから、間葉系幹細胞移植が呼吸障害の改善に寄与していることが示唆された。身体発育も伸びており、呼吸機能と合わせて、骨髄移植後6か月前後から、明らかに改善する傾向がみられた。しかし、精神発達遅滞や難聴などの中枢神経合併症が認められる。徐々に改善はしているが、今後注意深い観察が必要である。骨の石灰化に関して、どちらの症例も間葉系幹細胞を移植する毎に骨の石灰化が改善しているが、移植前の骨の状態によりその改善度が影響する可能性が示唆された。また、長期にわたり骨端における骨格の改善がみられることが確認できたが、皮質骨の菲薄化、すなわち骨の脆弱性が持続しているレントゲン像がみられ、これについては今後の検討を必要とする。さらに、骨の石灰化だけでなく筋肉量も改善しており、骨の石灰化に伴って二次的に回復していると思われた。臨床症状ならびに骨の石灰化は、正常な子供と同程度まで改善がみられていないことから、現時点では間葉系幹細胞の効果が限定的で十分ではないと思われた。有害事象に関して、骨髄移植の合併症は予想範囲内であったが、免疫抑制剤抵抗性GVHDは間葉系幹細胞が有効であった。間葉系幹細胞移植の有害事象は認めていないため、乳幼児にも安全に行えることが明らかとなった。
 キメリズム解析に関して、2症例ともにドナータイプの間葉系幹細胞が生着したことが確認できたことは、臨床的に骨化の改善が認められていることに反映していると思われた。このうち1例は、造血細胞がレシピエント優位な状況にも関わらず骨の石灰化が改善していることから、間葉系幹細胞と造血細胞の免疫寛容が生体内で起こっている可能性が示唆された。
 病態解析に関して、網羅的遺伝子解析を間葉系幹細胞と骨芽細胞について行ったところ、ALP活性が低下することにより代償的に骨に関わる遺伝子発現が上昇していることが明らかとなった。また、特に間葉系幹細胞において、骨に関わる遺伝子だけでなく、細胞内伝達、炎症、細胞接着に関わる遺伝子が変動していた。さらに、この疾患に合併する肺や中枢神経に関与する遺伝子も変動していた。したがって、この疾患が、骨だけでなくさまざまな四四条に寄与することが予測された。さらに、ALP活性および石灰化能が70%以上の変異体で低下していたが、これは臨床の重症度と一致する結果であった。しかし、一部の変異体は臨床像と合わずにALP活性が高い変異体もみられたこと、ドミナントネガティブ効果を認めた変異体を有する保因者が臨床的に正常であること、同じTNSALP遺伝子変異体を有する患者でも骨の石灰化の程度に開きがあることから、ALP以外に骨の石灰化に関わる因子が存在する可能性が示唆された。
結論
致死的で治療法のない重症低ホスファターゼ症に関して、骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植がある程度の効果を認めることが示唆された。しかし、その有効性および有害事象を明らかにするために、今後、症例数を重ねていくことが必要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201206005Z