文献情報
文献番号
201206002A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト幹細胞を用いた臨床研究のエビデンス創出から高度医療制度による実用化を目指した研究
課題番号
H22-再生-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 榛村 重人(慶應義塾大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
角膜輪部上皮幹細胞不全症の治療法に培養上皮シート移植があるが、従来はマウス線維芽細胞株がフィーダー細胞に用いられており、またロット管理も厳密になされていなかった。本研究は、従来の培養上皮シートで必要とされていた異種細胞や羊膜を用いない、より安全な再生技術を確立することを目的とし、新規に開発した手法による培養角膜上皮シート移植の治療効果及び安全性を検討した。なお、本研究は眼科としては全国で始めてヒト幹細胞臨床研究指針の承認下(平成21年1月21日・厚生労働省発医政第0191004号)で行われた。平成24年度においては、平成22年度-平成23年度において明らかになってきたロット間のばらつきを克服するべく、KGF及びROCK阻害剤を利用した改良培養法をヒト幹細胞臨床研究に再申請するとともに、平行してCPC内でのテストラン及び各種培養条件の追加検討を行った。
研究方法
上皮シート培養はセルプロセッシングセンター(CPC)にてGMP準拠で行い、フィーダー細胞には米国から購入したGMP準拠のヒト間葉系幹細胞を、細胞基質には従来の羊膜に替えて臨床用フィブリンを、上皮の細胞源には米国アイバンクから購入した移植用ドナー角膜を用いた。安全性を確保するため、培養開始時のドナー角膜保存液、培養1週時の培養上清、及び培養終了時の培養上清を採取し、好気性菌、嫌気性菌、真菌、マイコプラズマ、HBV,HCV,HIV-1,HTLV-1,パルボウイルスB19、およびエンドトキシン濃度検査を行った。また、移植2日前に破壊検査を伴う品質試験を行い、移植前日に出荷判定を行った。品質試験の内容は、性状試験(形態:敷石状、細胞層数:重層)、定量試験(細胞密度)、確認試験、及び前述の微生物検査である。また、出荷時に残留ウシ血清アルブミン濃度を測定した。確認試験においては、角膜上皮の特異的分化マーカーであるケラチン3/12に替えて、より特異的な分化マーカーであるケラチン12及び未分化マーカーであるケラチン15を検討した。また、長期培養維持可能か、基材にフィブリンを用いずとも培養後に剥離可能か、出荷処理後に冷蔵保存可能かについても検討した。
結果と考察
KGF及びROCK阻害剤を利用した改良培養法を用いたテストランにおいては、培養3週間でK12/K15陽性の重層シートを得ることができた。また、3回行われた安全性試験においては好気性菌、嫌気性菌、真菌、マイコプラズマ、HIV,HBV,HCV,HTLV-1,ヒトパルボウイルスB19陰性であり、エンドトキシンに関しても基準値以下であった。平行して行った追加検討において、我々の培養法では3カ月間にわたり、上皮シートを免疫染色パターン及びコロニー形成率に影響を与えずに維持できることが明らかになった。これは、移植スケジュールや培養管理に柔軟性を与え、産業化を考慮する上で有用である。加えて、フィブリンを用いずとも基底層ごと上皮シートを剥離できる可能性も示された。出荷後の保存条件等については、さらなる検討が必要であると思われた。なお、この新規培地で再申請中のヒト幹臨床研究については、平成25年1月31日に大臣意見を得た(厚生労働省医政0131第4号)。
結論
従来培養法で用いられるEGFに替えて、KGF及びROCK阻害剤を培養に用いることは移植用上皮シートの質の安定の上で有効であると思われる。
公開日・更新日
公開日
2013-06-12
更新日
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