文献情報
文献番号
201205034A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国におけるMetal-on-Metal人工股関節置換術合併症の実態調査研究
課題番号
H24-特別・指定-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 寛和(関西医科大学 医学部整形外科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 秋山治彦(京都大学 医学部整形外科学講座)
- 菅野伸彦(大阪大学 医学部運動器医工治療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
MoM人工股関節を移植した患者の大多数は、股関節機能は良好で、重篤な問題を生じるリスクは極めて低いと考えられるが、一方で、このタイプのインプラントの中には、比較的術後短期間で、疼痛やインプラント周囲の偽腫瘍と呼ばれる腫瘤病変を誘発し、広範な軟部組織壊死により再置換による再建が困難となる例も報告されている。 このようなMoM人工股関節インプラント特有の合併症の早期診断と適切な対応を促すため、2010年4月、英国のMedicines and Healthcare products Regulatory Agency(MHRA)がmedical device alert (MDA/ 2010/ 033) を発信した。 本邦においては、MoM人工股関節インプラントの使用頻度やその合併症発生頻度の調査は現在まで全く実施されておらず、早急に疫学調査を実施し実態を把握すべきである。 本研究は、平成24年度の1年間において、本邦におけるMetal-on-Metal(MoM)人工股関節インプラントの使用状況・合併症発生頻度・不良インプラントの同定を行い、必要があれば厚生労働省に対して注意勧告の提言を行うことを目的とする。
研究方法
本研究では、MoM人工股関節インプラントの合併症発症に関して、平成24年度時点に本邦で認可されているMoM人工股関節インプラント全種類の使用状況を販売業者に対して調査した。次に、そのインプラントに使用実績の多い施設にARMDに関するアンケート調査を実施し、発生頻度、機種や施設の特徴、重症度や治療法の詳細を検討した。文献から欧米での発生頻度と比較し、日本の状況や対策を検討した。PMDAからMoM人工股関節インプラント販売実績のある7社に対し、2000年1月1日から12年間に販売されたMoM人工股関節インプラントの総数、使用施設を報告するよう通達した。その結果、合計23226関節のMoM人工股関節インプラントが使用されていたことが把握できた。各社のMoM機種使用実績5位までの施設と、100例以上使用した施設を合わせた54施設に対してアンケートによる調査を実施した。その後、50例以上使用した施設に対しても調査を拡大し、最終的に101施設に対して調査を行った。
結果と考察
第一次アンケートと第二次アンケートを合計すると、82施設(80%)から回答が得られ、使用されたMoM人工股関節インプラントはSRが606関節、通常型THAが12881関節で、ARMDが全体で163関節(1.2%)に認められた。通常型THAが 160関節(1.2%)、SRが3関節(0.5%)であった。通常型THA57関節(0.5%)に再置換術が施行され、3関節は病巣掻爬のみ施行されていた。広範な軟部組織壊死は1関節で、4施設でARMDが10例以上認められ、そのうち3施設の発生頻度は5%以上であった。再手術されていない症例は無症候性で経過観察のみされていた。今回の調査で無症候性のARMDが画像診断で偶然みつかったものもあるが、まだ、積極的に画像スクリーニングをしている施設は少なかった。ARMDの発生率が全体で1.2%、再置換で0.5%という頻度を諸外国の状況と文献的に比較してみると、日本は発生頻度が低い群に属しているといえる。
結論
ARMD診断については、 血液コバルトおよびクロムイオン濃度の経時的モニタリングの意義の検証、エコーやMRIなどの画像診断での無症候性の非特異的関節液貯留の鑑別など、ARMD診断精度についても更に調査が必要である。臨床症状、X線学的所見などから順次、検査を重ねて診断するアルゴリズムの確立が望まれる。更に、ARMDの治療予後についても、追跡調査することが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-17
更新日
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