文献情報
文献番号
201205029A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤疫学的安全性情報の収集方法に関する調査研究
課題番号
H24-特別・指定-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座環境医学)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川 好規(名古屋大学大学院医学系研究科)
- 松田 勉(山形大学大学院医学系研究科)
- 西本 寛(国立がん研究センターがん対策情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
薬剤疫学的な安全性情報の収集・評価に関する手法の開発を目的として、抗がん剤を例として、我が国における重篤な有害事象の発生頻度を計測する仕組みについて検討する。
さらに、限られた施設での抗がん剤治療の実態に関する基礎的情報収集の方法論を検討する。また、抗がん剤使用に伴う重篤な有害事象がどの程度の生命予後損失をもたらすかについて、損失の試算が可能であるか否かを、既存のデータベースを用いて検討する。
具体例として、再審査期間中に企業により実施された使用成績調査等の安全性データ(公開情報)を用い検討する。さらに、欧州・米国のベネフィット・リスクバランス評価に関する検討状況について調査を行う。
加えて、拠点病院の院内がん登録の情報をもとに、施設別の差異等を含む化学療法実施状況の把握を目的として、がん診療連携拠点病院院内がん登録2010年全国集計のデータを検討する。
さらに、限られた施設での抗がん剤治療の実態に関する基礎的情報収集の方法論を検討する。また、抗がん剤使用に伴う重篤な有害事象がどの程度の生命予後損失をもたらすかについて、損失の試算が可能であるか否かを、既存のデータベースを用いて検討する。
具体例として、再審査期間中に企業により実施された使用成績調査等の安全性データ(公開情報)を用い検討する。さらに、欧州・米国のベネフィット・リスクバランス評価に関する検討状況について調査を行う。
加えて、拠点病院の院内がん登録の情報をもとに、施設別の差異等を含む化学療法実施状況の把握を目的として、がん診療連携拠点病院院内がん登録2010年全国集計のデータを検討する。
研究方法
我が国における重篤な有害事象の発生頻度を計測する仕組みについて、関係する既存資料・情報を収集しつつ、班会議等において関係する専門家・研究者間で方法論について議論・検討した。
名大病院および複数施設からの医療情報収集のための方法論の検討、がん治療種類別抗がん剤使用頻度の算出、抗がん剤使用者の死亡頻度の算出、薬剤別の重篤有害事象の発生頻度、ゲフィチニブ投与を受けた進行非小細胞肺癌における急性肺傷害による生命予後への影響の検討、を行った。
近年承認された抗癌剤の中で、カルセド注射用、アリムタ皮下注、イレッサ錠を対象とし、報告書や担当者へのインタビューなどを資料として、ベネフィット・リスクバランス評価について調査を行った。
拠点病院全国集計(2010年)のデータを元に、施設別に初回治療として行われた化学療法数を検討した。がん種別に化学療法の行われた割合を算出する。上記について、施設別に差異があるかどうかを検討した。
名大病院および複数施設からの医療情報収集のための方法論の検討、がん治療種類別抗がん剤使用頻度の算出、抗がん剤使用者の死亡頻度の算出、薬剤別の重篤有害事象の発生頻度、ゲフィチニブ投与を受けた進行非小細胞肺癌における急性肺傷害による生命予後への影響の検討、を行った。
近年承認された抗癌剤の中で、カルセド注射用、アリムタ皮下注、イレッサ錠を対象とし、報告書や担当者へのインタビューなどを資料として、ベネフィット・リスクバランス評価について調査を行った。
拠点病院全国集計(2010年)のデータを元に、施設別に初回治療として行われた化学療法数を検討した。がん種別に化学療法の行われた割合を算出する。上記について、施設別に差異があるかどうかを検討した。
結果と考察
臓器別・ステージ別・新規再発別に、抗がん剤使用者数を推計し、それぞれにおける有害事象発生率を当てはめて、全国の件数を推定する仕組みを検討する必要がある。その際、いくつかの異なる資料をつなぎ合わせて全体像を推定する場合の、それぞれの資料において計測すべき指標として、①有害事象発生頻度、②抗がん剤使用頻度、③患者数の3つを想定した。抗がん剤使用後の重篤な有害事象発生件数の全国値は、これら3つの指標を適切な組み合わせ毎にかけ算をして合計することで推定可能である。
名大病院において、癌治療種類別の抗がん剤使用頻度を院内がん登録情報から臓器別(もしくは主ながん腫別)に取り出すことが方法論的に可能であることが示された。Hadoopと呼ばれるビッグデータの並列分散処理の仕組みを使い、名大病院に導入された電子カルテ全文検索機能を活用して抗がん剤の種類別に「重篤有害事象」を求める方法論について検証した。生命予後損失に関する検討について、ゲフィチニブ投与を受けた症例において急性肺傷害の発生はその後の生命予後を有意に悪化させることが示された。
公開安全性データを用いた検討として、「カルセド注射用」の公開安全性データ、および、「アリムタ注射用」の公開安全性データを用いて検討した。
ベネフィット・リスク評価方法について、欧州におけるプロジェクト設立の経緯、プロジェクト内容を調査した。
拠点病院院内がん登録全国集計データによると、初回治療施行例全体の約45万件のうち、約15万件に対して初回治療として化学療法が施行されており、初回治療施行例全体に対する施行割合(実施率)は33.6%であった。とがん症例の3分の1に対して化学療法が施行されていた。これらを、がん種別、施設別に検討した。化学療法の施行に当たっては、施設による実施率の差異が存在しており、年齢やPS等の患者状況による背景情報も勘案しなければ、施設のサンプリングによる偏りが副作用の頻度等にも大きな影響を与えることが示唆された。
名大病院において、癌治療種類別の抗がん剤使用頻度を院内がん登録情報から臓器別(もしくは主ながん腫別)に取り出すことが方法論的に可能であることが示された。Hadoopと呼ばれるビッグデータの並列分散処理の仕組みを使い、名大病院に導入された電子カルテ全文検索機能を活用して抗がん剤の種類別に「重篤有害事象」を求める方法論について検証した。生命予後損失に関する検討について、ゲフィチニブ投与を受けた症例において急性肺傷害の発生はその後の生命予後を有意に悪化させることが示された。
公開安全性データを用いた検討として、「カルセド注射用」の公開安全性データ、および、「アリムタ注射用」の公開安全性データを用いて検討した。
ベネフィット・リスク評価方法について、欧州におけるプロジェクト設立の経緯、プロジェクト内容を調査した。
拠点病院院内がん登録全国集計データによると、初回治療施行例全体の約45万件のうち、約15万件に対して初回治療として化学療法が施行されており、初回治療施行例全体に対する施行割合(実施率)は33.6%であった。とがん症例の3分の1に対して化学療法が施行されていた。これらを、がん種別、施設別に検討した。化学療法の施行に当たっては、施設による実施率の差異が存在しており、年齢やPS等の患者状況による背景情報も勘案しなければ、施設のサンプリングによる偏りが副作用の頻度等にも大きな影響を与えることが示唆された。
結論
抗がん剤について、我が国における重篤な有害事象の発生頻度を計測する仕組みについての枠組みを整理した。既存データベースでの検討により生命予後損失の試算が可能であったことから、本研究班で構築予定のデータベースにおいても同様の検討が可能である。枠組みを作り、症例集積を予定する。リスク・ベネフィットバランスについて、欧州・米国の動向にも注視しつつ、一貫性のある客観的なベネフィット・リスク評価実施に向けて行動を開始することが重要であると考える。がん診療連携拠点病院においても、化学療法の施行実績において、施設間の差異が存在しており、こうした差異を考慮しつつ、薬剤使用に関する疫学的研究を進める必要がある。
公開日・更新日
公開日
2015-06-17
更新日
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