遠隔医療の更なる普及・拡大方策の検討のための調査研究

文献情報

文献番号
201205023A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔医療の更なる普及・拡大方策の検討のための調査研究
課題番号
H24-特別-指定-035
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
酒巻 哲夫(群馬大学医学部付属病院 医療情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤勇一郎(群馬大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遠隔医療は医療提供体制を補う手法として推進策の検討が急がれている。遠隔医療は規制等で伸び悩んでいると言われるが、テレラジオロジーのように商用事業者も多数存在して、市場さえ成立しているものもある。実施施設数や件数さえ精度良く捉えられていないなど、実態を捉え切れていない。遠隔医療の伸び悩みで医療現場の誰が困っているかも不明である。つまり課題とされた事柄を精査して、正しい状況認識の元で適切な推進策を立案する必要がある。その第一歩として基本的な情報把握の研究に着手した。
研究方法
(調査対象)遠隔医療として、診察、診断などの臨床行為に焦点を当て、テレラジオロジー、テレパソロジー、遠隔診察、モニタリング(生体計測)および総合課題を調査した。
(調査手法)各種の遠隔医療の表に現れにくい実態を調査するために、専門調査員による複数の専門家へのインタビューを行った。専門調査員は、各種遠隔医療、ICTおよび地域医療に関する深い知識の持ち主を充て、適用対象・医学的手段・エビデンスや実証手法・運用体制・普及状況・関連制度・関係団体などの情報を、各専門家から引き出した。
結果と考察
11箇所に渡る診療機関、行政、大学、企業を訪問した。代表的な聴き取り情報は後述の通りである。実施施設は正確に捉えられてなく、実施件数は調査されていない。診療報酬等の検討不足、企業と医療者の認識ギャップが大きい。医師法20条の解釈が知られていない。人材不足。地域特性を顧みない遠隔医療の取り組みが多く、継続が難しい。これらの課題が大きく、適切な発展策を立案するには情報が不足しすぎていた。大きな括りの政策では推進は難しく、具体的な個々の課題の解決が求められていた。
結論
遠隔医療の推進方策の議論をこれから深めることが欠かせない。ITだけでなく、各臨床分野の専門家団体も参加して、幅広い取り組みが必要となる。本研究は平成25年度にも継続的に進める。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201205023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遠隔医療は国全体の大きな課題と言われ、各種事業を通じて技術開発が進んだ。しかし遠隔医療は自然に発展する筈との根拠の薄い意識では、本格的推進が難しくなった。真の推進策立案としては、医療制度や医療提供体制の中での位置づけを研究すべきだが、希だった。その検討を通じて、遠隔医療と地域の実態の双方の調査の上で検討が可能になる。本研究は前座として、国内でも初めての遠隔医療の実態を広範に調査する研究となった。
臨床的観点からの成果
現場医療者と遠隔医療研究者の間の隔たりを感じる人は少なくない。現場でも、遠隔医療が必要になると思う人はいるが、自ら取り組まない人は多い。すると遠隔医療研究者はいっそう補助事業等に依存して、距離が埋まらず、遠隔医療が臨床に有用か曖昧なまま置かれた。その悪循環を断つには、互いの状況を理解することが第一歩である。本研究は遠隔医療研究者に、臨床の意識やニーズ、実態を伝える初めての研究となった。最も普及しているテレラジオロジーさえ、公的に把握されている数字と実態に乖離があるなど、貴重な情報を多く得た。
ガイドライン等の開発
まだ実態調査の段階で、ガイドラインなどにまとめられた成果に至っていない。ただし規制改革等で取り上げられる機会の多い遠隔医療の実態情報なので、各省庁向けの情報提供などの機会が多いと考えられる。
その他行政的観点からの成果
審議会などの公の場には出ていない。
平成24年度後半に開始した2ヶ月間の研究にも関わらず、行政分野の様々なところから、この調査に基づいた実態情報を問い合わせる声が増えている。所謂「規制改革」の議論にも、材料提供できると考える。
その他のインパクト
日本遠隔医療学会スプリングカンファレンス2013(平成25年2月15日)で中間報告を行った。また日本遠隔医療学会雑誌にも概要を掲載した。
本研究の成果として、遠隔医療の社会的評価の考え方が変化して、工学的観点から臨床的観点に移った。それを厚生労働省事業「遠隔医療従事者研修」の教材などに活かしている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
長谷川 高志, 酒巻 哲夫, 齋藤 勇一郎
遠隔医療の更なる普及・拡大方策の検討のための調査研究
日本遠隔医療学会雑誌 , 9 (2) , 118-121  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2018-05-23

収支報告書

文献番号
201205023Z