文献情報
文献番号
201205022A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品開発における薬物相互作用の検討方法等に関する新ガイダンス作成のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-特別-指定-034
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 洋史(東京大学医学部附属病院薬剤部)
- 渡邉 裕司(浜松医科大学)
- 三浦 慎一(第一三共株式会社 研究開発本部)
- 永井 尚美((独)医薬品医療機器総合機構)
- 斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,130,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
薬物相互作用に関する現行ガイダンスは策定されてから10年以上経過し、最新の科学的知見が盛り込まれておらず、効率的な医薬品開発や承認審査、薬物相互作用を踏まえた医薬品の適正使用のために不十分である。一方、最近、欧米では新たなガイダンスあるいはその案が発出され、我が国との間に齟齬を生じている。本研究では、最新の科学的知見に基づき、実効性の高い薬物相互作用に関する新たなガイダンス案を作成する。
研究方法
主に、日本薬物動態学会、日本臨床薬理学会、医薬品医療機器総合機構(PMDA)及び日本製薬工業協会(JPMA)から推薦を受けた専門家の協力を得て研究班を構築するとともに、幹事会及び3つのワーキンググループを設置し、素案を作成した。事務局は国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部が勤めた。また、関連分野において本邦を代表する3人の専門家に、改訂を要する内容と方向性等に関して講演していただいた。また、米国食品医薬品庁(FDA)と情報交換を行った。
結果と考察
以下に示す内容の新ガイダンスの素案を作成した。
1) 薬物代謝における相互作用薬と被相互作用薬への記載の分離、阻害薬・誘導薬の強度分類
被験薬は、代謝酵素等の阻害・誘導等により他の併用薬の体内動態に影響を与える場合と、被験薬を代謝する酵素が他の併用薬により阻害や誘導等を受けることにより被験薬の体内動態が影響される場合とに分類される。この2つの状況を分けて考察・記載した。また、相互作用により代表的な基質のAUCを5倍以上増加させる被験薬を「強い阻害薬」、2倍以上のものを「中程度の阻害薬」、1.25倍以上を「弱い阻害薬」とし、基質のAUCを80%以上減少させる被験薬を「強力な誘導薬」、50%以上80%未満に減少させるものを「中程度の誘導薬」、および減少が20%以上50%未満であるものを「弱い誘導薬」として分類した。
2) トランスポーターに関する記載
P-糖タンパク質(P-gp)に加え、消化管や肝臓、腎臓等において多くのトランスポーターが同定され、薬物動態への関与が報告されてきた。そこで、「輸送および排泄過程における薬物相互作用」として、トランスポーターの関与する薬物相互作用を主な内容とする章を新設した。さらに尿中排泄、胆汁中排泄、消化管吸収において考慮すべきトランスポーター分子種と非臨床・臨床試験での検討事項を明示した。また、In vitroにおいて一般的に考慮すべき事項を記載し、消化管吸収、肝臓取り込み、腎排泄に関わるトランスポーターを介した薬物相互作用の評価について、具体的な方法や注意点を記載した。
3) 決定樹による必要試験の明確化
欧米にならい、必要な試験と結果の判断について、決定樹方式を採用し、可能な限り具体的な判断基準を明記した。
4) 薬物動態モデルによる評価
in vitroデータに基づき臨床での相互作用の程度を、数理モデルで予測することが可能となってきた。モデルとしては、①保守的な評価により薬物相互作用を起こす被験薬の見落としがないよう評価するもの、②相互作用発現機構に基づく静的薬物速度論モデル、③薬物濃度変化の時間推移を考慮できる生理学的薬物速度論モデル、等を挙げ、これらによる検討の結果、問題となる薬物相互作用が生じる可能性を否定できない場合は、臨床薬物相互作用試験の実施を推奨した。
5) 治療用タンパク質との相互作用に関する記述
サイトカインまたはサイトカイン修飾因子により低分子医薬品の薬物動態が影響を受けた事例や抗体生成の修飾により治療用タンパク質の薬物動態が変化を受けた事例を記載すると共に、必要に応じて治療用タンパク質と薬物との相互作用解明を目的とした臨床試験を行うことを検討すべきとした。
6) 臨床試験に関する項目
臨床試験のデザインや留意事項等についての内容を充実した。即ち、投与期間とそのタイミング、代謝酵素阻害薬の選択と薬物相互作用試験、代謝酵素誘導薬の選択、代謝酵素に応じた基質薬の選択、カクテル基質試験、母集団薬物動態試験による薬物相互作用評価等の項目を新設した。
7) 添付文書への反映に関する記述
薬物相互作用試験結果を添付文書に反映させる基本的考え方を記載し、添付文書や使用上の注意の記載要領と有機的に連動できるようにした。臨床的な重要度に基づき、リスクの高い注意喚起から注意喚起不要までを段階的に整理し、相互作用の項(併用禁忌/併用注意)での注意喚起に加えて、必要に応じ、警告/用法用量に関連する使用上の注意/重要な基本的注意/薬物動態の各項での記載を行うと明記した。
1) 薬物代謝における相互作用薬と被相互作用薬への記載の分離、阻害薬・誘導薬の強度分類
被験薬は、代謝酵素等の阻害・誘導等により他の併用薬の体内動態に影響を与える場合と、被験薬を代謝する酵素が他の併用薬により阻害や誘導等を受けることにより被験薬の体内動態が影響される場合とに分類される。この2つの状況を分けて考察・記載した。また、相互作用により代表的な基質のAUCを5倍以上増加させる被験薬を「強い阻害薬」、2倍以上のものを「中程度の阻害薬」、1.25倍以上を「弱い阻害薬」とし、基質のAUCを80%以上減少させる被験薬を「強力な誘導薬」、50%以上80%未満に減少させるものを「中程度の誘導薬」、および減少が20%以上50%未満であるものを「弱い誘導薬」として分類した。
2) トランスポーターに関する記載
P-糖タンパク質(P-gp)に加え、消化管や肝臓、腎臓等において多くのトランスポーターが同定され、薬物動態への関与が報告されてきた。そこで、「輸送および排泄過程における薬物相互作用」として、トランスポーターの関与する薬物相互作用を主な内容とする章を新設した。さらに尿中排泄、胆汁中排泄、消化管吸収において考慮すべきトランスポーター分子種と非臨床・臨床試験での検討事項を明示した。また、In vitroにおいて一般的に考慮すべき事項を記載し、消化管吸収、肝臓取り込み、腎排泄に関わるトランスポーターを介した薬物相互作用の評価について、具体的な方法や注意点を記載した。
3) 決定樹による必要試験の明確化
欧米にならい、必要な試験と結果の判断について、決定樹方式を採用し、可能な限り具体的な判断基準を明記した。
4) 薬物動態モデルによる評価
in vitroデータに基づき臨床での相互作用の程度を、数理モデルで予測することが可能となってきた。モデルとしては、①保守的な評価により薬物相互作用を起こす被験薬の見落としがないよう評価するもの、②相互作用発現機構に基づく静的薬物速度論モデル、③薬物濃度変化の時間推移を考慮できる生理学的薬物速度論モデル、等を挙げ、これらによる検討の結果、問題となる薬物相互作用が生じる可能性を否定できない場合は、臨床薬物相互作用試験の実施を推奨した。
5) 治療用タンパク質との相互作用に関する記述
サイトカインまたはサイトカイン修飾因子により低分子医薬品の薬物動態が影響を受けた事例や抗体生成の修飾により治療用タンパク質の薬物動態が変化を受けた事例を記載すると共に、必要に応じて治療用タンパク質と薬物との相互作用解明を目的とした臨床試験を行うことを検討すべきとした。
6) 臨床試験に関する項目
臨床試験のデザインや留意事項等についての内容を充実した。即ち、投与期間とそのタイミング、代謝酵素阻害薬の選択と薬物相互作用試験、代謝酵素誘導薬の選択、代謝酵素に応じた基質薬の選択、カクテル基質試験、母集団薬物動態試験による薬物相互作用評価等の項目を新設した。
7) 添付文書への反映に関する記述
薬物相互作用試験結果を添付文書に反映させる基本的考え方を記載し、添付文書や使用上の注意の記載要領と有機的に連動できるようにした。臨床的な重要度に基づき、リスクの高い注意喚起から注意喚起不要までを段階的に整理し、相互作用の項(併用禁忌/併用注意)での注意喚起に加えて、必要に応じ、警告/用法用量に関連する使用上の注意/重要な基本的注意/薬物動態の各項での記載を行うと明記した。
結論
国内外の関連ガイダンスとの整合性を確保し、科学的にも最先端の薬物相互作用ガイダンスの素案を、約3ヶ月という極めて短時間で作成した。今後、更に検討を加え、パブコメを行い、最終案としたい。
公開日・更新日
公開日
2013-06-11
更新日
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