文献情報
文献番号
201205020A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器規制における承認審査、品質管理システム及び信頼性調査の適切な役割分担について
課題番号
H24-特別-指定-029
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
池田 浩治(東北大学病院 臨床試験推進センター 開発推進部門)
研究分担者(所属機関)
- 宮本 裕一(埼玉医科大学 保健医療学部医用生体工学科)
- 山崎 直也(東北大学病院 臨床試験推進センター 開発推進部)
- 鈴木 章史(東北大学病院 臨床試験推進センター 開発推進部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療機器を製造販売しようとするものは、品目ごとの承認申請が必要となるが、その際には信頼性を確保した添付資料を添付して承認審査を受けることが薬事法で定められている。この医療機器の市販前の承認審査において行われる承認審査業務、品質管理システム調査業務、信頼性調査業務の役割に関する理解の不一致、業務の重複に由来する合理的ではない申請業務の存在が指摘され、医療機器産業界から承認審査の簡素化の要望が出されている。承認審査の簡素化は企業においてメリットがあるものの、役割分担に関する正しい理解を持たずに申請資料の簡素化を行った場合には、当該機器に関する十分な有効性と安全性の確保が担保できないと考えられることにより、適切な医療の提供につながらないことが懸念される。特に、リスクの高い高度管理医療機器における、承認審査業務、QMS調査業務及び信頼性調査業務の役割分担について、現況を把握し、来る薬事法改正を見据えて、適切な規制を維持するために必要なことを整理し、必要事項を提案していくことが必要になってくる。
研究方法
本研究では、承認審査業務、QMS調査業務、及び信頼性調査業務の役割について、国内外の製造所への実地視察、国内の製造販売業者へのアンケート調査により現状を調査する。さらに、医療機器審査、信頼性調査、QMS調査の経験者を含めた研究班を構成し、それぞれの業務について、現状とあるべき姿について議論を実施する。これらの結果を踏まえ、薬事法改正及び運用の改定時に想定すべき課題について抽出し、問題提起を行う。また、想定される問題点を踏まえ、改善へ向けた提案を行う。
結果と考察
アンケート調査及び国内外の製造販売業者の実地視察、さらには研究班における議論により、承認審査業務、QMS調査業務、信頼性調査業務のあるべき姿について議論を行ったところ、各業務については目的が異なるため、同一の資料を確認したとしても内容が重複するものではなく、どちらかの業務を省略することは困難であると考えられた。むしろどちらかの業務を省略することにより、もう一方の業務を担当する担当者に過剰な負担が生じると予想され、現状の調査においては十分に機能しないと思われた。それぞれの業務のあるべき姿について整理し、近く実施される薬事法改正、及び承認申請の簡素化が製品の有効性及び安全性の確保に及ぼす影響について考察した。規制緩和との報道が先行するため、規制緩和が行われるのかと誤解を受けるところであるが、実際には製造販売業者が医療機器の製造販売において有効性及び安全性、品質の確保のために実施していることが変わるものではなく、承認申請書において規定する内容が少なくなることにより、規制側が確認し有効性、安全性及び品質の担保を行う範囲が少なくなり、企業側が自己担保する範囲が拡大するのみであることに留意する必要がある。もちろん自己担保ということで、従来よりも企業の責任範囲が拡大し、企業の自浄作用や企業責任の認識を適切に有さない場合には容易に破たんすることも想定されることから、国民の有効性及び安全性、品質を確保するためには、適切な運用がなされているか、企業において科学的な管理ができているかについて、行政側は慎重に確認し、適切にできない企業について厳しい措置を講じることが必要となると思われる。このように企業の裁量権の拡大は同時に企業責任の拡大であり、これまで以上に自発的な行動が要求されることになる点を理解する必要がある。
結論
医療機器の承認申請に係る医療機器産業界からの要望を踏まえ、いくつかの運用改定と薬事法改正の準備が進められてきた。これらの運用の改定や法改正については、その改正の主旨を理解し、適切に運用をしない場合には、国民の健康の確保において大きな問題となって表れることが懸念される。特に、企業の自己担保の範囲の拡大は規制緩和との側面ばかりが報道されるなど、偏った理解がなされている可能性があるため、自己担保を伴う企業の責任を認識しない場合に、品質、有効性及び安全性の低下を伴う可能性が考えられる。今後、適切な理解を広め、企業のレベルアップを行うなど、企業責任に耐えうる体制の整備を行うことが喫緊の課題である。
公開日・更新日
公開日
2015-05-28
更新日
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