文献情報
文献番号
201205014A
報告書区分
総括
研究課題名
一般病床の現状把握と各医療機能に求められる役割の分析に関する研究
課題番号
H24-特別-指定-019
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター診療情報分析部)
研究分担者(所属機関)
- 井高 貴之(独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター診療情報分析部)
- 堀口 裕正(東京大学医学系研究科)
- 岡田 千春(独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター臨床研究推進室)
- 森脇 睦子(独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター診療情報分析部)
- 本橋 隆子(独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,136,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では、一般病床における機能分化の推進の必要性が議論される中、一般病床全体の役割・機能については未だ十分な分析が行われていないのが現状である。そこで、本研究では、急性期医療を中心に一般病床の現状把握や求められる役割・機能に関する検討を行うとともに、医療機能を把握するための先進的な取り組みとしてSS-MIX2データを用いたデータの収集・分析方法を検討することを目的とした。
研究方法
(1)「一般病床の現状把握と各医療機能に求められる役割・機能の検討」に当たっては、国立病院機構の一般病床を有する病院86施設を対象とし、医科出来高レセプト(入院)、E・Fファイルを用いて、急性期医療に関連する「急性期診療行為」を定義し、病院毎、患者毎、個別病棟毎に急性期医療の提供状況について分析した。(2)「SS-MIXデータを利用した病棟の調査についての研究」に当たっては、国立病院機構病院2施設の院内の電子カルテシステムから抽出した平成24年度分のSS-MIX2の仕様に基づいたデータをもとに、患者基本情報や検査情報等の情報をデータベース化し、検査の実施状況や結果について分析を実施した。
結果と考察
(1)「一般病床の現状把握と各医療機能に求められる役割・機能の検討」では、急性期に関連する特定の診療行為として「急性期診療行為」を「手術」、「化学療法」、「放射線療法」、「急性期に関連する特定入院料算定病棟における治療」、「急性期医療に関連する個別処置」と定義した。そして、一般病棟等を経由したことのある15歳以上の患者を対象として、病院毎、一般病棟入院基本料を算定する個別病棟毎に急性期診療行為を実施した患者の割合を算出して医療資源の投入量、急性期に関連する業務量との関係を分析し、急性期診療行為を用いた指標が、病院単位、病棟単位で急性期医療を測る指標として有効であることを示した。本指標は、患者像に着目し医療の中身をみている点、DPCデータ・レセプトデータを用いて病院の負担を最小限にして算出できる点で意義が大きい。また、本指標を用いて急性期医療の提供状況をみることで、一般病棟等を経由したことのある患者に対する治療状況には病院間、病棟間で大きなばらつきがあることを示した。さらに、各病院内における病棟間の急性期医療の提供状況、看護職員の傾斜配置状況を比較し、急性期医療を要する患者の病棟単位での集約化の状況は病院によって違いがあること、急性期医療を要する患者の集約化に伴う人的資源の集中化は未だ実現されていないことを示した。急性期診療行為の必要性は患者の高齢化に伴って低くなる傾向があることも示した。今後、一般病棟等における医療機能を整理して機能分化を進めること、病院間で急性期から急性期以降をはじめとする各医療機能をつなぐための連携を推進することは必要不可欠である。しかしながら一方で、病棟単位を基本とした医療機能の分化については、具体的なイメージが持たれないままに議論が進んでいることが懸念される。各医療機関が急性期医療を要する患者を病棟単位で集約化するためには、個別病棟における急性期医療の集中・特化と職員間の勤務負担の平準化の両立を実現した病棟マネジメントの成功例、あり方などについても示される必要がある。医療現場の混乱と負担を抑えつつ、一般病床の機能分化を推進するためにも、現実的な対応策を念頭に議論が進められていくことが望まれる。(2)「SS-MIXデータを利用した病棟の調査についての研究」では、SS-MIX2の仕様に基づいたデータをもとにデータの前処理を行い、通常の方法を用いた場合、調査に必要なデータの読み出し・書き込みに期待された処理速度が得られないことを明らかにした。また、患者の検査値の異常の有無から急性期の入院加療の状況を把握することが可能か検討し、SS-MIX2の仕様に基づいたデータが患者の状況を可能な限り詳細に把握し、病棟の医療機能を可視化できる可能性を十分に持っていることを示した。今後、SS-MIXデータの構造・特性を踏まえた分析手法の確立等を進めていくことが望まれる。
結論
本研究により、一般病床の機能分化の推進に関する検討を進めるための基礎資料として、1)地域で把握する必要性の高さや医療機関における効率的な情報収集を前提とした、病院単位、病棟単位で急性期医療を測る指標として有効性の高い急性期診療行為を用いた指標の開発、2)当該指標を用いた一般病床における急性期医療の提供状況の実態把握、3)医療機能の可視化のためのSS-MIXデータの利用可能性の把握、などの成果が得られた。以上のような成果が、各種審議会・研究会における一般病床の機能分化の推進に関する検討や、今後の病床機能情報の報告・提供に関する仕組みの構築、地域医療のビジョンの策定のための取り組みに活用されることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2013-05-31
更新日
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