再生医療に用いられる細胞培養・加工施設の基準に関する研究

文献情報

文献番号
201205013A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療に用いられる細胞培養・加工施設の基準に関する研究
課題番号
H24-特別-指定-018
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 大和 雅之(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
  • 重松 美加(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 辰井 聡子(立教大学 大学院法務研究科)
  • 城川 美佳(富山大学附属病院 専門医要請支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、この細胞調整施設(CPC)の作業者の作業環境の安全と、そこで準備される臨床研究材料の安全性を保ち、品質管理を可能とし、効率的な臨床研究を推進するために必要な施設の設計とデザインおよび運用管理の必須要件について調査、検討することである。
研究方法
本研究班は分担者の役割を、1)施設設計、デザインの要件の検討班、2)施設運用と管理への提案班、3)上記1)および2)に対して総合的な助言と支援を行う班に分けて、幹細胞の樹立およびバンキング等の国内の仕組みを整備しつつある英米の施設の現地サンプル調査およびインタビュー調査を行った。
結果と考察
施設とその内部の機器、およびハードウエアの運用については、国内のいずれの施設もクリーンルームのグレードに従って設計された室内で、定期的な清浄度の確認試験を行い運用していた。総括では要件を示すにあたり、重要と考える二点について言及する。施設運用指針が参照にした施設のものから改変されていないところが、中規模以下の施設で見られる。病院に併設、あるいは病院内に設置されているCPCでは、使用目的が限定的で、取扱う細胞がほぼ同じであったり、使用者がきわめて少ないことが多かった。運用を簡素化し、より経済的に運用する必要を認識しているにも関わらず、英米の施設で見られた自施設用の改編の後が見られなかった。次に、管理者に専従者を置くことが困難な施設が多く、管理責任者と研究実施母体の責任者が同一であることが多く見られた。これは、国際的にも封じ込め実験施設でも利害相反の面から問題視されている点である。また、施設の構築とメンテナンスが一部企業に集中していることも、封じ込め実験施設と比べた特徴であった。人員体制や教育研修の調査からも、1. 管理責任者の多くがCPCを利用する臨床試験や治験にかかわりがあることが明らかになった。研究の実施可否の決定委員会と施設運用の決定権者の併任が半数を超えていた。2.研究に必要な手技の訓練担当が可能なスタッフは存在するが、cGMP、GCP等については教育スタッフがいない。3.臨床応用へ移行するに際して、CPC外へ製品が運ばれる可能性が高いにも関わらず、運搬に関する基準が無く、統一性が無い。4.職員数も少なく、身分が不安定であるなど、教育研修の材料の欠損、環境の不備、提供者の不足など多くの問題点があった。
 考察として、ヒト幹細胞研究の領域の発展が急速であることと、関係者が多岐にわたることで、知識の幅が大きく、それを埋めて共通の認識と基盤の上に、専門性を築く時間が足りていないと思われる。施設については機器の専門家、クリーンルームの専門家は民間技術者に存在しても、先端医療の専門性は十分でない。逆に研究者はiPS細胞を始めとした再生医療の先端技術には通じていても、機械工学、コンピュータ技術、流体力学、封じ込め原理、管理学、運用技術については必ずしも専門家ではあり得ない。施設面の調査結果からは、こういった支援技術分野の方々と、設計段階から会話を頻繁に持って、相互理解を得たところは、それが施設の維持運用のし易さにつながっている。研究者の動きを邪魔しないので、自然に必要な清浄管理ができる様になっている。コミュニケーションが鍵であり、それに必要な時間を避けるか、代行できる専従者を設置できるかという問いになる。CPC運用管理に係る責任者の多くが、当該CPCを利用する臨床試験や治験に参加、あるいは主任研究者であるために利益相反が生じる可能性がある。そうした可能性を考慮した人員配置が必要と考える。CPC利用者に対しては、cGMP、GCP、施設理念等についての教育訓練が必要であるが、現状では研究に必要な技術以外の教育訓練の内容や利用者に求められるコンピテンシーが不明確である。どのような能力・知識・態度が必要であるかを明示し、定期的に適切な研修の運用が必要である。CPCの設置と運用に関して必要な書類は、今後臨床応用が進むに従い一層煩雑化し、GMP関連文書だけでも対応に専門性が必要となる。将来的な運搬まで含めた全体像を把握したうえで、研究者だけでなく、CPC運用のために必要な人材の確保を可能とする環境を用意して行く必要があると考えられた。
結論
人的、経済的制限のある中で、各施設とも工夫してCPC施設を運用しているが、臨床研究から臨床応用を考えて行くにあたり、管理運用に必要な人材の確保研修の環境作りが急務であり、CPC施設を設置する際には、その維持と運用を母体組織の目指す長期プランに沿って設計し、安全、維持、品質管理のための活動を無理なく継続できる人の動線と物の流れを可能にする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201205013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
細胞調製施設の安全性は、再生医療の材料の安全性と品質を担保するものであり、清浄環境と封じ込めの理念の共存を図る環境が求められている。既存のワクチン生産施設や研究施設の設計デザインの知見を統合し、安全性に影響を与えることの無い範囲で生産効率を考え、清浄と封じ込めのバランスを取った施設設備と、施設管理と運用、人材養成と安全管理について国内の現状をまとめ、総合的な視点で施設要件を示した報告は、本研究が始めてである。時宜を得た情報提供により、再生医療の発展へ貢献した。
臨床的観点からの成果
細胞調製施設の安全性は、再生医療の材料の安全性と品質を担保するものであり、清浄環境と封じ込めの理念の共存を図る環境が求められている。既存のワクチン生産施設や研究施設の設計デザインの知見を統合し、安全性に影響を与えることの無い範囲で生産効率を考え、清浄と封じ込めのバランスを取った施設設備と、施設管理と運用、人材養成と安全管理について国内の現状をまとめ、総合的な視点で施設要件を示した報告は、本研究が始めてである。時宜を得た情報提供により、再生医療の発展へ貢献した。
ガイドライン等の開発
現在予定されている医政局および経済産業省所管の検討委員会において、資料としての活用が予定されている。
その他行政的観点からの成果
特記無し
その他のインパクト
厚生労働省医政局へ資料提供するとともに、経済産業省へ再生医療等基準検討委員会の準備に際しての参考資料として同局から共有された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
ヒト幹細胞臨床研究にかかる指針、国内細胞調製施設の運用基準設計の基礎資料等医政局の実施調査、作成指針、経済産業省のワーキング資料等へ活用
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-05-30

収支報告書

文献番号
201205013Z