文献情報
文献番号
201205009A
報告書区分
総括
研究課題名
培養細胞系を用いた未規制合成カンナビノイドの乱用危険性推測に関する研究
課題番号
H24-特別-指定-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)として、大麻の精神活性成分であるΔ9-tetrahydrocannabinol (Δ9-THC)や覚せい剤と薬理作用が類似した化合物の流通と乱用が問題となっている。その中でも脱法ハーブの流通拡大は深刻である。脱法ハーブに含まれる違法ドラッグとしては、合成カンナビノイドが主流である。そこで、迅速に合成カンナビノイドを検出するシステムが必要である。合成カンナビノイドの中枢作用の発現及び薬物依存形成にはカンナビノイド受容体が関与しており、脳内に多く存在するカンナビノイドCB1受容体の重要性が示されている。本研究では、CB1受容体が安定して発現した培養細胞を利用して、合成カンナビノイドのCB1受容体に対する作用強度の検出システム構築を試みた。
研究方法
カンナビノイドCB1受容体を強制発現させ、CB1受容体作用により発光する樹立安定細胞株の作製を試みた。Chinese Hamster Ovary (CHO)細胞にヒトCB1受容体をトランスフェクションし、発現安定細胞株CHO-hCB1細胞を樹立した。この細胞を使用して、細胞内カルシウムを測定した。細胞に蛍光指示薬Fluo-4を取り込ませ、合成カンナビノイド添加による蛍光強度の変化を測定した。また、流通している脱法ハーブ製品を検査対象として、CHO-hCB1細胞を利用して、合成カンナビノイドの混在について検査を実施した。17種類の脱法ハーブ製品から成分を抽出し、抽出成分をCHO-hCB1細胞に添加し、蛍光強度の変化を測定した。
結果と考察
カンナビノイドCB1受容体発現細胞株CHO-hCB1細胞を利用して、流通している脱法ハーブに含まれる合成カンナビノイドのCB1受容体作用を解析した。合成カンナビノイドをCHO-hCB1細胞に処置したところ、細胞内カルシウムが増加した。この効果は、CB1受容体拮抗薬AM251の前処置により完全に抑制された。一方、CB1受容体拮抗薬AM251単独では、蛍光強度に影響を与えなかった。CHO-hCB1細胞を利用して、脱法ハーブ製品中の合成カンナビノイドの混在について検査を実施した。17種類の脱法ハーブ製品からDMSOにて成分を抽出した。抽出成分をCHO-hCB1細胞に添加したところ、細胞内カルシウムが増加し、CB1受容体作用薬の混在が確認された。
結論
本研究より、流通している脱法ハーブに含まれる合成カンナビノイドは、主にCB1受容体作用を有することが明らかになった。また、CHO-hCB1細胞を利用した評価は、脱法ハーブ製品中の合成カンナビノイド、特に、強力な精神作用を発現する危険性の高いCB1受容体作用薬の迅速かつ高感度の検出法として有用であることが確認された。また、合成カンナビノイドのカンナビノイドCB1受容体に対する作用強度の解析への応用も可能であり、解析データは規制根拠として活用できると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2013-06-11
更新日
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