タバコ煙中のポロニウムの含有量とその測定法に関する研究

文献情報

文献番号
201205003A
報告書区分
総括
研究課題名
タバコ煙中のポロニウムの含有量とその測定法に関する研究
課題番号
H24-特別-指定-032
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
内山 茂久(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 寺田 宙(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 山口 一郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々のグループは、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)における第9、10条に対応するためにWHOタバコ研究室ネットワーク(TobLabNet)に参画し、タバコ煙中の有害化学物質の分析・測定を国内で唯一継続してきた。
一方、タバコ煙中の有害因子の一つに自然放射性核種のポロニウム(Po-210)が含まれていることが古くから知られていたが、日本政府としても、健康への影響について測定・評価することを平成24年9月に閣議決定した。
本研究では、タバコ煙の有害因子の評価と種々の放射性物質の検出という構成メンバーの両方の経験を生かし、タバコ葉及びタバコ煙中のポロニウムの測定方法を検討し、ポロニウムによる被ばく線量評価・リスク評価の基礎資料を提示することを目指す。
研究方法
1)測定対象試料として、標準タバコ3R4F、市販国産タバコSeven Stars及び海外タバコMarlboro Redの3銘柄を使用した。
主流煙の捕集は、半自動喫煙装置(Borgwaldt KC社製)を用い、TobLabNetによる国際標準規格に基づきISO法とカナダ保健省が提案するHealth Canada Intense(HCI法)で行った。試料は、マイクロウェーブ処理を行い、Srレジンカラム抽出、電着後、α線スペクトロメトリーで測定を行った。
なお精度管理のために、上記で準備したタバコ葉および主流煙試料の一部を、食品中のポロニウム分析などの実績を有する外部測定機関において同様に分析した。
2)タバコのポロニウムの課題に関する文献レビューを実施し、分析法、結果とそれに基づく被ばく線量評価などについて検討した。
3)放射線・放射能の基礎情報についてまとめるとともに、その防護体系、生体影響メカニズムについて概説した。
なお、本研究は、実験室における分析研究であり、特に倫理面への配慮を必要とする点はない。
結果と考察
1)タバコ葉中及び主流煙中のポロニウムの測定:タバコ葉および、ISO法およびHCI法によるタバコ主流煙中のPo-210分析結果(mBq/cig)はそれぞれ、3R4Fが11.4、0.37(ISO)、1.15(HCI)、Seven Starsが24.1、1.36(ISO)、3.25(HCI)、Marlboro Redが13.0、0.92(ISO)、2.01(HCI)であった。タバコ葉から主流煙(粒子状成分)への移行比はISO法、HCI法それぞれで、3R4Fは0.03、 0.10、Seven Starsは0.06、0.14、Marlboro Redは0.07、 0.16であった。
精度管理のために外部分析機関に委託測定した結果は、良い相関を示した。
2)タバコのポロニウムの課題に関する文献レビュー:国内外の報告から、Po-210濃度はタバコ1本当たり 8~24 mBq/cig(算術平均14 mBq/cig)と示され、上述の今回の測定結果はこれらと合致する範囲であった。またタバコ葉から主流煙への移行比は 0.09~0.49(算術平均0.18)と報告され、これら報告を元に、1日20本の喫煙を仮定した場合、実効線量として0.27 mSv/年と評価されている。
タバコにポロニウムが含まれる原因は、リン酸肥料としてウランの豊富な原料を使用し、それらを施肥することにより根から吸収された可能性および空気中のラドン-222およびその娘核種がタバコ葉に付着して取り込む機会が指摘されている。なおこれらの問題にタバコ業界が早くから気づいていたが、内部文書を公開することなく低減対策を取らなかったことなどが報告されていた。
3)タバコのポロニウムの課題を考えるための放射線・放射能の基礎情報:食品から摂取する放射性物質の寄与としてカリウム40、炭素14などがあり、それらによる預託実効線量が国民平均で年間0.4 mSv程度とされていた。これらに加え魚介類を中心としてPo-210の寄与が比較的大きいことが示され、原子力安全研究協会・新版生活環境放射線(平成23年12月)においても、飲食品による内部被ばくを0.98mSv/年としている。
結論
タバコ葉及び主流煙中のPo-210測定法の確立を行い、標準タバコを含む3銘柄についてPo-210測定を行った。タバコ葉中のPo-210は、先行研究の範囲内の結果であった。また、主流煙の測定結果は、喫煙法によって数値が異なった。これは、タバコ主流煙のタール・ニコチンにおいても確認されている傾向であった。
あわせて、タバコに含まれるPo-210の問題を検討する基礎資料とするために、放射線・放射能の基礎情報について概説するとともに、タバコのポロニウムの課題に関する文献レビューを行い、多くの情報が含まれ今後の対策に有用と思われる論文一つを全訳して報告書に掲載した。

公開日・更新日

公開日
2014-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201205003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
タバコ葉におけるポロニウム(Po-210)の測定は、すでにいくつか報告されているが、放射線を専門とする研究者、タバコに含まれる有害因子を分析する研究者が共同で評価した例はほとんど無く、タバコ主流煙の標準測定法に基づいて評価する方法の基礎を確立することができた。実質研究期間が半年ほどで、学術的成果報告はまだできていない。
臨床的観点からの成果
タバコ主流煙中のその他有害化学物質と並んでポロニウム-210の測定結果を提示していくことで、健康日本21(第二次)でも示されている喫煙率の低減目標に対して動機付けとなり、肺がんを含む喫煙由来の疾病の予防につながることが期待される。
ガイドライン等の開発
厚生科学審議会・地域保健健康増進栄養部会「たばこの健康影響評価専門委員会」、第1回(平成 25 年 4 月 11 日)、第2回(平成25年5月21日)において本研究班成果を報告。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
厚生科学審議会・地域保健健康増進栄養部会・第1回「たばこの健康影響評価専門委員会」における報告の一部がメディアでも報道された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201205003Z