文献情報
文献番号
201205002A
報告書区分
総括
研究課題名
HPV検査の子宮頸がん検診への導入に向けての検討
課題番号
H24-特別-指定-031
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
青木 大輔(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 斎藤 博(独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 検診研究部)
- 中山 富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター がん予防情報センター 疫学予防課)
- 濱島 ちさと(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 検診研究部)
- 鈴木 光明(自治医科大学 医学部)
- 八重樫 伸生(東北大学 医学部)
- 片渕 秀隆(熊本大学大学院生命科学研究部)
- 宮城 悦子(横浜市立大学附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
対策型の子宮頸がん検診にHPV検査の導入を検討する際に必要なデータを得ることを目途に、わが国において子宮頸がん検診としてHPV検査の有効性に関する知見を集積することが求められている。本研究ではそのために必要な研究手法や、HPV検査のモデル的な事業の実施手法等について検討することを目的とした。
研究方法
【1】HPV検査のモデル的な事業における地域住民検診での研究デザインの策定
現在実施されている細胞診単独とHPV検査単独(細胞診トリアージ)もしくはHPV検査+細胞診の同時併用との間で、子宮頸がん検診に新規手法導入を検討する際に最低限必要とされる項目について比較するために妥当かつ実施可能な研究デザインを検討し、それらのプロトコルドラフトを作成した。新規手法導入を検討する際に必要な項目は以下の通り。
1)感度・特異度、偽陽性率・偽陰性率などの精度 2)CIN3および浸潤がんの減少効果 3)過剰診断やコルポスコープ診・組織診といったclinical examinationの回数などの不利益の定量化データ 4)検診間隔延長の際の安全性の担保
また、フォローアップや精検としてどのような検査を行うかについても実効性、認容性の視点から検討した。
【2】HPV検査のモデル的な事業の実施体制の確立
【1】にて策定した疫学研究デザインに基づき、HPV検査のモデル的な事業を実施するにあたり市区町村が満たすべき精度管理項目を検討し、フォローアップも含め、どのようなデータ収集体制を構築すれば研究目的に耐えうるデータを得ることが可能かについて検討した。
現在実施されている細胞診単独とHPV検査単独(細胞診トリアージ)もしくはHPV検査+細胞診の同時併用との間で、子宮頸がん検診に新規手法導入を検討する際に最低限必要とされる項目について比較するために妥当かつ実施可能な研究デザインを検討し、それらのプロトコルドラフトを作成した。新規手法導入を検討する際に必要な項目は以下の通り。
1)感度・特異度、偽陽性率・偽陰性率などの精度 2)CIN3および浸潤がんの減少効果 3)過剰診断やコルポスコープ診・組織診といったclinical examinationの回数などの不利益の定量化データ 4)検診間隔延長の際の安全性の担保
また、フォローアップや精検としてどのような検査を行うかについても実効性、認容性の視点から検討した。
【2】HPV検査のモデル的な事業の実施体制の確立
【1】にて策定した疫学研究デザインに基づき、HPV検査のモデル的な事業を実施するにあたり市区町村が満たすべき精度管理項目を検討し、フォローアップも含め、どのようなデータ収集体制を構築すれば研究目的に耐えうるデータを得ることが可能かについて検討した。
結果と考察
【結果1】HPV検査のモデル的な事業における地域住民検診での研究デザインの策定
1)~4)についてのデータ得るためのデザインとして、証拠の質が最も高いのは無作為化比較試験(RCT)であり、次いでコホート研究が挙げられ、それぞれのプロトコルドラフトを作成した。それらを元に現在のわが国の地域住民検診の現状を鑑みた結果、より実施の可能性が高く、より多くの自治体が参加しやすいと考えられるコホート研究を主たるHPV検査のモデル的な事業の中で実施することとした。追跡調査については、対照群、介入群の両者の要精検例の結果および臨床的転帰を把握するとともに、研究に参加し通院の必要のない全ての受診者の2年毎の細胞診単独検診データを蓄積する。追跡調査は6年以上行うことによって、4年後あるいは6年後まで検診間隔を延長可能か否かについて、また不利益のデータも検討することとした。
【結果2】HPV検査のモデル的な事業の実施体制の確立
市区町村にはモデル事業を行うための最低限の条件を、1)過去の子宮頸がん検診受診履歴が、精密検査結果も含めて保管されていること、2)子宮頸がん検診の検診間隔が2年で行われていること、3)市区町村内で子宮頸部細胞診の方法(従来法か液状検体か)を統一できること、4)ベセスダシステムにて判定し、その結果に基づいて精密検査の必要性を判断できること、5)市区町村内で同一のHPV検査を用いること、6)精密検査の個別受診勧奨を確実に行えること、7)個々の対象者の精密検査受診の有無と、受診した精密検査実施機関を把握できること、8)精密検査の対象とならなかった者と、精検の結果、通院の必要のない者に対して、今回の子宮頸がん検診から2年毎に、子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)の個別受診勧奨ができること、等とした。また、事業実施後の2年後、4年後、6年後の細胞診による検診結果・精検結果及び医療機関の受診状況等については研究組織を設置して把握していくものとし、市区町村には、研究組織への協力を仰ぐという実施体制を策定した。
【考察】
このコホート研究では、HPV検査による子宮頸がん検診の有効性の評価のみならず、実際に対策型検診に導入される場合、それに先立って解決しておかねばならない課題を明確にすることをも念頭においたimplementation studyとしての意義も併せ持ったものになっている。新たな検診手法の導入を検討する際にはimplementation studyから得られる課題の解決の可否が導入の鍵となることから、今回そういった性質を持つ研究デザインを提言することは、今後のわが国のがん検診のあり方にも一石を投じるものになると期待される。
1)~4)についてのデータ得るためのデザインとして、証拠の質が最も高いのは無作為化比較試験(RCT)であり、次いでコホート研究が挙げられ、それぞれのプロトコルドラフトを作成した。それらを元に現在のわが国の地域住民検診の現状を鑑みた結果、より実施の可能性が高く、より多くの自治体が参加しやすいと考えられるコホート研究を主たるHPV検査のモデル的な事業の中で実施することとした。追跡調査については、対照群、介入群の両者の要精検例の結果および臨床的転帰を把握するとともに、研究に参加し通院の必要のない全ての受診者の2年毎の細胞診単独検診データを蓄積する。追跡調査は6年以上行うことによって、4年後あるいは6年後まで検診間隔を延長可能か否かについて、また不利益のデータも検討することとした。
【結果2】HPV検査のモデル的な事業の実施体制の確立
市区町村にはモデル事業を行うための最低限の条件を、1)過去の子宮頸がん検診受診履歴が、精密検査結果も含めて保管されていること、2)子宮頸がん検診の検診間隔が2年で行われていること、3)市区町村内で子宮頸部細胞診の方法(従来法か液状検体か)を統一できること、4)ベセスダシステムにて判定し、その結果に基づいて精密検査の必要性を判断できること、5)市区町村内で同一のHPV検査を用いること、6)精密検査の個別受診勧奨を確実に行えること、7)個々の対象者の精密検査受診の有無と、受診した精密検査実施機関を把握できること、8)精密検査の対象とならなかった者と、精検の結果、通院の必要のない者に対して、今回の子宮頸がん検診から2年毎に、子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)の個別受診勧奨ができること、等とした。また、事業実施後の2年後、4年後、6年後の細胞診による検診結果・精検結果及び医療機関の受診状況等については研究組織を設置して把握していくものとし、市区町村には、研究組織への協力を仰ぐという実施体制を策定した。
【考察】
このコホート研究では、HPV検査による子宮頸がん検診の有効性の評価のみならず、実際に対策型検診に導入される場合、それに先立って解決しておかねばならない課題を明確にすることをも念頭においたimplementation studyとしての意義も併せ持ったものになっている。新たな検診手法の導入を検討する際にはimplementation studyから得られる課題の解決の可否が導入の鍵となることから、今回そういった性質を持つ研究デザインを提言することは、今後のわが国のがん検診のあり方にも一石を投じるものになると期待される。
結論
本研究では、地域住民検診の中でHPV検査の子宮頸がん検診への導入に向けてのわが国独自の知見を集積する必要がある。そのための研究手法をコホート研究としてその具体的なデザインや実施体制の策定を行った。
公開日・更新日
公開日
2014-01-20
更新日
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