文献情報
文献番号
201205001A
報告書区分
総括
研究課題名
不活化ポリオワクチンの導入に向けた、各種ポリオワクチンの抗原性比較およびワクチン由来ポリオウイルスに対する防御免疫誘導能に関する研究
課題番号
H24-特別-指定-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
片山 和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
- 清水 博之(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 染谷 雄一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では、これまでポリオの定期の予防接種に経口生ワクチン(OPV)が使用されてきたが、2012年4月に単独不活化ポリオウイルスワクチン(cIPV)が薬事承認され、2012年9月に定期接種に導入された。また、二種類の百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ (セービン株由来IPV; sIPV) 混合ワクチンの製造承認申請が提出されており、2012年秋に導入された。定期接種へのsIPV 含有ワクチンの導入は世界で初めてであり、DPT-sIPV導入後は、世界で初めて認可されたsIPV製剤として、有効性、安全性、および、互換性等に関する調査研究が必要とされる。DPT-sIPVと従来のポリオウイルスワクチン(cIPVおよびOPV)との抗原性および免疫原性の比較研究は、国内外の今後のポリオワクチン戦略にとってきわめて重要である。現在sIPV成分の力価試験として実施されているラットによるsIPV成分の免疫原性試験は、DPT-sIPVワクチンのヒト集団に対する免疫誘導能を評価する上で重要な指標であるが、cIPVの力価試験との互換性を考慮し、in vitro試験であるポリオウイルスD抗原試験に置き換わる可能性がある。本研究では、3価混合不活化ポリオワクチン(sIPV)原液のD抗原定量ELISA法をもとにDPT-sIPV製剤中のsIPV成分の定量を行うことを第一の目標とした。
世界のワクチン接種状況を見ると、今後しばらくは、OPVとcIPV, sIPVの混在が続くことが予想される。世界的ポリオ根絶最終段階では、1型および3型野生株ポリオウイルスによるポリオ流行の相対的なリスクが低下する中、2型ワクチン由来ポリオウイルス(vaccine-derived poliovirus; VDPV)によるポリオ流行が、野生株ポリオウイルス流行地・非流行地で多発している。2型ポリオウイルスに対する集団免疫低下による2型VDPV伝播のリスクについて、留意する必要がある。本研究では、VDPV伝播によるポリオ流行が長期間継続しているナイジェリアで分離された2型VDPV、および、2012年に2型VDPV孤発例2症例が報告されたベトナムで分離された2型VDPVの遺伝子およびウイルス学的性状を解析することを第二の目標とした。
世界のワクチン接種状況を見ると、今後しばらくは、OPVとcIPV, sIPVの混在が続くことが予想される。世界的ポリオ根絶最終段階では、1型および3型野生株ポリオウイルスによるポリオ流行の相対的なリスクが低下する中、2型ワクチン由来ポリオウイルス(vaccine-derived poliovirus; VDPV)によるポリオ流行が、野生株ポリオウイルス流行地・非流行地で多発している。2型ポリオウイルスに対する集団免疫低下による2型VDPV伝播のリスクについて、留意する必要がある。本研究では、VDPV伝播によるポリオ流行が長期間継続しているナイジェリアで分離された2型VDPV、および、2012年に2型VDPV孤発例2症例が報告されたベトナムで分離された2型VDPVの遺伝子およびウイルス学的性状を解析することを第二の目標とした。
研究方法
3価混合不活化ポリオワクチン(sIPV)原液のD抗原定量ELISA法を用いてDPT-sIPV製剤中のsIPV成分の定量を行った。アルミアジュバンドからの抗原の遊離には、EDTAを用いた。
伝播によるポリオ流行が長期間継続しているナイジェリアで分離された2型VDPV、および、2012年に2型VDPV孤発例2症例が報告されたベトナムで分離された2型VDPVの遺伝子およびウイルス学的性状を、ウイルス血清学的手法、塩基配列解析及び分子疫学的手法を用いて解析した。
伝播によるポリオ流行が長期間継続しているナイジェリアで分離された2型VDPV、および、2012年に2型VDPV孤発例2症例が報告されたベトナムで分離された2型VDPVの遺伝子およびウイルス学的性状を、ウイルス血清学的手法、塩基配列解析及び分子疫学的手法を用いて解析した。
結果と考察
抗原抗体反応に用いられる緩衝液成分および反応条件の変更で3つの型のD抗原量はほぼ正確に測定可能であった。今後、ラットを用いた免疫原性試験、ヒト集団におけるポリオウイルスに対する抗体保有調査研究と合わせて継続して調査、データ蓄積を行い、D抗原定量ELISAでDPT-sIPV製剤の力価評価ができるか否かを探る必要がある。
ナイジェリアで分離された2型VDPVは、多様な遺伝子変異の蓄積およびC群エンテロウイルスとの組換えにより高い神経病原性を示すcVDPVであり、ベトナムで分離された2型VDPVは、ワクチン株からの変異が少なく長期的伝播の可能性が低い孤発性VDPVと考えられた。しかし、これらのウイルスには、アミノ酸変異による中和抗原性の変化は認められず、OPV, cIPV, sIPVそれぞれで惹起される中和抗体により感染防御可能であると考えられた。
ナイジェリアで分離された2型VDPVは、多様な遺伝子変異の蓄積およびC群エンテロウイルスとの組換えにより高い神経病原性を示すcVDPVであり、ベトナムで分離された2型VDPVは、ワクチン株からの変異が少なく長期的伝播の可能性が低い孤発性VDPVと考えられた。しかし、これらのウイルスには、アミノ酸変異による中和抗原性の変化は認められず、OPV, cIPV, sIPVそれぞれで惹起される中和抗体により感染防御可能であると考えられた。
結論
国内メーカー2社のDPT-sIPV製剤の最終小分け製品におけるD抗原測定系構築を検討した結果、意外なことに、製剤に含まれるアルミニウムアジュバンドの影響を簡単に排除可能で有り、直ぐに実用に足る測定計の構築が可能であった。この検討により、ラットを用いた力価試験から、D抗原ELISAによるワクチン評価への移行の可能性が見えてきた。
本研究より、2型VDPVに対する集団免疫を評価するための血清疫学的解析にあたっては、強毒型VDPV分離株や2型強毒株を用いる必要はなく、中和抗原性が同等であるSabin 2型に対する中和抗体測定価測定により評価可能であることが示された。我が国の流行予測調査事業におけるポリオ血清疫学調査は、弱毒化Sabin株を用いて行われているが、2型ポリオウイルスに対する集団免疫は、Sabin 2株を用いた抗体保有率調査により評価可能であると考えられる。
本研究より、2型VDPVに対する集団免疫を評価するための血清疫学的解析にあたっては、強毒型VDPV分離株や2型強毒株を用いる必要はなく、中和抗原性が同等であるSabin 2型に対する中和抗体測定価測定により評価可能であることが示された。我が国の流行予測調査事業におけるポリオ血清疫学調査は、弱毒化Sabin株を用いて行われているが、2型ポリオウイルスに対する集団免疫は、Sabin 2株を用いた抗体保有率調査により評価可能であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2013-06-07
更新日
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