文献情報
文献番号
201204007A
報告書区分
総括
研究課題名
アジアにおいて特に蔓延するウイルス性肝疾患の制御へ向けた日米共同ウイルス肝炎研究
課題番号
H24-国医-指定-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 脇田隆字(国立感染症研究所 )
- アクバルシェイクモハマドファズレ(東芝病院)
- 茶山一彰(広島大学医歯薬学総合研究科)
- 金子周一(金沢大学医薬保健研究域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,612,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
社会経済、保健衛生、医療水準的に厳しい状況にあるアジア諸国においては、HBVキャリア率の高さ、現在も増加しつつあるHCVへの新規感染、A型肝炎の多発、E型肝炎の集団発生等、その問題は小さくなることはない。更に、貧困等の社会的状況によって、充分な肝炎・肝癌の診断・治療を受けられない状況も、アジアにおけるウイルス肝炎のmorbidityとmortalityを上げる原因となっている。この様なアジア諸国における肝炎・肝癌を、日本と米国の研究者・医師が共同研究を通じ、またアジアの研究者を指導・共同研究することを通して制御することを目的とする。
研究方法
1.基礎的研究:本研究に参画する班員とその研究協力者が、それぞれの専門領域に於ける基礎研究の深化に努力した。
2.米国研究者との研究協力:従来からの日米医学協力研究事業肝炎部会の日米両パネル間の研究協力体制を維持し、先端情報の速やかな相互開示によって、当該領域の知識と技術の増進に努力した。
3.アジア諸国研究者との研究協力:アジア諸国の医師・研究者との間に存在する研究協力体制を更に強化すると同時に、新たな研究協力の可能性をも模索した。
2.米国研究者との研究協力:従来からの日米医学協力研究事業肝炎部会の日米両パネル間の研究協力体制を維持し、先端情報の速やかな相互開示によって、当該領域の知識と技術の増進に努力した。
3.アジア諸国研究者との研究協力:アジア諸国の医師・研究者との間に存在する研究協力体制を更に強化すると同時に、新たな研究協力の可能性をも模索した。
結果と考察
(1)第33回USJCMASP肝炎部会は2013年3月12~13日の2日間シンガポールにおいて開催された。“A Symposium on Curative Therapy for Chronic HBV Infection”と題して行なわれた本部会では、優れた発表と活発な議論が交わされた。アジアと米国におけるB型肝炎の現状、B型肝炎の再活性化、新規抗ウイルス薬開発のターゲット、T細胞機能の回復に向けた試み、自然免疫系の関わり、ワクチンと抗ウイルス薬の併用療法、バングラデシュにおけるワクチン療法、HBV排除におけるIL-1βとAPOBECの役割、肝癌とmicroRNA、肝癌の免疫療法等、多岐に渡る話題が発表され、熱い議論がなされた。
(2)東京大学消化器内科における1年間の肝癌局所治療症例数はのべで795例であったが、B型肝炎、C型肝炎において、肝硬度測定によって肝癌発生のリスクが階層的に予測可能であること、ラジオ波治療によって長期の予後が期待されうること、HBV、HCVの増殖抑制によって肝癌再発の抑制あるいは予後の延長がもたらされることが明らかにされた。
(4)HCVの複製増殖を許容するHuh7細胞、およびその亜細胞株であるHuh7.5.1細胞株を用いて、本来の宿主であるヒト血清添加の影響を検討した。HCVの培養条件を検討した結果、低濃度のヒト血清を用いることにより、培地中のコア蛋白質濃度が高くなることを見いだした。
(5)アジア地域に蔓延する様々なHCV genotype間のインターフェロン(IFN)反応性の違いを検討した。ヒト肝細胞キメラマウスにC型肝炎患者血清を経静脈的に投与し、マウス血中HCV RNA量を測定した。Genotype 2aおよび2b型は1型に比べIFN投与後の血中ウイルス低下量が多く、IFN反応性が高いことが示された。Genotype 6型は1型に比べPegIFN-αおよびPegIFN-λ投与後の血中ウイルス低下量が多く、IFN反応性が高い可能性が示された。
(6)バングラデシュ国内で発生した急性E型肝炎の突発的流行に関する200例から血清検体の収集を行った。バングラデシュで採取したHEVは全てジェノタイプⅠであった。バングラデシュの社会的・経済的状況と先進国で採用されてきた抗ウイルス剤(NA)を用いた治療法が相いれないことは明白である。こうしたことから、新たな科学的証拠に基づいた免疫療法がバングラデシュで開始された。第一相・第二相臨床治験は安全であり、ワクチンを用いた免疫療法の高い治療効果を確認した。この1年間、第三相臨床治験が二つの治療群のもとに着手されている。一つはHBsAg/HBcAg 混合ワクチンを接種した群、もう一つは対照群としてペグインターフェロンを投与した群を設定している。
(7)アジアにおいて多数の患者数が認められる肝炎ウイルス関連疾患における発現遺伝子解析を行い、その特徴を明らかにした。肝細胞がんは多様な遺伝子発現を示すが、EpCAM、CD90およびAFPと幹細胞性との関連が示された。
(2)東京大学消化器内科における1年間の肝癌局所治療症例数はのべで795例であったが、B型肝炎、C型肝炎において、肝硬度測定によって肝癌発生のリスクが階層的に予測可能であること、ラジオ波治療によって長期の予後が期待されうること、HBV、HCVの増殖抑制によって肝癌再発の抑制あるいは予後の延長がもたらされることが明らかにされた。
(4)HCVの複製増殖を許容するHuh7細胞、およびその亜細胞株であるHuh7.5.1細胞株を用いて、本来の宿主であるヒト血清添加の影響を検討した。HCVの培養条件を検討した結果、低濃度のヒト血清を用いることにより、培地中のコア蛋白質濃度が高くなることを見いだした。
(5)アジア地域に蔓延する様々なHCV genotype間のインターフェロン(IFN)反応性の違いを検討した。ヒト肝細胞キメラマウスにC型肝炎患者血清を経静脈的に投与し、マウス血中HCV RNA量を測定した。Genotype 2aおよび2b型は1型に比べIFN投与後の血中ウイルス低下量が多く、IFN反応性が高いことが示された。Genotype 6型は1型に比べPegIFN-αおよびPegIFN-λ投与後の血中ウイルス低下量が多く、IFN反応性が高い可能性が示された。
(6)バングラデシュ国内で発生した急性E型肝炎の突発的流行に関する200例から血清検体の収集を行った。バングラデシュで採取したHEVは全てジェノタイプⅠであった。バングラデシュの社会的・経済的状況と先進国で採用されてきた抗ウイルス剤(NA)を用いた治療法が相いれないことは明白である。こうしたことから、新たな科学的証拠に基づいた免疫療法がバングラデシュで開始された。第一相・第二相臨床治験は安全であり、ワクチンを用いた免疫療法の高い治療効果を確認した。この1年間、第三相臨床治験が二つの治療群のもとに着手されている。一つはHBsAg/HBcAg 混合ワクチンを接種した群、もう一つは対照群としてペグインターフェロンを投与した群を設定している。
(7)アジアにおいて多数の患者数が認められる肝炎ウイルス関連疾患における発現遺伝子解析を行い、その特徴を明らかにした。肝細胞がんは多様な遺伝子発現を示すが、EpCAM、CD90およびAFPと幹細胞性との関連が示された。
結論
アジア諸国の肝炎・肝癌の制御という目的のための個別研究は、予定通りに進捗した。今年は、肝炎部会、ウイルス感染部会、AIDS部会、呼吸器感染症部会が同時に部会を行なった。肝炎部会はアジアにおけるB型肝炎の制圧に向けた部会を開催し、大きな成果をあげることができた。アジアにおけるB型肝炎の現状と問題点が明らかになり、対策のポイントを日米両国において今後も継続して確認して行くこととした。
公開日・更新日
公開日
2013-05-28
更新日
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