健康の社会的決定要因に関する研究

文献情報

文献番号
201203018A
報告書区分
総括
研究課題名
健康の社会的決定要因に関する研究
課題番号
H24-地球規模-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(日本福祉大学社会福祉学部)
  • 近藤 尚己(東京大学大学院医学系研究科)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科)
  • 高尾 総司(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 藤原 佳典(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 稲葉 陽二(日本大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 健康の社会的決定要因(SDH)は、重要性が認識され対応が本格化し始めている。そこで、国内外の情報を集約するとともに、新たな知見、実践例などを収集・創出・試行・発信することにより、国内外におけるSDHへの対応を促進し、人々の健康を向上させることが本研究の目的である。
研究方法
 (1) 国内外の情報収集:国際的レポート、学術研究、実践例等の収集、(2) 個人・地域データの調査・分析:対象市町村の住民への新規調査、人口動態統計・国民生活基礎調査等の既存データを用いた分析、(3) 新たな対応方策の創出:種々の専門分野の研究者・行政担当者・NPO等を含めて、多様な立場間のディスカッション等を行い、日本の制度や文化と調和した対応方策を創出、(4) 対策の試行:高齢者の就労等有償活動コーディネート窓口事業に関するアクション・リサーチ、(5) 情報の国内外への発信:ホームページ、シンポジウム、学会発表・論文等による情報の発信の5本柱で研究を実施した。
結果と考察
 国内外の情報収集:健康の社会的決定要因の主要文献に関する研究として、SDHに関するWHOの決議や報告書、その他の国際的なレポートなどの主要文書について、WHO神戸センターの監修を受ける等して翻訳を行った。社会的排除に対する政策的取り組みの国際事例研究として、WHOのSDHに関する委員会(CSDH)元議長のMarmot教授等を通じて海外事例を収集し検討した結果、経済政策の展開と並行して健康の公平化に向けた社会保障・福祉対策の強化がなされる必要があることが示唆された。米国ウィスコンシン州において、ライフラインの差し止めを条件付で禁じる条例を設けていた。さいたま市において孤立死予防の取り組みが行われており、新たなSDH対策の基本的モデルを提示していた。ソーシャル・キャピタルなどに着目したSDHへの介入実践例の収集として、全国の都道府県、市区町村への調査を行い、合計58事例が収集できた。SDH介入に有用と考えられる要因として、①リソースの把握、②リソース交換の円滑化・広域化のための工夫、③リソース交換の管理・停止しないための介入、④リーダーシップが抽出された。
 個人・地域データの調査・分析:格差の是正及びソーシャル・キャピタルと健康の関連の研究として、東京都の9区から無作為抽出された住民1500名に調査を行った結果、東京のソーシャル・キャピタルは、居住する近隣よりも、むしろ職場や友人知人との関係が中心であることが分かった。また、ソーシャル・キャピタルと健康関連の回答結果との間に有意な相関がみられた。健康・医療資源の公平性に関するモニタリング・ツールの開発として、まず指標に必要な条件を文献調査等により検討した結果、格差勾配指数(SII)を用いることが妥当であると考えられた。そこで、各自治体における小学校区間地域格差の指標として、困窮度指数と抑うつ疑いの割合等についてSIIを算定した結果、ほぼすべての自治体で正の値を示し、最も格差が大きかった自治体のSIIは8.0%であった。全国の市区町村について、社会経済状況と健康指標の関係について、ウェブ地図ソフトウェアであるInstant Atlasを用いて視覚化を行った。
 新たな対応方策の創出:WHOのCSDH最終報告書に記載された項目について日本における内容例を検討し、それらのうち日本の保健担当部局が当面重点的に取り組むべき項目を抽出した。また、ワークショップ等により、実施されている取り組みや、今後実施可能なアイディアについて意見交換をし、多数の素材が収集できた。それらをもとに、市町村に期待される取り組みについてまとめた。さらに、都道府県・市町村等における社会環境・健康格差の把握等に関する指針(案)の策定を行った。
 対策の試行:高齢者の就労支援事業に関するアクション・リサーチとして、アクティブシニア就業支援センター利用者のデータを分析した。高齢者への就労支援事業は、男性に社会参加の機会を提供する手段となる可能性や課題が示された。
 情報の国内外への発信:研究班の研究成果について、特にWHOによる主要文書の日本語訳、SDHに関する取り組み事例や今後の取り組みが有用と考えられることなどについて、継続的に情報発信を行っている。
結論
 SDHに関連する国内外の情報を収集、整理を行った。さらなる推進が重要であるものの、既に多数の取組が行われていることが明らかとなった。また、今後の新たな対策に関する検討、試行、そして収集した情報や研究成果に関する情報発信を行った。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201203018Z