ポストミレニアム開発目標のための新保健人材戦略

文献情報

文献番号

201203017A

報告書区分

総括

研究課題名

ポストミレニアム開発目標のための新保健人材戦略

課題番号

H24-地球規模-一般-008

研究年度

平成24(2012)年度

研究代表者(所属機関)

神馬　征峰(東京大学大学院　医学系研究科国際地域保健学)

研究分担者(所属機関)

安岡　潤子(東京大学大学院　医学系研究科国際地域保健学 )
大塚　恵子(東京大学大学院　医学系研究科国際地域保健学 )
柴沼　晃(東京大学大学院　医学系研究科国際地域保健学 )
Ｙａｍａｍｏｔｏ　Ｋｏｈａｔｓｕ　Ｔａｍｙ　Ｓｏｆｉａ(東京大学大学院　医学系研究科国際地域保健学 )
Ｐｏｕｄｅｌ　Ｋｒｉｓｈｎａ　Ｃｈａｎｄｒａ(東京大学大学院　医学系研究科国際地域保健学)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金行政政策研究分野地球規模保健課題推進研究（地球規模保健課題推進研究）

研究開始年度

平成24(2012)年度

研究終了予定年度

平成26(2014)年度

研究費

6,500,000円

研究者交替、所属機関変更

-

研究報告書（概要版）

研究目的

本研究ではまずユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)に注目した保健人材政策研究を、各種世界機関と連携して行った。次いで、保健人材危機国とされてきた国を対象に、各国のUHCの取組みの中で、医師・看護師・助産師の保健人材密度や配置と基本的な保健サービスの利用率との関連について調査した。最後に、カンボジアでフィールド研究を行い、コミュニティヘルスワーカー(CHW)がマラリア対策だけではなく小児保健対策にも果たす役割を示すことを目的とした。

研究方法

第1は世界の保健人材政策研究である。世界規模での保健人材戦略を知り、かつ影響力を及ぼすため、世界銀行、WHO本部、世界保健人材連盟、アジア太平洋保健人材連盟と協力し、UHCと保健人材に関する研究を進めた。第2の保健人材とUHCの研究に関しては、ネパール、カンボジア、ペルーを分析対象国に選び、人材不足対策としての医師・看護師・助産師の保健人材密度の改善と遠隔地への人材定着政策が代表的な保健サービスの利用率とどのような関連があるかについて調査した。使用した二次資料は、WHO statistics reports, Global Health Observatory data repository, Demographic Health Surveyである。最後にCHWの働きに関しては、CHWの果たす役割がマラリア対策だけではなく小児保健対策にも広がりをみせているカンボジアを対象国として選び、横断研究を行った。

結果と考察

まず政策研究においてはWHO本部と連携し、世界の保健人材戦略のためのガイドライン作りを推進した。またアジア太平洋保健人材連盟との協力により、この地域の現地研究者の能力強化を図った。次に、カンボジア、ネパール、ペルーの保健人材と保健サービス関連の二次資料分析の結果、2000年から2010年までの間、医師・看護師・助産師の保健人材密度（人口1000人当たりの数）はネパール・ペルーでは増加していた。一方、カンボジアでは殆ど変化がみられなかった。それにも関わらず、すべての国において、各種保健サービス利用率は改善していた。その要因としては遠隔地への適切な保健人材の配置が重要であると示唆された。またこれら3職種以外の保健人材がサービス利用率の増加に影響力を及ぼした可能性も認められた。以上より、保健人材密度の増加のみならず、人材配置の不均衡是正が保健サービスの利用率の向上には必要である。さらに医師・看護師・助産師以外の保健人材の分析によって、具体的な影響力がわかってくるであろう。最後にカンボジアにおける研究の結果、CHWとして働いている村落マラリアワーカーのサービスの質と経験が、マラリア対策の向上に関連していることが示された。また村落マラリアワーカーはマラリア対策だけでなく小児保健サービスにも貢献していることがわかった。このことから、MDG6及び4の対策を統合して提供することのできるCHWの育成は、MDG達成に向け大きな可能性を持っていることが示唆された。

結論

UHCへの道筋が途上国でも整いつつある。保健人材不足の国で、単独疾患対策や母子保健分野でほぼ無料の保健サービス提供はある程度成功している。その成功をばねに、さらに幅広い分野での保健サービスの拡大をめざすUHC実現への一つの道筋が特にカンボジアのCHW研究によって示された。この流れがどこまで可能なのか、どの段階からCHWを超えた専門職の役割が期待されるのか、今後検討していくべき課題である。