日本の国際貢献のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201203016A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の国際貢献のあり方に関する研究
課題番号
H24-地球規模-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地球規模の保健課題(グローバルヘルス)は今、大きな変革期を迎えている。本研究の目的は「ランセット誌」日本特集号における提言を具現化し、変革期にある我が国のグローバル・ヘルス分野における科学的かつ戦略的な保健政策提言に資する研究を推進することである。具体的には、ガバナンス、介入、財源について詳細な分析を行う:1)国内外の保健政策の一貫性と戦略性の構築のためのガバナンス分析、2)国際ステークホルダーと我が国の戦略的関与に関する検討、3)効果的かつ効率的な保健介入の分析(システムデザインやイノベーション活用を含む)、4)革新的財源とスキームの具体案の検討、の4項目を今後2年間で詳細に検討し、我が国の国際貢献におけるパラダイムシフトを起こすための先駆的な役割を果たす。
研究方法
平成24年度は、GBD2010に参画し、世界187か国における死亡と障害の原因を性・年齢階級別に詳細に分析した。また、大きな変革期を迎えている地球規模の保健課題(グローバルヘルス)に対処するためには、グローバルヘルスの最近潮流と我が国の戦略についての論考をまとめた。さらに、各種学術活動と本研究班とのシナジーを測り、インターンの派遣を進め人材育成に努めた。保健医療制度の大きな目的は、保健アウトカムの改善とともに、医療以外の期待に対する対応および公平な医療費の負担がある。「皆保険制度」導入に関しては、公平な医療費の負担という観点は欠かせない。生活習慣病における医療費の負担というエビデンスが乏しいために、バングラデシュにおける事例を初めて調査分析した。最後に、MDGを達成するための介入に関する系統的レビューを実施した。
結果と考察
1) 世界の疾病負担研究:GBDでは、90年から2010年の過去20年間で疾病負担の原因のトップ10から脱落した。このことは、飢餓の主な原因である蛋白エネルギー栄養障害についても同様だ。これらの疾患は、腰痛や交通事故にとって代わられた。本研究の重要な発見の一つは、子どもの死亡率の劇的な低下である。これは従来の先行研究の予測を凌ぎ、急激に低下している。 食事の危険因子と運動不足は合わせて10%の疾病負担の原因となっていて、肥満や高血糖に起因する疾病負担は大幅に増加している。
2) 我が国の国際保険戦略:こ生活習慣病の増加は、これまでの資金提供やプロジェクト形成を主にした我が国のODAを再考させるものである。現在こうした文脈から「皆保険制度」がトピックとなってきているが、我が国の役割はどこにあるだろうか?我が国の皆保険制度は、加入者の負担による社会保険制度をもとに、我が国がまだ若く経済成長のまっただ中にできた、いわば発展途上国モデルである。そして、50年後の今、この条件が満たされつつあるのが、現在のアジアやアフリカの多くの新興国である。第2次大戦後、発展途上国型の皆保険制度を完璧に作り上げた我が国のこれまでの経験と教訓こそが、これから世界で生かされるのである。
3)途上国における保健財源の研究:バングラデシュでは、最も罹患率の高い疾病は熱帯感染症と生活習慣病であり、最貧困家庭では疾病罹患率が最も高くなっていた。最貧困層世帯は富裕層よりも4倍の破滅的医療費自己負担のリスクを抱えていた。さらに、家計困窮を引き起こす主要な危険要因は、従来の腸チフスなど感染症に加え、心臓病、肝臓病、ぜんそくであることが分かった。
4)介入戦略についての系統的レビュー分析:亜鉛の妊婦への投与による母子健康アウトカムへの効果の検証の系統的レビューでは、妊娠中の亜鉛サプリメント摂取は、早産が有意に減少した (risk ratio (RR) 0.86, 95% confidence interval (CI) 0.76 to 0.97 in 16 RCTs; 16試験、7637名). 低出生体重児は有意な影響はなかった。また、死産予防に効果のある妊娠中の介入のためのオーバービューレビューは現在投稿準備中であるが、死産予防に効果のある妊娠中の介入としては、7つの介入の有効性が明らかになった。最後に、各種学術活動と本研究班とのシナジーを測り、約20名のインターンの派遣を進めグローバルヘルス人材育成に努めた。
結論
過渡期にあるグローバルヘルスのガバナンス、介入戦略、財源について詳細な検討を加えることで、わが国のグローバルヘルスにおける戦略的関与とプレゼンスおよび知的貢献の強化を行うことができると考えられる。平成24年度は当初の予定以上の成果を出せたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-07-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201203016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,525,000円
(2)補助金確定額
5,525,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,350円
人件費・謝金 3,568,730円
旅費 672,920円
その他 0円
間接経費 1,275,000円
合計 5,525,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-07-05
更新日
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