文献情報
文献番号
201203007A
報告書区分
総括
研究課題名
アジア諸国における血漿分画製剤の製造体制の構築に関する研究
課題番号
H23-地球規模-指定-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 上原 鳴夫(静岡県立総合病院臨床研究部)
- 野崎 慎仁郎(長崎大学国際連携研究戦略本部)
- 杉内 善之((財)血液製剤調査機構)
- 菅河 真紀子(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国が有する安全で安心な血液事業を取り巻く技術・制度の普及を通じてアジア諸国への貢献を行う方策についての調査研究を行う。特に血漿分画製剤事業分野で協力できる技術の選択と同定を行い、技術移転に伴う問題点を提示することにより国際貢献を図っていくことが研究目的である。
研究方法
平成24年度は、わが国として血漿分画製剤の製造受託などの技術協力の可能性があり、しかも一定規模の人口を有しているミャンマーとベトナム、そしてタイ、インドネシアを実際に訪問し、両国の血液事業の担当者に対して種々のインタビューを行った。また、国際的な潮流やWHOの血液事業の方向性も合わせて調査した。
結果と考察
ミャンマーは、無償の献血システムの更なる確立や検査精度の向上などを最優先課題として取り組んでいる。わが国としてミャンマーと共に血漿分画事業を立ち上げることやミャンマーで集められた原料血漿を日本に運び製造委託することは現段階ではむずかしいことがわかった。
急速な経済成長を遂げているベトナムは、非常に親日的で、日本からの血液製剤製造技術支援を自ら望んでいた。安定した政治情勢、勤勉で精緻な作業をもこなす国民性、日本からの利便性、経済成長率、人口規模などを考慮すると、今回の支援対象国として有力な候補国と思われる。
タイの血液事業は、タイ赤十字社のNBCが中心となって行われている。NBCが唯一の分画製剤製造施設を持っているが、その製造能力は1万Lと規模が小さく、製造品目に乏しい。
NBCはIVIG、アルブミン、第Ⅷ因子製剤などの輸入品は価格が高く、供給も不安定なことから自給自足したいと考え、海外からの製造の技術導入を計画し、いくつかの企業と交渉した。その結果、韓国のグリーンクロスと3製剤の技術導入に関して交渉を行い、タイ赤十字社は2013年1月4日韓国のグリーンクロス社と正式合意に達し、バンコク近郊のチョンブリー県に年間20万Lのアルブミン、静注用免疫グロブリン、第Ⅷ因子製剤を製造できる血漿分画施設が献血されることになった。製造施設の建設費は約20億バーツで、韓国政府からも100万ドル相当の技術援助が誓約されている。
インドネシアでは、血漿分画製剤の将来方針について策定の必要性を認識しているがまだ固まっておらず、血液製剤の安全性の確立に向けた指針案の検討を進めているところである。過去にオーストラリと韓国でアルブミンの委託製造を実施した経験があるが2003年以降は海外製品の輸入に依存している。国内機関での製造も選択肢として語られているが、合意が得られていない。献血の量的確保と有効使用、および血液製剤の安全確保に向けた血液事業全体の品質管理体制の構築が、喫緊の課題である。血漿分画製剤の製造について日本が協力を考える場合は、まず喫緊の課題に対する支援を先行させ、前提条件となる諸般の問題の解決に協力することが望ましい。
WHOが主導する無償の献血により血液製剤を製造することは、倫理上また医療安全上も好ましいことであるが、今後、経済連携協定が締結される際に有償採血による血液製剤の国際流通の問題については、献血血液による製剤と比べて安全性の点で公衆衛生上問題があることなどをWTOと調整する必要がある。
急速な経済成長を遂げているベトナムは、非常に親日的で、日本からの血液製剤製造技術支援を自ら望んでいた。安定した政治情勢、勤勉で精緻な作業をもこなす国民性、日本からの利便性、経済成長率、人口規模などを考慮すると、今回の支援対象国として有力な候補国と思われる。
タイの血液事業は、タイ赤十字社のNBCが中心となって行われている。NBCが唯一の分画製剤製造施設を持っているが、その製造能力は1万Lと規模が小さく、製造品目に乏しい。
NBCはIVIG、アルブミン、第Ⅷ因子製剤などの輸入品は価格が高く、供給も不安定なことから自給自足したいと考え、海外からの製造の技術導入を計画し、いくつかの企業と交渉した。その結果、韓国のグリーンクロスと3製剤の技術導入に関して交渉を行い、タイ赤十字社は2013年1月4日韓国のグリーンクロス社と正式合意に達し、バンコク近郊のチョンブリー県に年間20万Lのアルブミン、静注用免疫グロブリン、第Ⅷ因子製剤を製造できる血漿分画施設が献血されることになった。製造施設の建設費は約20億バーツで、韓国政府からも100万ドル相当の技術援助が誓約されている。
インドネシアでは、血漿分画製剤の将来方針について策定の必要性を認識しているがまだ固まっておらず、血液製剤の安全性の確立に向けた指針案の検討を進めているところである。過去にオーストラリと韓国でアルブミンの委託製造を実施した経験があるが2003年以降は海外製品の輸入に依存している。国内機関での製造も選択肢として語られているが、合意が得られていない。献血の量的確保と有効使用、および血液製剤の安全確保に向けた血液事業全体の品質管理体制の構築が、喫緊の課題である。血漿分画製剤の製造について日本が協力を考える場合は、まず喫緊の課題に対する支援を先行させ、前提条件となる諸般の問題の解決に協力することが望ましい。
WHOが主導する無償の献血により血液製剤を製造することは、倫理上また医療安全上も好ましいことであるが、今後、経済連携協定が締結される際に有償採血による血液製剤の国際流通の問題については、献血血液による製剤と比べて安全性の点で公衆衛生上問題があることなどをWTOと調整する必要がある。
結論
国際貢献が可能か否かは、我が国が鍵を握っていると言っても過言ではない。輸出貿易管理令などの制約解除と厚生労働省をはじめとする日本政府関係者が、血漿分画製剤事業に明確なビジョンを描くことにより、わが国がアジア諸国に血液事業、とりわけ血漿分画事業で協力できる範囲は広がっていく。これができないのであれば、受託製造を含めて血漿分画事業での協力はむずかしいと言わざるを得ない。現状でわが国が協力できるものとしては、ウイルス負荷を低減させるために、各国に検査技術の向上を支援することや検査機器等の供与、関係者に対する教育訓練などしか残っていない。
公開日・更新日
公開日
2014-04-21
更新日
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