地球規模の模造薬(カウンターフィット薬)蔓延に対する規制と健康影響に関する調査研究

文献情報

文献番号
201203005A
報告書区分
総括
研究課題名
地球規模の模造薬(カウンターフィット薬)蔓延に対する規制と健康影響に関する調査研究
課題番号
H23-地球規模-指定-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界の模造薬を中心とする医薬品事件は年間2,000件を超えた(PSI)。模造薬は、日本にも侵入し、日本は世界10位の発生件数である。欧米の対策と健康被害状況を明らかにするとともに、日本への模造薬侵入実態を把握し、模造薬鑑別法の開発を図る。以て、我が国の模造薬対策改善の参考に資するとともに、国際的な模造薬対策強化に貢献する。
研究方法
1.世界の模造薬規制調査:米国および欧州で新たに導入された規制やその履行状況を①文献検索③担当者との交信によって調査。
2. 模造薬健康影響調査:PubMedでの検索を精査しキーワードを(counterfeit OR fake OR bogus OR falsified OR spurious) AND (drug OR medicine)とした。(本文が英語で、健康被害とその原因が記載されている論文を抽出条件とした。
3.模造薬侵入調査:非視力補正カラーコンタクトレンズ(以下、カラコン)を個人輸入代行サイトから試買。サイト及び入手製品の観察、真正性調査(製造者、製造国・発送国政府)、品質試験(物性試験、細胞毒性試験、残留モノマー試験)を実施した。
4.模造薬鑑別法:シルデナフィルクエン酸塩含有製剤中に含まれる類縁物質のクロマトグラフィー的プロファイル(以下、不純物プロファイル)をファイザー社製純正製剤と比較した。
結果と考察
1. 世界の模造薬規制調査: ①WHOによるSSFFC加盟国メカニズムが新たな国際協力の枠組みとして復活(2012年11月、ブエノスアイレス)。第2回は2013年11月。 ②EU改正医薬品指令のうち有効成分GMP/GDP.やOTCインターネット販売規制が2013年1月2日から施行。包装安全表示、有効成分GDP、添加物GMP、EUロゴは委任令等作成中。③CoE医療品犯罪条約は2013年3月現在22か国署名、うち1か国が批准④米国薬局方は模造薬対抗GDPを収載。⑤米国の個人輸入規制について詳細調査中。⑥医学研究所(IOM)がFDAの委託により偽造薬不良薬対抗書を発表、FDAは製品安全と品質確保のためグローバル支援を表明。国内対策は2次卸免許の厳格化と国内データベース構築、流通履歴システム確立権限のFDAへの付与を勧告。
2. 模造薬の健康影響調査:1,608編から発生年、発生国、被害状況、原因薬が記載された偽造薬事例25について整理。健康被害は、発展途上国16事例(64%)、先進国9事例(36%)、原因偽造薬は、解熱鎮痛・鎮咳薬9事例(36%)、糖尿病治療薬3事例(12%)。原因の態様は、表示外成分含有が11事例(44%)、有効成分非含有または過少が7事例(28%)。偽造薬による健康被害者は約5,740人であり、そのうち死亡は約3,623人(63%)と高い。
3. 模造薬侵入調査:カラコン10製品を10代行サイトから購入。[サイト観察]日本所在サイトは3サイト、7サイトは海外所在。 [入手製品]製造国は韓国(6製品)、台湾(2製品)、アイルランド(1)、米国(1)。製造販売元会社名・住所不記載(2)。 [物性]ほとんどの製品でカラコン基準の許容範囲外のものが認められ、また、厚みが通常の2倍の製品もあった。[細胞毒性]6製品に細胞毒性有り。 [残留モノマー]5製品中4製品でHEMA検出。[真正性調査]米とシンガポールで各1製品の承認確認。[考察]測定条件等により物性試験結果にも影響が出るので、一概に不適合と断定できないが、代行サイト販売カラコンの品質には不安が残り、眼健康への影響が懸念される。 
4.模造薬鑑別法:23年度試買した42製品のシルデナフィルクエン酸塩含有製剤は「バイアグラ」が20製品,ジェネリックが22製品. この42製品と純正「バイアグラ」(ファイザー社供与)のIPは9種に大別された.20種の「バイアグラ」製剤のうち,4製品のIPが純正バイアグラと一致,他の16製品のIPは全く異なった。ファイザー社の真贋鑑定により,純正バイアグラと同じIPを示した4製品は真正品,他の16製品は偽造品.真正品4製品の含有量は良好,偽造品16製品の多くは主薬を50%程度のみ含有.ジェネリック製品には純正バイアグラと同じIPを示すものはないが、含量は2製品を除いて概ね良好。
結論
WHO、EU、米国FDAで偽造薬対策が前進している。
偽造薬による25件の健康被害事件の被害者数は約5,740人、うち死亡者は63.1%に達した。軽微な健康被害や原因不明など学術誌に掲載、抽出されないケースを考えると、実際の健康被害は甚大である。個人輸入した非視力補正カラーコンタクトレンズの品質に不安が残った。偽造医薬品鑑定法としてHPLCの不純物プロファイルを純正品のそれと比較解析し偽造薬が鑑定できる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201203005Z