死亡診断書の精度向上における診療情報管理士の介入による記載適正化の研究

文献情報

文献番号
201202003A
報告書区分
総括
研究課題名
死亡診断書の精度向上における診療情報管理士の介入による記載適正化の研究
課題番号
H24-統計-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大井 利夫(一般社団法人日本病院会 なし)
研究分担者(所属機関)
  • 川合 省三(医療法人さくら会さくら会病院)
  • 高橋 長裕(千葉市青葉看護専門学校)
  • 松本 万夫(埼玉医科大学国際医療センター)
  • 三木 幸一郎(北九州市立医療センター)
  • 阿南 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター)
  • 荒井 康夫(北里大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,064,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、死亡診断書の記載内容がどのようにして死因統計に反映されるのかについての教育研修を診療情報管理士に対して行い、そのうえで、死亡診断書が作成される医療現場において診療情報管理士が医師に助言を行うことにより、死亡診断書の精度向上に貢献できるかを検証することを目的とした。
研究方法
1)診療情報管理士に対する死亡診断書と原死因決定ルールについての教育研修:平成23年度の先行研究「死亡診断書の精度向上に関する診療情報管理士の介入による人的支援の研究」では、診療情報管理士を対象として死亡診断書の作成時にどのように原死因が選択されるのか、ひいては我が国の死因統計にどのように反映されるのかについて教育プログラムを策定し、テキストの作成と教育研修会を行った。研究協力病院への協力依頼については診療情報管理とICD-10コーディングを標準的に運用しているとの視点から全国の病院のうち、DPC対象病院、臨床研修指定病院と特定機能病院を対象とした。2)資料の収集:平成23年度の当該先行研究の中から118病院から疫学研究に関する倫理指針に準拠し匿名化した死亡例1,427症例を分析対象とした。この際、実際に死亡診断書作成時に診療情報管理士が医師に助言を行ったものをAシリーズ、死亡診断書が発行された後に診療情報管理士が臨床経過をふまえて医師に助言を行いそのコピーを書き直したものをBシリーズとした。3)資料の分析:死亡診断書および退院時要約の内容について各症例について公正になるよう工夫しICDコーディングを行った。4)死亡診断書に基づく原死因と退院時要約に基づく原死因の異同の評価を行った。5)死亡診断書の精度に影響する病原体の記載などの要因の頻度を比較した。
結果と考察
1)分析対象症例の概要:最終的に118病院1,427症例を対象としAシリーズ434症例、Bシリーズ993症例であった。死亡診断書に基づく原死因をICD-10の章別にみると先行研究と比べ分布に大きな違いはなかった。2)診療情報管理士の助言による死亡診断書の内容の精度向上:死亡診断書が作成される医療現場において原死因選択ルールを学んだ診療情報管理士が助言を行うことにより明らかに死亡診断書の精度が向上した。とくに死亡診断書と退院時要約の内容が4桁一致(疾病及び部位と詳細な基本部位が一致)したものが68%にのぼり、死亡診断書の正確な記載が進んだことは特筆される。3)死亡診断書の精度に影響を及ぼす要因の頻度の変化:診療情報管理士の助言により、これ以上精緻な記載はないとみなされる満足な死亡診断書が半分以上を占め、精度に影響を及ぼす要因の頻度が明らかに減少し死亡診断書の精度向上に寄与したことがみてとれた。4)精度の検討の拠り所とした退院時要約の問題:死亡診断書には精緻な病名が記載されているが退院時要約からはその病名が読み取れない症例が目立った。退院時要約に記載された傷病名の精度は死亡診断書に比較して詳細不明コードになるケースが少なくなかった。退院時要約の記載内容と質について標準化が定められておらず現状は野放しである。退院時要約のあり方や必要な項目について規定が必要であろう。
結論
死亡診断書が作成される医療機関において診療情報管理士が助言を行うことにより、死亡診断書の精度に影響を及ぼす要因の頻度が減少し、死亡診断書に記された内容の精度が向上した。診療情報管理士による死亡診断書作成時の助言によって、我が国の死因統計の精度向上に寄与することが期待される。一方で、患者調査や主要病態の把握においても重要な根拠となるべき退院時要約の内容がしばしば不十分であり、何らかの規定が必要と考える。

公開日・更新日

公開日
2013-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201202003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
世界保健機関(WHO)によるICD-10に定められた死亡診断書の記載様式を用いて、主治医が死亡診断書を作成する際に診療情報管理士に助言等のサポートさせることが重要と考え、診療情報管理士の育成を目的に教育プログラムの策定とテキストを作成を図り、教育の実践的成果を得られるように取組んだ。今回のフィールドテストの結果から、死亡診断書の精度に影響を及ぼす要因の頻度が減少し、記載内容の精度が向上することにより我が国の死因統計の精度向上に寄与することが期待される。
臨床的観点からの成果
各病院における臨床統計は、病院医療における最も基礎となる資料となる。それに基づき臨床指標、安全対策およびマネジメント上の方策を決めていく。すなわち正確な死亡診断書は各病院の臨床的観点から優れた方策への基盤となり、ひいては正確な死因統計に反映される。
ガイドライン等の開発
死亡診断書記載時に助言などの人的関与をしうる診療情報管理士の育成を目的とした教育プログラムの策定、テキストの作成と体制の整備を行うことにより、死亡診断書の意義と記載方法に精通した診療情報管理士が死亡診断書記載時に関与することにより死亡診断書の精度が向上する可能性を見出すことができた。これらが正確な死因統計を得るための体系化の礎となることが望まれる。
その他行政的観点からの成果
人口動態統計調査では死因統計のデータベースである死亡診断書の精度向上をさらに実現するために、主治医による死亡診断書記載時に診療情報管理士を活用することにより適正な診断が推進可能となり有効な手立てになると考えた。本研究結果をふまえ、効果的な改善策が確立されれば死亡診断書の記載適正化に向けた取り組みの方向性が明確になり、我が国の死因統計の精度向上に大きく寄与し、正確な死因把握が国民的な関心事になっている昨今、これにも十分応えることが可能となる。
その他のインパクト
本年3月10日朝日新聞朝刊3面にて「死亡診断書『死因の記載不正確』2割」サブタイトル「疾病対策に悪影響」と題し本研究について記事が掲載された。その内容は死亡につながるもともとの原因の病名ではなく、直接的な死因しか書かれていないなど不適切な死亡診断書が全体の2割もあり、その原因は医師らの意識の低さが背景にあるとコメントしている。これに対し診療情報の管理と活用を専門とする診療情報管理士に助言してもらう方法を導入したところ不正確な記述が減るデータが得られたと報告している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
該当なし
該当なし
該当なし

公開日・更新日

公開日
2014-07-03
更新日
2018-07-04

収支報告書

文献番号
201202003Z