診療報酬の適正評価のための看護ケア技術体系化に向けた研究

文献情報

文献番号
201201038A
報告書区分
総括
研究課題名
診療報酬の適正評価のための看護ケア技術体系化に向けた研究
課題番号
H24-政策-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山田 雅子(聖路加看護大学 看護実践開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井部俊子(聖路加看護大学看護学部)
  • 岡谷恵子(東京医科大学看護学科)
  • 任和子(京都大学院医学研究科人間健康科学系専攻 生活習慣病看護学分野)
  • 齋藤訓子(公益社団法人日本看護協会)
  • 田倉智之(大阪大学大学院医学系研究科 医療経済産業政策学)
  • 柳井晴夫(聖路加看護大学 高等統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、診療報酬の適正評価を行うために、専門性の高い知識と技術が必要とされる「看護ケア技術」を抽出し、技術難易度・アウトカム・医療費原価等の評価指標を用いた「看護ケア技術」の価値に基づく体系化を行うことを目的とする。
研究方法
研究方法と対象
 諸外国の医療・看護技術の評価についての文献検討を通じ、わが国に応用可能な医療・看護の技術の評価指標を検討する。その後看護系学会等社会保険連合・加盟学会を対象に、体系化すべき看護ケア技術抽出のための一次調査を実施した。
1)調査票の作成
・各学会・団体に「専門性が高い知識と技術が必要であると総合的に判断する看護ケア技術」を挙げてもらう。
 ・1学会・団体につき、最大5項目の看護ケア技術を提案してもらう。
 ・各看護ケア技術について、そのケア技術の概要と、提案の理由を自由記述で記載してもらう。
2)データ収集期間
 平成24年5月1日から8月31日までとした。
3)分析方法
 各学会・団体より提案された看護ケア技術を、技術内容に着目し、カテゴリー化する。その後、提案数の多い一項目を題材に、看護ケア技術の難易度、患者像を表現する軸の検討を行う。軸の検討については、国内外の文献を参考に最もわかりやすく、シンプルな2~3軸程度で表現することを試みる。
4)倫理的配慮
 調査については、質問紙調査を実施する。調査対象となる看護系学会等社会保険連合の加盟学会に、調査目的・方法、倫理的配慮について文書と口頭で説明し、返答をもって同意を得たものとした。
結果と考察
1.結果
 平成24年5月1日~8月31日に、看護系学会等社会保険連に加盟している48学会・団体を対象に、「看護の専門性が高い知識と技術が必要であると総合的に判断される看護ケア技術」のうち、優先度が高いものを最大5つ列挙する一次調査を実施した。その結果、40の学会・団体から回答が得られ、合計171件の 看護ケア技術が抽出された。
 挙げられた主な技術は、口腔ケア(13学会)、ストーマケア(6学会)、 嚥下障害のある患者の食事介助(5学会)、排痰ケア(5学会)、 生命維持装置を装着している患者の清拭・入浴(5学会)、意思決定支援(3学会)、せん妄ケア(3学会)などであった。
 そこで最も提案学会・団体数の多かった「口腔ケア技術」を題材として、看護ケア技術の難易度および患者像の検討を行った。まずは、口腔ケアを必要とする患者の状態像を整理するための指標として、国内外の文献から看護技術分類に関する研究の動向を検討したが、既存の指標の中には、患者の状態像が分かりやすく表現可能なものを見つけることはできなかった。
 そこで研究班で議論した結果、看護ケア技術の提供を受ける患者の状態像を表す指標として、「生命危機度」と「セルフケア依存度」の2軸を抽出しマトリックスを作成した さらに看護ケア技術の難易度の指標として、田倉(2010)の示す「技術難易度」「アウトカム指向」「医療費原価」の3つの指標を基に、看護ケア技術の指標を検討し、看護ケア技術の提供者である看護師の負担度を、「身体的」、「精神的」、「知識・判断」、「手技的」、「時間拘束」の5つの側面から評価することが検討された。「身体的負荷」は、その看護ケア技術を実施することにより看護師が受ける身体・物理的な負荷の大きさのことを指す。「精神的負荷」は、看護ケア技術を実施することにより看護師が感じる精神的ストレスの大きさを指す。「知識・判断の負荷」は、その看護ケア技術を実施するにあたり、看護師の経験や見識を要する知識的な大変さを指す。「手技的な負荷」は、看護ケア技術の実施やその説明に伴う看護師の技能的な大変さを指す。「時間拘束の負荷」は、看護ケア技術の実施に伴う看護師の時間的な拘束の程度を指す。これら5つの指標について、看護師の負担度について、「極めて大きい」「大きい」「中等度である」「小さい」「極めて小さい」の5段階のリッカートスケールで主観的に回答してもらう質問紙調査を実施する予定である(二次調査)。
結論
看護系学会等が専門性の高い知識と技術を必要とされる看護ケア技術として認識している行為が171項目挙げられた。
看護ケア技術は、それを必要とする患者像を「生命危機度」と「セルフケア依存度」の二つの軸で説明することである程度の体系化を図ることができる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2013-12-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201038Z