社会保障制度をめぐる諸外国の制度改革とそれらの日本への適応可能性に関する研究

文献情報

文献番号
201201028A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障制度をめぐる諸外国の制度改革とそれらの日本への適応可能性に関する研究
課題番号
H24-政策-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会の高齢化と低経済成長下で医療保障制度をいかに持続可能なものとしていくかは先進国共通の課題となっている。本研究では我が国と同様、国民皆保険制度を持つ国であるフランスとオランダと両国が制度改革の参考としているイギリスを取り上げ、近年の医療保障制度改革の動向を分析し、我が国の改革を考える上での資料を作成することを目的とした。
研究方法
研究は文献調査と関係者のインタビューを主体として1年を研究期間として行われたものである。まず、両国の医療保障制度に関する基本的文献を平成24年4月~9月までの間に行い、訪問調査のための資料を作成し、平成24年10月(フランス:St Ettienne大学医療情報学教室、フランス保健省病院局、Caen大学医療社会学教授D Claudet氏、及びオランダ保健スポーツ省顧問J Hofdijk氏)と11月(イギリス:Nuffield Trust、Work Foundation、NHS(Islington CCG、Moorfield Eye Hospital、Camden CCG)、LSE Health)、平成25年2月(イギリス:Work Foundation、NHS(Islington CCG、Moorfield Eye Hospital、LSE Health)とフランス現地調査(フランス保健省、フランス自由セクターPT S Tachibana氏)を行った。なお、オランダについては、平成24年10月にフランスで行われた学会の際に、政府関係者及び研究者のヒアリングを行った。
結果と考察
フランスはCSGやかかりつけ医制度そして保健ネットワークの導入に代表されるようにNHSを意識した方向に動いていた。他方、オランダは市場原理主義的改革を追い続けているという意味においてアメリカの民間保険的要素を最大限取り込もうとしていた。ただし、それはアメリカのモザイク的な仕組みを目指すのではなく、国民皆保険を堅持した上での市場原理主義的な効率化(管理競争)であり、興味深い社会実験である。また、イギリスもNHSの枠組みを維持しながら、市場原理主義的な手法を漸次取り入れて、システムの効率性・生産性を向上させようと努力していた。
このようにいずれの国も社会連帯に基づく国民皆保障制度を前提としながらも、その効率化のために部分的に市場原理主義的手法の導入を図っていた。そして、そうした改革を推進するための情報環境の整備も進んでいた。
さらにこの三カ国はコミュニティケアの枠組みで、総合的な医療提供体制を構築しようとしている点でも共通している。
 調査を行った三カ国が医療制度改革に取り組まざるを得なくなっており、そしてそれを難しくしている重要な要因として高失業率と外国人問題がある。実質的に世代間の所得移転になっている社会保障制度を維持していくためにこの問題の解決が重要である。
結論
今回調査を行った欧州三カ国(フランス、イギリス、オランダ)は税と保険料の違いはあるが国民皆保障を実現している国であり、また高齢化と医療技術の進歩により医療費の適正化と医療の質の向上のバランスを求められているという点において我が国と共通の政策課題に直面している。
 そして、いずれの国もGPを中心としたプライマリケア及び代替政策の積極的な採用によるコミュニティケアの推進を図ろうとしている。また、オランダとイギリスは市場原理主義的な競争を導入することにより医療提供体制の効率化を図ろうとしているが、これまでのところ顕著な効果は観察されていない。
 以上の議論はいずれも現在我が国の医療制度改革をめぐる議論で取り上げられているものであり、したがってその詳細を分析した本研究結果は、我が国の医療制度改革の方向性を考える上で有用な情報を提供できると考える。今後、本研究成果について学術誌や著書あるいは学会発表など多様な媒体を通して社会に還元していきたい。

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201201028C

収支報告書

文献番号
201201028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,100,000円
(2)補助金確定額
2,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 189,988円
人件費・謝金 312,000円
旅費 974,370円
その他 273,642円
間接経費 350,000円
合計 2,100,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2014-04-22
更新日
-