妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法構築に関する研究

文献情報

文献番号
201201027A
報告書区分
総括
研究課題名
妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法構築に関する研究
課題番号
H23-政策-若手-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
水主川 純(聖マリアンナ医科大学 産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 竹次(独立行政法人 国立国際医療研究センター 小児科)
  • 新保 卓郎(独立行政法人 国立国際医療研究センター 医療情報解析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会保障審議会の児童虐待による死亡事例に関する報告では、実母の主な問題点として望まない妊娠、妊婦健診未受診が挙げられている。児童虐待予防には、妊娠中から医療機関と関係機関が連携した対応が必要である。本研究は妊娠期から行う児童虐待予防の介入法の構築を目的とした。
研究方法
妊婦健康診査不定期受診症例などの特定妊婦に対する支援のあり方、社会的経済的問題を抱える妊婦から出生した児に対する育児支援体制、効果的な子育て支援策について検討した。
結果と考察
妊婦健康診査不定期受診症例などの特定妊婦に対する支援は限られた機会や時間で行われているのが現状であった。また、妊婦健診受診や母子健康手帳交付は必ずしも支援の契機になっていなかった。育児に関する不安要因を認める妊婦が把握された場合、確実に面接や支援が行われる体制を整備することが重要であると考えられた。継続的な支援を行うために妊婦を取り巻く環境が変化する可能性を念頭に置いた対応が必要であろう。妊娠中に支援が必要であると判断されたにも関わらず、妊婦による支援拒否に伴い、対応に苦慮していることが明らかになった。
社会的経済的問題を抱える妊婦から出生した児の後方視的検討により小児科外来におけるフォローアップが必要であると考えられた要因を抽出し、周産期ハイリスク妊婦票を作成した。この票に基づき、社会的経済的問題を抱える妊婦から出生した児を広くスクリーニングすることにより、小児科外来における社会的経済的問題を抱える妊婦から出生した児のフォローアップ率が高まることが示された。
効果的な子育て支援策を構築するための前方視的追跡調査の中間解析では、養育に関する不安要因を認める妊婦では、人工乳栄養、早産、小児科入院の症例が有意に多かった。生後1か月から生後6か月のいずれの乳児健診受診時において、育児支援者が存在しない症例を認めることや育児に関する情報の最多の入手先は友達であることが示された。月齢が進むにつれ、保健所などを利用した育児実施率は高まり、保護者が児の成長に伴い、家庭以外の環境と関わりながら育児に取り組んでいくことが示唆された。
結論
特定妊婦に対する支援をより早期に開始するためには、妊婦に関わる者が職種によらず特定妊婦に対する支援の重要性に関する認識を高めること、養育に関する不安要因を認める妊婦を確実に把握し、面接や支援を行うことができる体制を整備することが重要である。また、今後、支援拒否者への対応策を検討する必要があろう。妊娠期の情報に基づき、児を継続的にフォローアップしていくことは児童虐待予防に有用であることが示唆された。児の月齢や環境に応じた育児支援策の構築が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2013-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201201027Z