リスクにおける政策過程の理論モデルの構築-新型インフルエンザを事例として-

文献情報

文献番号
201201026A
報告書区分
総括
研究課題名
リスクにおける政策過程の理論モデルの構築-新型インフルエンザを事例として-
課題番号
H23-政策-若手-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮脇 健(日本大学 法学部)
研究分担者(所属機関)
  • 笹岡 伸矢(広島修道大学 法学部)
  • 小松 志朗(明治大学 研究・知財戦略機構)
  • 小森 雄太(明治大学 研究・知財戦略機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は新型インフルエンザに対する地方自治体の行政対応を決定付けた要因を、国内で最初の患者が見つかった神戸市、成功モデルといわれる仙台市の事例から明らかにし、それとともにリスクに対する中央政府と地方自治体との関係を想定した政策決定に関する影響要因のモデルを構築することを目的としている。
 特に24年総括報告書では、厚生労働省で行われた新型インフルエンザ対策総括会議にて提示された5つのイシューに注目して、要因の特定分析を行った。
研究方法
 本研究では、新型インフルエンザに対する神戸市、仙台市の対応を決定づける要因を明らかにするために、両市の新型インフルエンザ対応に関して、①文献・資料(両市HP、行政資料)調査、②両市の関係者へのヒアリン調査、③両市の医師会に対して行ったアンケート調査を実施した。
 以上の3つの作業を行い、その分析結果から要因特定を試みた。
結果と考察
 神戸市、仙台市の新型インフルエンザ対応を決定づけた要因を特定したところ、以下の点が明らかになった。
 まず、両市の対応を決定づける要因として、①過去の経験、②発生前の準備(事前の対応策と医師会との連携)、③自治体の有している資源、④国(政府、政治家)の決定、が考えられることが5つのイシューの分析から明らかになった。
 また、その分析結果をもとに作成したモデル構築に関しては総合報告書で行っている。
結論
 神戸市、仙台市の新型インフルエンザ対応を決定づける要因に関して研究を行ってきたが、発生前の準備が重要であり、それが可能なだけの資源を有している自治体であったことが、本研究から明らかになったといえる。
 本研究は両市の事例分析から以上の結論を導き出したため、今後この事例が他の自治体でもあてはまるものなのか、明らかにはしていない。その点で課題は残っている。

公開日・更新日

公開日
2013-10-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201201026B
報告書区分
総合
研究課題名
リスクにおける政策過程の理論モデルの構築-新型インフルエンザを事例として-
課題番号
H23-政策-若手-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮脇 健(日本大学 法学部)
研究分担者(所属機関)
  • 笹岡 伸矢(広島修道大学 法学部)
  • 小松 志朗(明治大学 研究・知財研究機構)
  • 小森 雄太(明治大学 研究・知財研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は新型インフルエンザに対する地方自治体の行政対応を決定付けた要因を、国内で最初の患者が見つかった神戸市、成功モデルと言われている仙台市の事例から明らかにし、それをもとに、リスクに対する中央政府と地方自治体との関係を想定した政策決定に関する影響要因のモデルを構築することを目的としている。
 そのため、以下の二つの作業を行う。①神戸市、仙台市の新型インフルエンザ対応を決定づけた要因を特定する作業の前段階として、影響を及ぼしたと想定される要因を列挙する。そして、それを踏まえながら、②その想定される要因の中で、厚生労働省の新型インフルエンザ対策総括会議の中で議題にあがった、イシューごとにどの要因が神戸市・仙台市の政策決定に影響を及ぼしたのか明らかにする。
研究方法
 まず、①の目的を達成するために、23年度の文献調査による神戸市、仙台市に関する研究成果と24年度に実施した、神戸市、仙台市医師会のアンケート調査研究の分析から、神戸市・仙台市の新型インフルエンザ対応に影響を及ぼしたと想定される要因を取り上げる。
 そのうえで、②神戸市、仙台市の医療体制、公衆衛生対策(休校措置)、ワクチン、サーベイランス、広報の対応を決定づけた要因を特定する事例分析を23年度、24年度に行った文献、資料調査と神戸市、仙台市の対応に関わったアクターに対するヒアリング調査から行い、それら5つの対応に影響を及ぼした要因を基にして、モデルを構築する。
結果と考察
 モデルを構築した結果、5つのイシューにおける各対応を1.国の決定・自治体資源中心モデルと2.制度・自治体資源中心モデルの2つに分類できることが明らかになった。
 前者のモデルでは、発生後の国・自治体の政治家、官僚の対応が影響を及ぼす。公衆衛生対策(休校措置)とワクチン、サーベイランス(発生後・後期)がこれに当てはまる。これらのイシューは、新型インフルエンザの国内発生後からある程度の期間にわたり、もしくはある程度の時間が経ってから対応することが求められる問題であるという共通点がある。
 後者のモデルでは、自治体が医療体制や広報、サーベイランス(発生後・前期)に関する対応を行う際に、アクターの影響が作用する。しかしながら、発生前に作られた自治体の行動計画とそれを可能にする資源が対策に影響を及ぼす要因として一番作用したと考えられる。これらのイシューは、新型インフルエンザの国内発生後からすぐに対応することが求められる問題であるという共通点がある。 
結論
 新型インフルエンザ発生後の国の対応に両市が対応できた理由は、「備えあれば憂いなし」であった。つまり、もともと両市に資源があったことに起因する。ここから、医療機関との連携も含めた日常からの情報共有が重要であるといえる。これは、医療体制と広報の2つのイシューに当てはまる問題である。
 また、両市ともに独自対応を行っていた点では評価できるが、新型インフルエンザ対応は国のガイドラインと行動計画の不備があったとしても、ある程度それを規定しながら対応せざるを得ない現状が一方である。国の方針には確かに裁量があったが、それはその対応を行えるだけの自治体としての資源があるからである。これは公衆衛生対策、ワクチン、サーベイランスの3つのイシューにあてはまるといえる。
 こうした点を加味しながら、新型インフルエンザ対策特措法にもあるが、ある程度自治体の能力、周りの自治体との兼ね合いを考慮した、計画の策定が重要である

公開日・更新日

公開日
2013-10-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201201026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 仙台市・神戸市の新型インフルエンザ対応を決定づける要因として、政治過程の側面から研究を進めてきたが、社会的合理性と科学的合理性の妥協性境界を重視した科学技術社会論の研究やリスク研究とは異なる結果が得られたと考えている。
 為政者の判断やそれに関連するアクターの意識、すなわち政治的合理性が対応の決定において重要であることが本研究から明らかになった。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
 本研究課題を進めていく過程で、東京慈恵医科大学の浦島充佳先生が主催するバイオセキュリティ2012シンポジウム『新型インフルエンザ・パンデミックの脅威にどう備えるか』に報告者兼パネリストとして登壇し、神戸市、仙台市の医療機関に行ったアンケート調査の結果を紹介することができた。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
宮脇健
リスクにおけるマスメディア報道-H1N1インフルエンザのマスクに関する報道の分析-
尚美学園大学 総合政策論集 ,  (13) , 55-71  (2011)
原著論文2
宮脇健
2009 年新型インフルエンザに対する仙台市の広報とその影響に関する研究
政経研究 , 49 (4) , 551-577  (2013)
原著論文3
宮脇健
リスクにおける行政対応に関する調査分析-新型インフルエンザ対応に関する医療機関へのアンケート調査分析-
尚美学園大学 総合政策論集 ,  (17) , 11-23  (2013)

公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201201026Z