急性期病院におけるソーシャルワーカーの実務基準と質指標(クオリティーインジケーター、QI)の開発に関する実践研究

文献情報

文献番号
201201023A
報告書区分
総括
研究課題名
急性期病院におけるソーシャルワーカーの実務基準と質指標(クオリティーインジケーター、QI)の開発に関する実践研究
課題番号
H23-政策-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
笹岡 眞弓(文京学院大学 人間学部人間福祉学科)
研究分担者(所属機関)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 小山 秀夫(兵庫県立大学)
  • 大出 幸子(聖路加国際病院)
  • 高橋 理(聖路加国際病院)
  • 西田 知佳子(聖路加国際病院)
  • 原田 とも子(NTT東日本関東病院)
  • 宮内 佳代子(帝京大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、保健医療と福祉の連携の要となりうる医療ソーシャルワーカー (以下SW) の業務を標準化しその質を担保するために、SWの介入を必要とする患者を漏れなく抽出するための実務基準(ハイリスク基準項目)と、SWの質指標(クオリティインジケータQI) を開発することを目的とする。
研究方法
3つの調査(1)入院時患者の支援に関する調査(2)脳卒中患者の調査(3)QI意識調査を行った。調査方法は、全国の急性期病院109病院のソーシャルワーカーへ、調査票による郵送調査である。
SWが介入した患者と非介入の患者の違いを明らかにするために、調査1では調査期間に入院した眼科、小児科、小児科を除く全ての入院患者を対象とし、調査2では回復期リハビリテーション病床のある病院へ転院した患者の転帰の差をアウトカムとした。
調査1:入院時患者の支援に関する調査
研究デザイン:前向きコホート研究
対象者:2013年2月18日~2月22日に入院した新入院患者を対象に調査票を用いた。収集項目:平成24年に神奈川県大学病院ソーシャルワーカー連絡会が調査して明らかになった302のハイリスク項目から病名・身体的情報:41項目、社会的情報19項目を選定し,班会議で決定した。
調査2:脳卒中患者に関する調査
研究デザイン:後向きコホート研究
対象者:2012年4月1日~4月15日までに入院した脳卒中の患者について調査票を用いた。
収集項目:在院日数、転帰先とSWの介入の有無、回復期リハビリへの転院後の転帰。
調査3:クオリティインジケーター意識調査
研究デザイン:横断研究
対象者;管理的な役割のあるソーシャルワーカー
収集項目: 救急指定、DPC病院の取得の有無、病床数、SWの人数と経験年数、相談を担当する他職種の有無、2011年度の新入院患者数総数、SWが介入した新規の入院患者数
QIの項目:昨年度にグループインタビューによる作成を行ったQI案を神奈川県大学病院SW連絡会のワーキンググループのメンバーへのヒアリングと班会議における項目の再検討を行い、14項目を決定した。調査方法は、全米ソーシャルワーカー協会が1990年に行った調査方法(Betsy S. Ourlekis, 1990)を参考とし、各項目について、①必要性、②データ取得状況、③今後のデータの取得予定について調査した。
結果と考察
調査1は、集計途中である。調査2の中間報告の結果は以下の通りである。
・回答は57病院からあり、回収率は、52.2%であった。
・脳卒中患者の総数は566名であった。(有効回答)
・性別は男性がやや多く、年齢は65歳以上が75.2%であり、高齢者が多い。疾患別では、脳梗塞が68.1%と多かった。
・SWの介入は、入院患者の約半数に介入していた。転帰別では、患者の約半数が退院しており、SWの介入は30.5%であった。回復期リハビリへの移行は108名であり、SWの介入は86.1%、療養型への移行は23名であったがSWの介入は87%であり、リハビリや療養を必要とする患者の約9割に介入していた。
・回復期リハビリテーション病床のある病院への転院は108名であり、SWが介入した患者の63名が退院、17名が施設への入所、転院は9名と退院が多く、SWは急性期から在宅療養へ退院するための回復期リハビリへつないでいることが明らかになった。しかし、回復期へ転院した患者のSW介入と 非介入の比較は、p=0.689で有意差はなかった。これは、今回の調査では、回復期への転院の約9割がSW介入であり、非介入が少ない病院の結果であり、SW人数の少ない病院との比較や、回復期リハビリ以外に転院した患者の転帰も調べるなどさらなる調査が必要と思われた。
調査3「虐待」ケースや「無保険」ケースなどSWが関わるべきケースについては、すでに関わっており、関わるべきと考えており、さらに今後QIとして取得する必要があるともSWは考えている。
そして、全入院患者に対して、介入ケースの割合がどの程度なのかについては、基準となるデータが必要だとSWは判断しており、米国でインジケーターとして確立している「脳卒中の回復期リハビリ転院支援患者数のうち、7日以内に面接した数の割合」については、一律的にケースを捉えるシステムに抵抗を感じているSWがある程度存在した。
結論
本研究により、わが国のSWの実務基準(ハイリスク基準項目)が明らかになり、またSWのQIが普及することで、各医療機関におけるSWの質的・量的実践が担保への貢献が期待される。また、SW支援を必要とする人に適切な支援が提供される体制が全国的に推進されることで、わが国の保健・医療・福祉サービスの効果的な提供システムの構築に寄与できる。

公開日・更新日

公開日
2013-12-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201023Z