医療・介護連携において共有すべき情報に関する研究

文献情報

文献番号
201201022A
報告書区分
総括
研究課題名
医療・介護連携において共有すべき情報に関する研究
課題番号
H23-政策-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
福祉未来研究所(福祉未来研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 府川 哲夫(特定非営利活動法人福祉未来研究所)
  • 大森 正博(お茶の水女子大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は医療・介護の連携を制度面及び情報面から研究する。制度面では1年以上の長期入院と介護サービスを1つの制度で提供しているオランダに注目し、同国の研究機関との共同研究を実施して、医療・介護サービスの効果的な提供体系について検討する。現在のわが国の医療保険には療養病床や訪問看護のように長期にわたる医療費が含まれており、一方介護保険には老健施設のように短期のものが含まれている。その切り分けをもう少し明確にできれば、総体としての費用を軽減できる可能性がある。
 医療・介護の連携に関する情報面からの研究では、医療保険部門と介護保険部門の双方において、どのような情報を共有すべきであるか調査するとともに、その情報共有のためのツールの現状及びその開発を研究する。この際も、オランダにおける特別医療費保険(AWBZ) のデータセットを先行事例として取り上げる。研究の最終段階では、日本とオランダの比較研究を踏まえて、わが国の高齢者医療制度及び介護保険制度改革への提言を行う。
研究方法
 申請者である福祉未来研究所が主体となって研究を推進する。オランダの専門家(大森正博氏、等)を加えて研究班を組織して研究を進める。
 オランダとの比較研究では、オランダで老年学等の研究実績のあるライデン大学内のライデンアカデミーと協力して、まず、特別医療費保険(AWBZ)の諸データ・運用状況を把握し、両国の高齢者医療・介護問題の共同研究を実施する。双方向でそれぞれのレポートに対して建設的なコメントを出し合って共同研究を実施する。その結果を踏まえて、日本における医療・介護サービスの効果的な提供体系についての提言を行う。
結果と考察
 オランダではGPが医療・介護の中核をなしている。GPは “高額な専門医治療へのゲートキーパー” と呼ばれ、患者の健康状態と福利を完全に把握していることが求められる。このためにZVWの医療サービス提供者間でのより効率的なコミュニケーションや情報共有について、現在議論が交わされている。
 AWBZ のCare Registration system (AZR) は、AWBZで活動する機関のための情報プラットフォームである。AZRシステムの内容は基本的なClient情報(BSN、住所、生年月日)のみから構成され、全てコード化されたメッセージの記録である。
 AWBZのサービスや給付と異なり、WMO(社会支援法)は権利ではない。従って、地方自治体は恵まれない人々の社会やコミュニティーへの参加をサポートする責任はあるが、基本的にWMOの実施、達成は自由裁量で行われる。WMOには標準化された単一の情報共有プラットフォームがない。また、WMOに関わる組織はWMOサービスの実態と質の問題を必ずしも把握していない。 
 オランダで2000年代に入り、統合ケアにかかわる新たなチャレンジとして、「コーディネートされた認知症ケア」の実現に向けた国を挙げた取組みが本格化している。オランダは、コスト削減の必要性だけでなく、ケアを必要とする当事者の市民・消費者としての参加・発言を推進力として(脱病院化に次ぐ)脱施設化を進め、地域における家庭医と地域看護師を中心とした多職種によるプライマリケアの充実と並行して、切れ目ないケアの提供を模索している。認知症についても、地域を基盤としてコーディネートされた認知症ケアを実現しつつある。
 短期医療には「規制された競争」を導入して医療サービス提供の効率化を進め、長期療養・介護については、「規制された競争」は導入せずに、より正確なケアアセスメントの手法を確立しようとしている。しかしながら、AWBZに関しては効率性の向上、受給者の意向の重視、サービスの重点化、などが求められ、これまでも提供していたサービスをWMOに委ねる措置がとられているが、制度の持続可能性を図るために更なる改革が必要となっている。
結論
 オランダでは短期医療(根拠法はZVW)と長期療養・介護(根拠法はAWBZ)が明確に区分されてきているが、近年ではAWBZの支出抑制が大きな課題となっている。ZVW 内では「規制された競争」の下、国民皆保険・保険の一元化が実現した。被保険者が適切な保険診療を受けられるためのオランダの取り組みは日本にとって大いに参考になる。医療・介護サービスと福祉サービスの提供に関する連携は、患者・利用者に関する統一的なデータ・フォーマットが無いこともあって、オランダでも必ずしも十分ではない。

公開日・更新日

公開日
2013-12-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201022Z