社会的養護における児童の特性別標準的ケアパッケージ(被虐待児を養育する里親家庭の民間の治療支援機関の研究)

文献情報

文献番号
201201020A
報告書区分
総括
研究課題名
社会的養護における児童の特性別標準的ケアパッケージ(被虐待児を養育する里親家庭の民間の治療支援機関の研究)
課題番号
H23-政策-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
開原 久代(東京成徳大学 子ども学部)
研究分担者(所属機関)
  • 深谷 昌志(東京成徳大学 子ども学部)
  • 桐野 由美子(京都ノートルダム女子大学生活福祉文化学部)
  • 平田 美智子(和泉短期大学)
  • 林 浩康(日本女子大学人間社会学部社会福祉学科)
  • 横堀 昌子(青山学院女子短期大学 子ども学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
24年度は、被虐待児の養育で苦慮している里親家庭と施設職員を支援する治療的支援機関のあり方をさらに具体化するために、海外、国内の調査活動を行った。海外調査では、23年度の英国SACCS治療センター訪問時に協力を得た元施設長のPatrick Tomlinson氏(T氏)を招聘し日本の実態を視察の上、日本で求められている支援のあり方を討議すること、米国、仏国の治療的支援機関の訪問調査では、海外の先駆的活動を参考にすることをめざした。国内調査では、里親のニーズと心情を把握するために全国里親会へのアンケート調査と一部の面接調査を行ない、また2008年に発足した里親支援機関事業の実施状況を昨年のアンケート調査に続けて代表的な機関の訪問調査を行い日本の里親支援機関の実態を把握することをめざした。
研究方法
海外調査では、開原班は招聘専門家T氏による児童福祉施設5か所の視察、4回の講演会とワークショップ、専門家との対談、座談会を通しての関係者との交流により、日本で求められている治療支援機関のモデル像を討議した。桐野班は、米国のシアトル、ピッツバーグ、ボルチモアのTreatment Foster Care Programがいかに地域資源の協働のもとに実施されているかを調査するために14カ所の民間、公立の支援機関を訪問してインタビューを行った。林班は、仏国パリ県の民間の里親委託機関8か所を訪問し、16人の所長や関係者のインタビュー調査を行った。国内調査では、深谷班が66か所の里親会に2236部の調査票を依頼し、回収数1209部(回収率54.1%)のアンケート調査を行い、代表的な自由記述100例を取り上げ、4地区19人の里親面接も加えて虐待のトラウマを背負う里子の養育困難を明らかにした。平田班は、23年度のアンケート調査に回答した里親支援機関の中から選出した10か所の支援機関とこの支援機関事業を委託した都道府県の担当課を訪問し、事前に依頼した質問項目にそってインタビューをおこなった。
結果と考察
T氏による困難事例の治療的施設ケアの自らの体験に基づく講演とワークショップは、24時間の養育で苦労する里親の共感を得て、これまでにない研修内容と評価された。T氏は、日本の児童福祉施設が公共建造物のようであることに驚き、家庭的なグループホームの設置を強調し、そうしたグループホームと里親ケアをリンクさせた治療支援センターを提案した。米国調査では、伝統的な里親家庭と治療センターの組み合わせから成るTreatment Foster Care Programが、里親家庭が不調となり施設や病院に措置される可能性が高い子どもたちに個別的集中的治療を行っており、日本のモデルとなると考えられたが、財政的な効率の悪さから廃止されている現実も明らかにされた。仏国の治療的支援機関は、地方自治体が財政支援をしているので運営は安定し、多彩な専門職チームが活躍し、里子はホームレスから精神障害まで多様な事例が受け入れられている。 里親は専門家の治療チームの一員として活動し、職業化された専門職で、里親に国家資格制度もあることなど、親として里子と暮らすことを熱望する日本の里親とは際立った違いがみられている。里親の全国調査では、里親の属性、里子の心身の発達、虐待の影、育児困難の現状、愛着形成、養育返上など多岐にわたるアンケート項目の統計的分析がなされ、特に代表的な自由記述からは、里親制度に関する貴重な意見が得られ、面接調査とともに厳しい里親の療育困難の実態が量的、質的に明らかにされた。里親支援機関の調査では、経営母体として、里親会、児童家庭支援センター、施設、法人があるが、それぞれの特徴と担当職員の資格などを調査し、児童家庭支援センター型や施設型では、本体施設の専門職チームの基盤があるので治療支援が可能と思われたが、多くは事務機能も専門体制も不十分であることが明らかとなった。

結論
これらの調査により、民間の治療支援センターのモデル像が明確となったが、既に専門的に評価されている児童福祉施設に併設し、治療的グループホームを1~2か所設置し、里親家庭との拠点とする案である。センターには緊急一時保護所や実親との交流のための宿泊施設を備え、ソーシャルワーカー、セラピスト等の専門職を配置する。活動としては、施設職員と里親のリクルートと研修・スーパビジオン、相談と治療、子どもの発達評価、個別ケアプラン、専門機関とのネットワークなどを行う。当面は、児相により施設措置または里親委託された子どものケアと相談を担当するが、将来は里親委託のマッチングや、里親に関するマニュアル作成も担当したい。施設と里親のモニター、査察のセンター機能もかねるが、財政基盤は地方自治体の支援と寄付などを考える必要があるが難しい課題である。 

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201020Z