女性・母子の保護支援における婦人相談所の機能評価に関する研究

文献情報

文献番号
201201019A
報告書区分
総括
研究課題名
女性・母子の保護支援における婦人相談所の機能評価に関する研究
課題番号
H23-政策-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森川 美絵(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 恒雄(日本子ども家庭総合研究所 子ども家庭福祉研究部)
  • 筒井 孝子(国立保健医療科学院 統括研究官)
  • 福島 富士子(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 阪東 美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 松繁 卓哉(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、女性・母子の保護支援における婦人相談所の機能強化にむけて、婦人相談所の介入支援機能を評価することを目的に、全国的な業務実態および対象女性の状態(含・母子関係)と相談支援ルートに関するデータベースの作成、データに基づく介入支援機能の抽出と評価指標の作成を行なう。研究期間は3年間を予定し、1年目は、予備的作業としての概況把握、2年目は、データベース項目の設定とデータ収集、3年目は、介入機能の抽出と評価指標の検討を行なう。
研究方法
2年次の本年度は、3つのテーマについて複数の調査分析を実施した。テーマ1. データベース項目案にもとづく全国実態データの収集([1-1]全国の婦人相談所職員の業務状況に関する悉皆調査、[1-2]一時保護退所ケースの状態と対応状況に関する全国調査)、テーマ2. 暴力被害母子への継続的ケアおよび退所時アセスメントの手法の検討([2-1]DV家庭離脱母子への継続的ケア・支援の先進事例把握と課題抽出、[2-2]ハイリスクな母子関係の評価手法の検討、[2-3]社会的にリスクの高い妊産婦・母子の保護支援の先進事例把握)、テーマ3. 危機介入時アセスメントの標準化に関する海外先進事例の情報収集(イギリスの多機関連携リスクアセスメント会議MARACS の運営および保護介入手法の検討)。
結果と考察
 テーマ1. [1-1]分析結果から、機関の保護支援実践の課題として、人材の確保育成に関する「任用資格の検討」「多様な職種に対する研修・学習機会の確保」、業務プロセスのマネジメントや標準化に関する「一時保護の要否判定基準の標準化」「保護後の多職種による情報共有・アセスメント等の標準化」「退所後の生活再編にむけた引き継ぎプロセスの明確化」といった課題項目案が抽出された。[1-2]保護前の生活歴、保護中の対応、退所先・退所時の対応について、ケースの属性に応じた大まかな傾向が明かにされた。本格的な全国データベースの構築を行うためには、全国の婦人相談所の相談記録等の様式の統一等を図る必要があることが示唆された。
 テーマ2.[2-1]先進的事例ヒアリング等から3点が確認された。第一に、DV被害母子の同伴児は被害の当事者として扱われる必要がある。第二に、DV離脱母子の一時保護以降の支援については課題の把握、必要な体制整備共に今後の課題である。第三に、DV被害母子への一時保護以降の支援に関する当面可能な対策として、離脱転入してきた母子への支援の統合、進行管理責任機関の確定等が考えられる。[2-2]母子生活支援施設入所者データにもとづくDV被害を受けた母親の子どもへの虐待リスクとその要因の分析から、婦人保護施策の対象となる子どもを連れた母親には、子への虐待のリスクが高いこと、従って、婦人保護機関には虐待のリスク因子とその補償因子を考慮した施策を充実させる必要があることが示唆された。分析で示された母子関係の虐待リスクを示す項目は、婦人保護の現場で、虐待予防のアセスメント項目に活用できる基礎資料となりうる。[2-3]特定妊婦等の保護支援に先進的に取り組む施設へのヒアリングから、入寮者は生活基盤が脆弱な一方、妊娠・出産という女性のライフイベントを通して、施設内で生活に密着した心理的・身体的な支援受けることで、心を癒され、自信をもち退寮していく過程が見えた。保護施設から退寮した母子に対する、地域保健分野が担う役割の広さ、保健、医療、福祉を中心とした多分野連携の強化の必要性が示唆された。
 テーマ3. ハイリスク被害者の支援・保護における各関係機関の間の連絡・調整機能を有するMARACs形成の背景には、各機関が保有する断片的情報を統合し状況の全体像を把握することの必要性に対する認識の高まり、連携の要となる機関の存在、情報共有化を可能にするツールの存在が大きく影響している。共通アセスメント様式の活用と多機関連携による保護介入の運営手法は、婦人相談所における一時保護の入口段階でのプロセス標準化にも、示唆を与える。
結論
今年度扱った各テーマの研究成果を統合することで、一時保護の入口段階、一時保護中の対応・ケア、一時保護の出口段階以降の各段階を含めた、婦人相談所の機能・課題項目の全体像を描くことが可能になった。本年度収集されたエビデンスデータに基づき、最終年度に、機能の全体像の整理と具体的項目化、相談所の機能としてのケースアセスメントの評価項目の開発等に取り組むことが可能となった。

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201019Z