児童虐待の発生と重症化に関連する個人的要因と社会的要因についての研究

文献情報

文献番号
201201018A
報告書区分
総括
研究課題名
児童虐待の発生と重症化に関連する個人的要因と社会的要因についての研究
課題番号
H23-政策-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 武男(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 成育社会医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小稲 文(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 成育社会医学研究部 )
  • 佐藤 拓代(独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター 企画調査部)
  • 奥山 眞紀子(独立行政法人国立成育医療研究センター こころの診療部)
  • 植田 紀美子(独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター 企画調査部)
  • 加藤 曜子(流通科学大学 サービス産業学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、虐待が発生し深刻化する個人的・社会的要因について、その時期と内容を明らかにするとともに地域のアセスメントを行うことによって、地方自治体等における既存の母子保健サービスや行政システムの中で実施可能な虐待防止介入プログラムを開発することを目的とする。
研究方法
①国立成育医療研究センターで既存のデータを用いて親の発達障害傾向(自閉傾向およびADHD傾向)が虐待傾向と関連があるかを調べた。②地域で把握される虐待の把握経緯の検討から、虐待のリスク要因について検討した。③愛知県において妊娠時に把握できる情報からどの程度、4か月時の虐待ハイリスクを予測できるかを検討した。3,4か月健診を利用し、質問紙により後方視的に妊娠時の情報を把握し、3,4か月時の虐待傾向との関連を調べた。④昨年度の研究報告から児童相談所と市町村の状況が全国平均と比べ特異的な5自治体に現地調査を行った。⑤要保護地域対策協議会において、在宅アセスメント指標をツールとして利用し、アセスメントから支援に結びつける効果について検討した。⑥平成23年度研究から医療機関を拡大し、虐待が疑われる乳幼児頭部外傷(Abusive head trauma,AHTと略)の児41例とnon-AHT児69例について、初回入院にかかる疾病費用(Cost of illness,COIと略)分析を行い、費用と臨床像との関連も調べた。
結果と考察
①親の自閉傾向があった場合、虐待傾向は3.34倍高く、ADHD傾向がある場合、2.70倍高くなることがわかった。(いずれもp<0.05)さらに、個別の虐待行動との関連をみた場合、自閉傾向の母親は「つねる」虐待のリスクが7.0倍であり、ADHD傾向の母親は「怒鳴る」虐待のリスクが3.6倍で、発達障害傾向のタイプにより異なる虐待行動のリスクとなっていることがわかった。②平成24年度は前年度に比べ、全体に占める学童期以降の比率が47.2%から55.2%と増加し、中でも中学生が特に増加していた。また、ネグレクト、心理的虐待が38%と高い割合を占めた。さらにネグレクトについては貧困との関係性を調べたところ、65%が経済的に苦しいという結果であった。③妊娠届けで把握できる情報からハイリスク群をある程度の感度・特異度で抽出できることが示された。また、愛知県でSBS予防プログラムの実施前後でパープルクライングの認知度を比較したが、有意な差はなかった。しかし、泣きのピークやその場を離れてもよいという認識については向上傾向にあった。④福祉行政報告例への報告事例のとらえ方の問題が把握されるとともに、市町村対応件数が多いところでは市町村の支援技術向上の研修等が行われ、少ないところでは児童相談所の市町村の支援技術向上のための研修等が行われていることがわかった。⑤初回アセスメントから3か月目のアセスメント状況と支援実態を調査した結果、市町村差はあるものの、アセスメントを意識しリスクとニーズ把握を通じ支援体制を組むことで一定の重症度化が防止できていることが明らかになった。⑥頭部外傷による頭蓋内病変を疑い頭部CTを施行し入院した2歳未満児のうち、AHT児の初回入院医療費は、non-AHT児の約10倍であった。急性期の治療後、安定すると転院する施設もあるが、AHT児が地域に戻るまでが本来の初回入院にかかる医療費と考えるべきで、この費用はA施設の分析結果である310万が参考になると考えられた。
結論
虐待の発生および重症化に関連する要因として、親の発達障害、貧困が確認された。また、妊娠期の情報だけで虐待を予測できることも示唆された。また、市町村および児童相談所できちんと虐待把握がなされるよう研修が必要であり、要保護地域対策協議会で重症化を防ぐにはアセスメントツールが効果的であることもわかった。虐待のコスト試算についてもAHTのみながら膨大な医療費がかかっていることが示され、コストベネフィットとしても虐待予防の重要性を強く示唆するエビデンスが得られた。

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,100,000円
(2)補助金確定額
9,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 385,868円
人件費・謝金 2,352,478円
旅費 2,462,646円
その他 2,999,173円
間接経費 900,000円
合計 9,100,165円

備考

備考
利息154円、自己資金11円計上のため。

公開日・更新日

公開日
2014-05-16
更新日
-