外国人人口の受入れによる将来人口の変化と社会保障への影響に関する研究

文献情報

文献番号
201201015A
報告書区分
総括
研究課題名
外国人人口の受入れによる将来人口の変化と社会保障への影響に関する研究
課題番号
H23-政策-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 重郷(明治大学 政治経済学部)
  • 金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所 副所長)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 是川 夕(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国ではこれまで、外国人人口受入れに関しては比較的保守的な政策を採ってきたことから、これら少子・高齢化がもたらす問題の解決策としての外国人人口受入に関する本格的な定量分析が十分に行われてきたとは言い難い状況にある。しかし、外国人人口受入れによる将来人口の変化について、複数の前提条件の下に仮想的シミュレーションを行って定量的評価を行うとともに、その社会保障へのインパクトを分析しておくことは極めて重要であり、本研究ではこのような課題に対して、人口学的分析を中心とした総合的研究を行うことを目的とする。
研究方法
研究は、以下の3項目の課題ごとに進められる。
(1) 外国人人口受入れに関する前提および将来の出生・死亡動向の研究
(2) モデル構築とこれに基づく将来人口の仮想的シミュレーション
(3) 将来人口の変化が社会保障に及ぼす影響の評価
結果と考察
出生力の現状については、2005年以降、出生の先送りがとまり、実質的にも出生行動がプラスに転じた背景には、何らかの社会環境の変化や意識の変化が生じていることを意味する。ただし、2010年までの上昇には、未産人口の増加という構造要因で説明される部分が半分を占めているため、今後、上昇傾向が減退する可能性もある。社会環境変化と出生動向の関係を評価するためには、このような構造変化の影響を除去した上で行うことが望ましいと考えられる。
外国人の出生が合計特殊出生率に与える影響については、『人口動態統計』と同定義にした場合の出生率は日本人を生んだ日本人の出生率と比べて0.01~0.02ほど高かった。現在の出生率が低水準であることを考えると、これは必ずしも小さい影響ではないだろう。また母が外国籍である場合、合計特殊出生率の水準および時系列変化の傾向が日本人を生んだ日本人女性の合計特殊出生率と大きく異なっているだけでなく、年齢パターンとその変化の動向における相違も大きかった。また、外国人女性の出生率は、国際移動直後に、tempo効果により、出生率が急上昇する傾向にあることが示された。また、こうした結果、移民女性の出生率は、ブラジル人女性を除けば、日本人女性よりも高く、その背景には、日本人女性よりも高い年齢別出生率、パリティ拡大率といったことがあると考えられるとともに、中期的に移民女性の出生率はより上昇する場合があることが示された。
国際人口移動政策(人口受け入れ政策)については、日本の周辺国の18~23歳人口は今後すぐ、あるいは遠くない将来に、若年労働力の供給過剰となっている状況からは脱し、国内の国際人口移動としてしての送出圧力は減衰して行くものと考えられる。周辺国を除けば、こうした圧力は当面の間、高止まりすることが予想されるが、そうした国からの移動の増加にあたっては、我が国の制度面での対応が必要であることが示された。
世界的に見た人口推計における国際人口移動仮定については、各国で出入国の関係が密な地域が異なり、国の移民制度・経済状況等も関連することから様々な想定がなされている。今後、東日本大震災や原発災害は国際人口移動にも一定の影響を及ぼすことが推察されることから、さまざまなシナリオ下における移動設定の可能性について検討することは意義があると考える。
更に、人口転換過程において生ずる生産年齢人口の減少を補う形で発生する外国人の労働力としての移民について、それらの人口過程への効果をマクロシミュレーションモデルによって分析し、模式化を行った。その結果、移民の存在が自然動態に対しても大きな影響を持ち、人口転換過程に記述において本質的な役割を果たしており、その重要度は今後高まって行くことなどが明らかになった。
結論
こうした結果を踏まえた将来人口シミュレーション及び社会保障財政影響評価の結果からは、外国人労働者の受入れの影響について、長期的な観点に立った定量的評価を行うことの重要性が明らかとなった。しばしば、外国人労働者受入れに関する議論は、当面の労働力不足を補うだけの短期的視点で行われることがあるが、本研究の成果によれば、受け入れた外国人は将来、高齢化して年金等の受給者に回る一方で、家族呼び寄せや出生行動等は新たな社会保障の支え手を生み出す原動力ともなっている。したがって、外国人受入れに関する社会保障への影響評価については、これら全ての影響を織り込んだ長期的な評価を行うことが具体的な施策の議論にとって極めて重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201201015B
報告書区分
総合
研究課題名
外国人人口の受入れによる将来人口の変化と社会保障への影響に関する研究
課題番号
H23-政策-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 重郷(明治大学 政治経済学部)
  • 金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 是川 夕(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国ではこれまで、外国人人口受入れに関しては比較的保守的な政策を採ってきたことから、これら少子・高齢化がもたらす問題の解決策としての外国人人口受入に関する本格的な定量分析が十分に行われてきたとは言い難い状況にある。しかし、外国人人口受入れによる将来人口の変化について、複数の前提条件の下に仮想的シミュレーションを行って定量的評価を行うとともに、その社会保障へのインパクトを分析しておくことは極めて重要であり、本研究ではこのような課題に対して、人口学的分析を中心とした総合的研究を行うことを目的とする。
研究方法
研究は、以下の3項目の課題ごとに進められる。
(1) 外国人人口受入れに関する前提および将来の出生・死亡動向の研究
(2) モデル構築とこれに基づく将来人口の仮想的シミュレーション
(3) 将来人口の変化が社会保障に及ぼす影響の評価
結果と考察
人口学的モデル構築に関しては、妊娠届出統計が出生の有効な先行指標となり得ることや、人口動態統計による結婚経験別構成の有利性等が明らかとなった。また、出生力の現状について、2005年以降、出生の先送りがとまり、実質的にも出生行動がプラスに転じた背景には、何らかの社会環境の変化や意識の変化が生じていることを意味するが、2010年までの上昇には、未産人口の増加という構造要因で説明される部分が半分を占めているため、今後、上昇傾向が減退する可能性もある。社会環境変化と出生動向の関係を評価するためには、このような構造変化の影響を除去した上で行うことが望ましい。
外国人の出生が合計特殊出生率に与える影響については、『人口動態統計』と同定義にした場合の出生率は日本人を生んだ日本人の出生率と比べて0.01~0.02ほど高かった。現在の出生率が低水準であることを考えると、これは必ずしも小さい影響ではないだろう。また母が外国籍である場合、合計特殊出生率の水準および時系列変化の傾向が日本人を生んだ日本人女性の合計特殊出生率と大きく異なっているだけでなく、年齢パターンとその変化の動向における相違も大きかった。また、外国人女性の出生率は、国際移動直後に、tempo効果により、出生率が急上昇する傾向にあることが示された。また、こうした結果、移民女性の出生率は、ブラジル人女性を除けば、日本人女性よりも高く、その背景には、日本人女性よりも高い年齢別出生率、パリティ拡大率といったことがあると考えられるとともに、中期的に移民女性の出生率はより上昇する場合があることが示された。
国際人口移動政策(人口受け入れ政策)については、日本の周辺国の18~23歳人口は今後すぐ、あるいは遠くない将来に、若年労働力の供給過剰となっている状況からは脱し、国内の国際人口移動としてしての送出圧力は減衰して行くものと考えられる。周辺国を除けば、こうした圧力は当面の間、高止まりすることが予想されるが、そうした国からの移動の増加にあたっては、我が国の制度面での対応が必要であることが示された。
国際人口移動の仮定設定については、諸外国の推計で行われている複数仮定の設定が参考になることや、国連推計でも国際人口移動の働き手人口への影響は大きなインパクトではないことが明らかとなった。世界的に見た人口推計における国際人口移動仮定については、各国で出入国の関係が密な地域が異なり、国の移民制度・経済状況等も関連することから様々な想定がなされている。今後、東日本大震災や原発災害は国際人口移動にも一定の影響を及ぼすことが推察されることから、さまざまなシナリオ下における移動設定の可能性について検討することは意義があると考える。
更に、人口転換過程において生ずる生産年齢人口の減少を補う形で発生する外国人の労働力としての移民について、それらの人口過程への効果をマクロシミュレーションモデルによって分析し、模式化を行った。その結果、移民の存在が自然動態に対しても大きな影響を持ち、人口転換過程に記述において本質的な役割を果たしており、その重要度は今後高まって行くことなどが明らかになった。
結論
こうした結果を踏まえた将来人口シミュレーション及び社会保障財政影響評価の結果からは、外国人労働者の受入れの影響について、長期的な観点に立った定量的評価を行うことの重要性が明らかとなった。しばしば、外国人労働者受入れに関する議論は、当面の労働力不足を補うだけの短期的視点で行われることがあるが、本研究の成果によれば、受け入れた外国人は将来、高齢化して年金等の受給者に回る一方で、家族呼び寄せや出生行動等は新たな社会保障の支え手を生み出す原動力ともなっている。したがって、外国人受入れに関する社会保障への影響評価については、これら全ての影響を織り込んだ長期的な評価を行うことが具体的な施策の議論にとって極めて重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201201015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果として、わが国の将来人口シミュレーションの基礎となる日本人・外国人の人口動向分析が深められるとともに、外国人労働者の受入れ政策の議論に資する複数のシナリオに基づいた定量的な長期シミュレーションを提示したが、このような研究はこれまであまり行われてこなかったことから、外国人受け入れに関する議論を長期的・定量的な評価に基づいて行うことの重要性が明らかになった。また、関連学会でも研究報告を行ってきており、専門・学術分野での政策議論に資する成果があがっている。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201201015Z