居住系サービス提供体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201201009A
報告書区分
総括
研究課題名
居住系サービス提供体制のあり方に関する研究
課題番号
H22-政策-一般-025
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
尾形 裕也(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院医療経営・管理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 植村尚史(早稲田大学人間科学学術院)
  • 鮎澤純子(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院医療経営・管理学講座 )
  • 大島千帆(早稲田大学人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今後の急性期医療については、「社会保障国民会議最終報告」や「医療・介護に係る長期推計」において、「選択と集中」及び「機能分化と連携」の推進による在院日数の短縮化等の効率化を進めた後の姿が明示されている。一方、退院後の医療・介護サービスと連携した「居住系サービス」のあり方については、必ずしも明らかではない。各種の調査においては、「在宅」での療養を望む国民が多数を占めているが、これをすべて「自宅」で対応することは困難であり、今後、相当量の「居住系サービス」を整備することが必要である。  
本研究においては、超少子高齢社会の中で求められる「居住系サービス」のあり方について、国民のニーズへの対応、サービスの質の確保、医療サービスの関わり方、施設体系、医療・介護報酬のあり方、いわゆる「複合体」経営等を含め、最近の国際的な調査研究や政策の動向等を踏まえつつ、理論、実証両面から幅広く検討し、望ましい居住系サービスの姿について展望し、これを促進するための政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
1年目においては、居住系サービスに関する内外の文献や資料等について基礎的な調査研究を行うとともに、国内の複数の複合体等においてヒアリングを実施し、居住系サービスに関する基本的な課題を抽出するとともに、アンケート調査項目を具体的に検討した。
2年目において、居住系サービスの現状及び課題を把握するため、複合体等について、患者(入所者)の状態像(ADL区分、医療区分、要介護度)、入退院(所)の状況、提供サービスの状況、継続的なモニタリングの体制、シームレスなサービス提供体制、サービスの調整のあり方、医療・介護報酬のあり方、料金設定、複合体としての収益構造等について総合的な調査を実施した。また、2、3年目において、欧米諸国の海外調査を実施し、各国の状況を把握した。
3年目において、「医療・介護に係る長期推計」等を踏まえて、今後の居住系サービスの必要量を推計するとともに、上記調査結果等に基づき、その供給体制のあり方及び質の高いサービス提供の推進に向けた具体的な政策を構想し、提言としてとりまとめた。

結果と考察
平成24年度においては、おおむね研究計画に従って、内外の文献レビュー、アンケート調査及びヒアリング、海外調査等を実施した。その中で、イギリスにおけるExtra Care/Sheltered Housing及びフランスにおけるHADについて実地調査を行うとともに、2年目に引き続き米国におけるAssisted Living Facilities及びNursing Homeに関する政策を中心に実地調査研究を行った。また、急性期医療から在宅への復帰促進という観点から、いわゆる「退院調整」に関して、イギリスNHSの退院調整チェックリストを日本の急性期病院の協力を得て、日本の実情に合った形に改めたリスト案を作成した。あわせて、これまでの研究成果を踏まえ、利用者のニーズ面から見た居住系サービスモデルについて検討し、「コミュニティ型居住系サービス」及び「小規模ターミナル型居住系サービス」の2種類のモデルを提案し、その課題と改善策の提示を行っている。

(考察)
民主党政権下において、介護療養病床の廃止期限を延期する法改正が行われたが、こうした現状追認的な政策によって、今後急増する高齢者の複合的なニーズに適切に対応していくことはできない。すでに先進各国においては、急性期医療の確立とあわせて、居住系サービスの拡充による「在宅」対応の充実が図られてきている。わが国においても、急性期医療の確立とあわせて、早急にその整備を図る必要がある。両者はいわば「楯の両面」であり、その「同時解決」こそが、今後のわが国の医療・介護政策における中心的な課題である。その場合、「在宅」こそが人々の「常態」であり、「入院」や「施設」は、本当にその必要がある場合に限って限定的に運用されるべきであるという基本的な考え方に立って、政策を考えていく必要がある。

結論
国際的に見て例外的に多い人口当たり病院数及び病床数を有するわが国において、その有効な活用を図ることが喫緊の課題である。このいわば「含み資産」を、今後、急性期医療・回復期医療・慢性期医療・在宅等に適切に配分し、全体としての効率化を図るとともに、機能分化と連携の体制を確立していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201201009B
報告書区分
総合
研究課題名
居住系サービス提供体制のあり方に関する研究
課題番号
H22-政策-一般-025
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
尾形 裕也(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院医療経営・管理学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 植村尚史(早稲田大学人間科学学術院)
  • 鮎澤純子(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院医療経営・管理学講座 )
  • 大島千帆(早稲田大学人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今後の急性期医療のあり方については、すでに「社会保障国民会議最終報告」や「医療・介護に係る長期推計」において、「選択と集中」及び「機能分化と連携」の推進による在院日数の短縮化等の効率化を進めた後の姿が明示されている。これに対して、退院後の医療・介護サービスと連携した「居住系サービス」のあり方については、必ずしも明らかではない。各種の調査においては、「在宅」での療養を望む国民が多数を占めているが、これをすべて「自宅」で対応することは困難であり、今後、相当量の「居住系サービス」を整備することが必要である。  
本研究においては、今後の超少子高齢社会の中で求められる「居住系サービス」のあり方について、国民のニーズへの対応、サービスの質の確保、医療サービスの関わり方、施設体系、医療・介護報酬のあり方、いわゆる「複合体」経営等を含め、最近の国際的な調査研究や政策の動向等を踏まえつつ、理論、実証両面から幅広く検討し、望ましい居住系サービスの姿について展望し、これを促進するための政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
1年目においては、居住系サービスに関する内外の文献や資料等について基礎的な調査研究を行うとともに、国内の複数の複合体等においてヒアリングを実施し、居住系サービスに関する基本的な課題を抽出するとともに、アンケート調査の項目を検討した。
2年目において、居住系サービスの現状及び課題を把握するため、複合体等について、患者(入所者)の状態像、入退院(所)の状況、提供サービスの状況、継続的なモニタリングの体制、シームレスなサービス提供体制、サービスの調整のあり方、医療・介護報酬のあり方、料金設定、複合体としての収益構造等について総合的な調査を実施した。また、2、3年目において、欧米諸国の海外調査を実施し、各国の状況を把握した。
3年目において、「医療・介護に係る長期推計」等を踏まえて、今後の居住系サービスの必要量を推計するとともに、上記調査結果等に基づき、その供給体制のあり方及び質の高いサービス提供の推進に向けた具体的な政策を構想し、提言としてとりまとめた。
結果と考察
平成22年度においては、療養病床に関する政策を中心とした政策動向等を整理するとともに、米国におけるAssisted Living Facilities及びNursing Homeに関する政策を中心に調査研究を実施した。あわせて、長期入院患者の実態等に関する既存の諸調査を検討し、長期入院患者の在宅移行の可能性に関し、プレ調査を実施した。さらに、療養病床を全廃し、老人保健施設を中核とする新たな取組みを実施している複合体の事例について取りまとめた。
平成23年度においては、米国における調査研究を継続するとともに、複数の複合体について、患者(入所者)の状態像、入退院(所)の状況、提供サービスの状況、継続的なモニタリングの体制、シームレスなサービス提供体制、サービス調整のあり方、料金設定、複合体経営のあり方等についてアンケート調査及びヒアリングを実施した。
平成24年度においては、イギリスにおけるExtra Care/Sheltered Housing及びフランスにおけるHADについて実地調査を行うとともに、米国における実地調査研究を行った。また、急性期医療から在宅への復帰促進という観点から、「退院調整」に関して、イギリスNHSの退院調整チェックリストを日本の急性期病院の協力を得て、日本の実情に合った形に改めたリスト案を作成した。あわせて、これまでの研究成果を踏まえ、利用者のニーズ面から見た居住系サービスモデルについて検討し、「コミュニティ型居住系サービス」及び「小規模ターミナル型居住系サービス」の2種類のモデルを提案し、その課題と改善策の提示を行っている。
わが国においても、急性期医療の確立とあわせて、早急に居住系サービスの整備を図る必要がある。両者の「同時解決」が、今後のわが国の医療・介護政策における中心的な課題である。その場合、「在宅」こそが人々の「常態」であり、「入院」や「施設」は、本当にその必要がある場合に限って限定的に運用されるべきであるという基本的な考え方に立って、政策を考えていく必要がある。
結論
国際的に見て例外的に多い人口当たり病院数及び病床数を有するわが国において、その有効な活用を図ることが喫緊の課題である。このいわば「含み資産」を、今後、急性期医療・回復期医療・慢性期医療・在宅等に適切に配分し、全体としての効率化を図るとともに、機能分化と連携の体制を確立していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201201009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究においては、「居住系サービス」のあり方について、内外の先行研究・文献調査、わが国の複合体等の調査に加え、アメリカ、イギリス、フランス各国の実地調査を行い、これらに基づき、日本の居住系サービスモデルを提案している。また、「在宅ケア」を急性期医療の確立と「楯の両面」の施策としてとらえ、病院における「退院調整」の効果的な実施等を通じ、医療・介護サービス提供体制全体の構築の中に位置付けている。
臨床的観点からの成果
 下記「退院調整チェックリスト案」は、急性期病院の協力の下に、臨床現場の意見を踏まえて作成した実践的な内容となっており、今後、病院の現場において広く活用されることが期待される。
ガイドライン等の開発
 英国NHSの「退院調整チェックリスト」を日本の病院の現状に適合する形に改めたチェックリスト案を作成した。
その他行政的観点からの成果
 医療・介護提供体制の将来ビジョン(いわゆる「2025年モデル」)を実現するための1つの鍵である居住系サービスの展開につき幅広く検討した本報告は、今後の具体的な施策の展開において貴重な参考資料となることが期待される。
その他のインパクト
日本医療・病院管理学会第293回例会(2011年3月5日九州大学)において、居住系サービスに関するシンポジウムを開催し、各研究者が研究成果を発表した。
九州大学公開講座(2012年1月21日)において、研究代表者が「居住系サービスの現状と課題」につき、発表を行った。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
尾形裕也
日本における在宅医療の現状、課題及び展望
季刊社会保障研究 , 47 (4) , 357-367  (2012)
原著論文2
尾形裕也
日本の医療提供体制の現状及び改革の基本的方向
福岡医学雑誌 , 103 (3) , 49-58  (2012)

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201201009Z